第3話 TSU○AYAまで走って3時間



 謎の全裸少女との遭遇した夜。

 痴女でQEDしといてなんだが、どうやら少女は痴女ではなく、マジの幽霊らしい。目の前でふんわり浮いたり、テーブルをすり抜けるところを見せられたら、納得せざるを得ない。

 痴女じゃ……なかったのか。

 色々と残念に思いながら、そもそもなぜこの部屋に幽霊である少女がいるのか、いつからいたのか、何で料理を作ってくれてるのか、今まで家事をやってくれたのはこの子なのか、WHY全裸? ……などなど、聞くべきことは大量にあった。

 しかし、


「うぅ……ひぐっ、見られちゃったぁ……変な女の子だって思われた……」


 と毛布を被りながらシクシクする女の子を前に、それらを追及するのは憚られた。まともに事情を聞くには時間を置いた方が良さそうなので、とりあえず俺は普段通り、風呂に入りに行き、部屋に戻ってから夕飯を食べた。少女はなおも涙目で毛布に包まりながら、こちらをジッと観察していた。


「……お、おいしい?」

「うん、美味い」

「そ、そっか。そっかぁ……えへへ」


 素直な感想を述べると、少女はほんにゃり微笑んだ。

 そうこうしている内に夜も更け、9時頃には眠くなってしまう系男子の俺がウトウトしていると、いつの間にか布団が引かれていたので、まあ色んな話は明日でいいか……とその布団に倒れ込んだ。

 部屋に誰かがいるのに眠れるだろうかと心配したが、どうやら幽霊少女との遭遇は俺の心に少なからず疲労を与えていたのか、あっという間に眠りについてしまった。


 翌朝。

 いつも通り誰か――少女に起こされた俺は、少女が作ったらしき朝食を食べて大学へ向かうことにした。


「い、行ってらっしゃい……辰巳君」


 ぎこちない様子で手を振ってくる少女(装備・毛布)にぎこちない挨拶を送って家を出た。さて、帰ってからが本番だな。


 アパートの庭に出る。

 入学して一ヶ月、春真っ盛りで温かな日差しが俺を包み込む。

 庭を通ると、いつもの如く大家さんがいた。。


「ふんふふーん♪」


 家庭菜園の側で屈みこんでいる。


「育てー育てー、私の愛をしっかり吸い込んで育って下さいねー。ぐんぐん育って最終的に私の胃を満たしてくださいねー」


 自分が育てた野菜に向かってそんな事を言ってる大家さん。

 食われる為に大きくなれ、とは言われる方はどんな気持ちなんだろうか?


 食される側の野菜の気持ちになってみる――動けない、気持ちを伝えることもできない、ただ自分の身体を意思とは関係なく肥大させていくことしかできない。そしていい具合に育ちきると……噛み砕かれ消化される。絶望、絶望、絶望――その言葉が体に纏わり付いた。


 な、なんてことだ……。目の前の大家さんが野菜を育てる可愛らしい天使ではなく、絶望を培養する悪魔に見える。


『た、たすけて……』


 今の俺には聞こえてる、野菜達の救いを求める声が。

 お、俺は今までそんな気持ちの野菜を食していたのか。

 ひ、ひどい……酷すぎる。

 ここは真実を知った人間として、野菜達の人権を守る為に立ち上がるべきじゃないのか!

 野菜にだって命はあるんだ! 野菜の人権を守れ!

 あ、でも俺今眼鏡教の信者だしナー。

 信者とレジスタンス2足の草鞋履けるほど器用じゃないし。

 うん、野菜達には今の現状に甘んじてもらうことにしよう。

 大丈夫大丈夫。痛覚とか無いんでしょ? それに美少女大家さんにハムハムされるとか、超羨ましいじゃん。変わって欲しいくらいだわ。


 俺が野菜達を守る為に立ち上がり、そして即座に座り込むという波乱に満ちた意思の変更を行なっていると、背後に立つ俺の気配に気づいたのか、大家さんが振り向き立ち上がった。


