わたしは実習させてもらった立場でした。恥ずかしながら、「献体」という言葉はその時に初めて知りました。ご献体を前にした時、強い緊張感、その方の人生や命、恐怖を感じたり考えたりする一方で、人の身体の内部への興味と探究心で感情がごちゃ混ぜになっていました。気付いたら泣いていました。あの経験も、ご献体への感謝も、一生忘れられません。
冒頭に述べたとおりである。短い作品であるが、読んだ後にすっと手を合わせた。何に手を合わせたかというと、あーちゃんであり、あーちゃんの家族であり、そしてこれからの医学の未来に対してだ。検体というのは、ただの人を医師にするためのものであると聞いたことがある。死後、自らの身をもって多くの人を救うための礎になる、尊い行為である。読んだ瞬間、送り出す人間のずしりとした感情が来た。医学を志す人もそうでない人も、ぜひとも見てほしい。そう思った。