【短編】最愛の人

宜野座

最愛の人

 私の想いは、決して届かない。

 

 その人への想いに気付いたのがいつだったかは、もう覚えていません。

 儚げで、触れれば瓦解しそうな危うさを秘めた表情。

 その瞳を見つめる度に、私の胸には切なさと高揚感、アンビバレントな感情が張り詰め、もうその瞳から顔を背けることができなくなってしまうのです。たとえこの世界の全ての美を掻き集めたとしても、これほど心を動かされることはないでしょう。

 そしてその人の瞳は、私の全てを見抜き、私が悲しみに打ちひしがれている時は一緒に悲しみ、嬉しいことがあった時には一緒に笑い合ってくれます。

 ああ、何でこの人は、こんなにも私に寄り添ってくれるのだろう。

 私たちの世界には、誰も入り込めません。

 

 そんな私だけの貴方あなた

 私は、誰よりも貴方を愛している。

 でも、私の想いは決して届かない。

 鏡に映る、貴方には。

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【短編】最愛の人 宜野座 @ginoza

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