 満面の笑みと共に、ペコリと一礼。


「あ、一ノ瀬さんっ、おはよーございます! 今日もいいお天気ですねー!」


 朝からキラキラ眩い笑顔を浮かべる大家さん。

 貴方の笑顔は空にきらめく太陽よりも眩しい、なんて花輪君みたいな返事で返そうとしたが……今日の俺、そういう気分じゃねーから。

 つーか、結構怒ってるんだよね。

 怒髪天が空を貫きまくってるんだよね。何で怒ってるかって、アレだよ。幽霊の件だよ。入居するとき何も問題はない部屋だって、ハッキリ言われたのに。


「ご飯はしっかり食べましたか? お漬物無くなったら言って下さいよ? 夜更しは体に悪いですからあんまりしちゃ駄目ですよ……って、私も人のこと言えませんけどね、てへへ。昨日も深夜アニメ見るために頑張っちゃいましたっ。てへぺろっ」


 おどけた調子で舌を出す大家さん。

 俺を心配してくれるお母さんっぷりに、俺の怒りゲージはゆるゆると降下していった。

 いかん、いかんよ!

 頑張って踏みとどまってくれ、怒りゲージ!

 今日はこの向日葵の様な笑顔を浮かべる少女に一言言ってやる筈だろ?

 怒りの伴わない発言なんて痛くも痒くもない!

 怒りをエンチャント!


「あの、大家さん――」


 俺が怒りエンチャントの一撃を食らわせようとした瞬間、その先の先をとった大家さんに出鼻をくじかれた。


「そう言えば一ノ瀬さん、聞いて下さいよぉ。今日の朝、私大変だったんですよっ。朝起きて冷蔵庫から牛乳パック取り出して腰に手を当てて、そのまま一気飲みしたら……」


「男前ですね」


「清楚な大家さんの意外な一面、ってやつです。で、一気飲みしたら、もう酸っぱくて酸っぱくて! 思わず天井に向かって『へぶしゃん!』って散布しちゃいましたっ。朝から顔も身体も牛乳まみれで……ひどい目に遭いましたよー。ちなみに牛乳が腐ってたんじゃなくて、気まぐれに買った飲むヨーグルトだったってオチなんですけどねっ」


「はい、どーも。朝からオチ付きの微エロ萌え話、ありがとうございます」


 『え、えろくないですよ!』と頬を膨らませて、割烹着を両手でギュッと握り締め抗議してくる大家さん。いやエロイだろ。朝から謎の白い液体に塗れて涙目になる美少女とか……あざと過ぎて何かムカつくわ。


 普通の面相の俺だったら『はいはいすいませんぬ。大家さんは清純派でしたよね』とか言いながら大家さんの頭を撫でて、大家さんは『そうですよっ、私は清楚でお淑やかななお姉さんなんですからね! あ、あとお姉さんの頭を撫でたりしちゃいけませんっ』なんてラブペロ(ラブコメ+イチャイチャペロペロ)展開が繰り広げられるわけだが。

わけだが!

 そんな展開を望んでいた諸君らには悪いが、今の俺、心の面相、『怒り』に切り替えてるから。

 アシュラマン的な意味でな!


 ああ、憎い、憎くてたまらんぜ……!

 今の俺には何もかもが『怒り』の対象にしかならぬ。

 例えば目の前に対する大家さんの容姿に対しても怒りが湧く。


 何だこの黒髪おかっぱは! ちっちゃい体で着物を着こなしやがって……日本人形みたいで可愛いだろうだ! ちょっと一部層を狙いすぎじゃないんですかね!

 自分の身長よりちょっと長めの箒を懸命に動かす様子も癪にさわるぜ! 

 そして何だその甘々斎藤○和ボイスは! 耳が幸せになっちゃうでしょ!?

 あとあんた微妙にボディタッチが多いんだよ! 惚れてまうやろ! 童貞は勘違いしやすいんだから……気を付けてよね!


 ……ふぅ。


 取りあえず胸の内に湧いた怒りを吐き出すことができた。

 さて、本来の目的、大家さんへの追求を始めようか。


「ところで大家さん、俺の部屋のことなんですけど」


「はい? 一ノ瀬さんのお部屋ですか? えっと……なんでしょう? あっ、もしかしてこの前、庭で秋刀魚を焼いた時の煙が入っちゃってましたかっ? ご、ごめんなさい、今度から気を付けますねっ」


 俺の部屋はどうやら風の通り道になってるらしく、よく部屋にいると窓から外の匂いやら声が入ってくる。大家さんの鼻歌なんかも聞こえてくるので、それをBGMにしながら勉強するのも乙なもの。この間なんか『20代前半が懐かしいと感じるアニメソングメドレー』が大家さんの歌声で流れてきて、勉強どころではなかった。

 それはいい。非常にいい。

 お裾分けに戴いた秋刀魚も大変おいしゅうございました。


「違います。この前……三日くらい前でしたっけ。俺大家さんに聞きましたよね? 『俺の部屋、ナニカ出るんじゃないですか?』って」


「……はて? そ、そんな話しましたっけ? いやぁ、して無いと思いますよ、はい。あっ、確かその時はお風呂に入ってまずどこを洗うか、みたいな話をしませんでしたか? あははっ」


 えー、マジで?

 何で俺の記憶分野ちゃん(萌えキャラ。眼鏡かけた金髪ツインテール司書)ったらそんな重要な記憶忘れちゃってるの?

 ちょっと思い出してくれよ。あぁ? 何が涙目で『わ、わたしのデータベースには無い記憶ですぅ……』だ! 可愛いから許す!


「しらばっくれないで下さい。あの時の大家さん、態度がおかしかったですよね? ……あの部屋、何かあるんですよね?」


「い、いえですから。そ、そんな、ねえ? 親御さんから預かってる大切な息子さんをそんな曰くつきの部屋に案内するわけないじゃないですかっ、あはははっ」


 サッサッサと箒で地面を掃きながらぎこちない笑みを浮かべる大家さん。目があちらこちらへ泳いでいる。怪しい。

 額から浮き出た汗がたらりと首筋まで垂れ、僕はいつかこの汗の流れに乗せて素麺流しがしたいんだなぁ(大将風に)


「だ、大体何かあるって、何があるんですか? 一ノ瀬さんは何か見たんですか?」


 ここだ!

 俺は大家さんの発言に『異議アリ!』の心の叫びと共にその決定的な言葉(証拠)を突き出した。


「何か、ね。ええ見ましたよ。この目でハッキリとね」


「……ゴ、ゴクリ」


「――幽霊、ですよね? 女の子の幽霊、それがあの部屋にいる『ナニカ』です」


「……う、ううう……!」


 俺の決定的な言葉は、大家さんにダメージを与えたようだ。

 しかし未だ大家さんの眼は敗北を認めていない。


「……ゆ、幽霊? あ、あははっ、そんな幽霊なんて、非科学的なものいるわけないじゃないですかー。い、一ノ瀬さんはきっと親元から離れた寂しさで、ちょっと頭がおかしくなってるんですよっ、うんっ。大丈夫です! 大家である私に任せて下さいっ。さ、今すぐ一緒に病院へ行きましょう! 私がついてますから、安心して下さい!」


 それ絶対檻のついた病院でしょ?

 やだよ、もー。

 ただでさえ法律っつー名の檻に閉じ込められてんだ、シャバでくらい自由にさせてくれよ!

 あ、ちなみにここで俺が病院に行くことを肯定すれば『プリズンブレイカー辰巳! ~第一話 女看守の心の鍵を盗め~』に派生するから。

 まあ、需要ないから派生とかしないけど。

 だって今の日本でそんな煤にまみれた青年がムショから脱走するなんてニッチなもん流行らんぜ? 

 やっぱり矢吹神を見習って、みんなおっぱいとかギリギリへの挑戦とかすればいいと思う。

 でも監獄○園は別な。俺あれVシネ辺りで実写化すんの希望してっから! と、思ってたらアニメ化していた。規制とか大変だと思いますけど、頑張ってください。メデューサには期待してます。


「一ノ瀬さん……」


 大家さんの手が俺の手を包み込むようにギュっと握った。

 温かくて柔らかい。


「ねっ、ねっ? 一ノ瀬さん疲れてるんですって。ほら、学校も色々大変なんじゃないですか? 勉強とか、人間関係とか、サークル内の痴情のもつれとか」


 まあ、学校が大変というのは概ねあってる。

 何が大変かっつーと、そりゃ友達がいないことですがね。

 遠藤寺だって全ての授業を一緒に受けているわけじゃない(アイツ『中世における拷問史~実践編~』とか常人にはノーセンキューな授業を嬉々としてとってるからな、俺はついていけん)

 だから学校内に一人ぼっちになる時間が結構あるわけ。

 その時に気になるのは周りの視線だよ。『あの人一人よ? 侘しくないのかしら?』みたいな。自過剰とかじゃなくて、実際にかなり向けられてると思う。


 ん、いや待てよ? よく考えると大学内に一人でいることなんてそうそう珍しいことじゃなくなイカ?

 いくら友達が多い人間でも、ゼミやら何やらで一人になることもある。

 あれ? だったら何だ俺に向けられるあの視線の数々は?

 ちょっと記憶分野ちゃん、視線向けられた時の音声、再現してよ。


『ねー、あの男の子』『あ、知ってる。あのフリフリ女といつも一緒の子だよね』『遠藤寺さんだっけ、カワイイけど痛いよね』『痛い痛い』『拙者、遠藤寺殿に骨折しやすい部位をバットで殴られたいでござる』『あんな子と一緒にいるってことは、多分あの子もちょっと変なのかな』『多分ねー。類は友を呼ぶって言うらしいし』『せ、拙者の同類でござるか! フォヌカポゥwww』


 あ・い・つのせいかよ!

 ざっけんな! 通りでただ教室の場所聞いてるだけなのに引き気味な態度ばっかとられてると思ったわ!(その時は前向きに、俺が放つモテオーラが逆に近寄りがたいのかな、って思っといた)

 悪いが俺のモテルート開拓の為に遠藤寺には一人で4年間を過ごしてもらうか。

 あ、でも……オレ、トモダチノツクリカタ、ワカラナイ……ウゥ。

 いつか現れる(と思われる)多数の友人たちか今いる可愛い(けどちょっと変)な異性か……。


 よし、とりあえず保留で。


「そ、そうですよ。幽霊なんているわけないですよ? 幽霊なんてないさーふんふんふーん」


 ピューピュー口笛を吹きながら目を逸らす大家さん。

『疲労が精神に負担を~』とか『統合失調が~』とか『不思議なアリスが~』とか『TSUTAYAの延滞金が~』とか言い訳がましく述べ、話を誤魔化そうとしているはまるっとお見通しだ。


 はぁ、こうなったら仕方がない。

 ここは大家さんをおもむろに押し倒し、『そのピーピーとやかましい口を綴じナ。閉じネェなら俺の口で塞いでやんヨ。後はあんたの謎に聞くだけさ』って感じのニュー探偵スタイルで行くか……。

 ところで着物の下は何も履かないって言うけど、大家さんの場合はどうなんすかね。あ、いや別にいやらしい気持ちで考えてるわけじゃないけどね。

 ほらあくまで学術的好奇心っていうか……俺文系だし(文系ならしょうがない)


「あのさ、大家さん。ネタは上がってるんですよ。色々と周りから聞いたんですけどね……あの部屋、俺が越してくる前にも『出た』らしいじゃないですか」


「はわわっ、ど、どこでそれを!?」


 いや、まあどこっつーか、その幽霊本人なんすけどね(笑)

 今朝家を出る前、朝食を食べている最中に少しだけ話を聞くことが出来た。

 本人の発言だから、恐ろしく信憑性がある。

 本人曰く、俺の前にも色んな人間が入居してきて、彼女の姿を見て退去していったらしい。


「今まで越してきた人、みーんな速攻で出てったらしいじゃないですか。で、みんな言ってたらしいですね?」


「い、いや、ち、違うんですよ……」


「とぼけるのはもう無理ですよ? 出てった人はみんなこう言ってました『化け物が出た』ってね」


「はぅっ……」


 俺の言葉の論破された大家さんはふらりとよろめいた。

 勝った! 勝ったぞ!

 お部屋の幽霊さんありがとう!(ちなみにその幽霊さん『化け物だなんて酷いと思うよね!』といたく憤慨されておった)


 大家さんが俯き、30秒の時が過ぎた。


 俺が勝利の感慨に浸り、DOYA顔を決めていると、大家さんは亀の様な動きでゆるゆると顔をあげた。


「……す、ずびばせんでした……!」


 ひっでぇ顔だった。

 顔はりんごみたいに真っ赤だし、両の目からは濁流の様にボロボロと涙がこぼれ落ちている(俺はこの光景を『大家さん悲しみの滝.jpg』として記憶野に保存した)


「ご、ごめんなさい……っ! 嘘ついてっ、ぐすっ……本当にすいませんでした……!」


 あーあー泣ーかっしたー、こんなちまい子泣かしよったー。

 俺は小学校の終わりの会で『一ノ瀬君が私のことずっと見てくるんです……うぇぇぇ』とちょっと心当たりがなさすぎる冤罪をかけられたことを思い出した。

 まあ、あの頃は『一ノ瀬を陥れる会』みたいなんが発足してたからな……小学生の俺は一体何をしたんだろう。


「一ノ瀬ざぁん……っ」


 大家さんはボロボロ涙を流したまま、俺に突撃してきた。

 すわ自滅覚悟の特攻か、と構えたものの、大家さんは俺の腹に顔を埋めただけであった。


「あ、謝りますから……! だ、だから出ていかないで下さいっ! お、お願いですぅ……!」


 グリグリと俺の腹に顔を押し付けてくる。

 今俺のTシャツ(ユニクロ産980円)は大家さんの流した涙やら鼻水で、べっとべとの透ケルトンTシャツに進化しているだろうが……不快感は無かった。

 むっさい男の鼻水が手に付着したら速攻でその手を切り落とすけど、それが美少女の物なら……な?


「へぐっ、えぐっ……」


 全く、泣いてる女の子には適わねえーな。


「……はぁ」


 俺の心の面相は怒り面から慈愛面へと切り替わった。

 慈愛に満ちた今の俺は、目の前の存在が愛しくてしょうがない。

 俺の腹に顔をうずめ、涙やら鼻水を擦りつけてくる大家さんに対し仏スマイルで対応、仏掌で頭を撫でる。

 やれやれ、命拾いしたな……。

 今の俺が慈愛面でなく怒り面であったなら……グーで顔殴ってたよ? 泣いてるとか美少女大家さんとか関係ねえ、『オゴォッ』とかリョナ好きな悲鳴をあげさせて。


 しかもただのグーじゃない。


 母親から貰った頑丈な腕時計を巻きつけたグーだ。美少女を時計パンチした時、俺はもう一つ上の段階にいけるかもしれない(その時には胸を張って、自分の前世がこの世界を統べていた王であることを声高々に叫ぶのだ。んで、前世が俺のシモベとかのたまう電波的な彼女がやってくるわけ、当然超美少女)


「やれやれ」


 取りあえず泣いている大家さんを泣き止ませないとな。詳しい話も聞けない。

 それに周りの目も気になる。

 朝っぱらから涙を流して男の腹に顔を埋める女の子……事案臭がプンプンする。

 アパート正面に住む一軒家のオバさん(噂好きのマダム。彼女にかかれば噂は容易く全世界に発信される)が、近所のオバさん連中を集めまくってるのも気になるし……。

 俺は興味津々なマダム達の視線が集まる中、大家さんをまるで恋人にするように背中をぽんぽんして泣き止ませるのであった。

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