第14話  奴隷からの脱却 8 バーナードとパレッティ家への仕置き 

「遅くなって済まん待たせたな、相棒」

この声と台詞は待っていたものだった。


ピンク頭の子爵様が飛び込んできた。


「待て、お前ばかりカッコつけやがって」

後ろに続くミックがそう言ってピンク頭を怒鳴った。


きっと首切り大公が軍を率いてやってきたんだ。

とにかく俺は安堵した。


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ピンク頭の子爵様はここに戻ってくるとは言わなかった。

だが彼の去り際の

『俺は本業に戻る。

これでも一応大公殿下の側近なんでな』

という言葉で俺は大公と侯爵がここに向かってると思っていた。


そのとおりになって助かった。


次々に東部軍の兵が入ってくる。

それを見た前領主を筆頭にパレッティ一族は急に態度を変えた。

今まで威張っていたのに急に殊勝な態度を取る。


侯爵がいるのに気付いた前領主は慌てて駆け寄る。

「閣下、お手を煩わせないよう先に制圧してお待ちしておりました」


「息絶えている者が沢山いるようだが。

紫色の斑点が出ているのは毒を盛ったのか。

何故そのような」



「こいつらは奴隷でございます。

…… 家令バーナードと一緒になって謀反を起こそうとしておりましたので…… 策を練り…… 一網打尽に…… 」

前領主は偽りの説明をしようとするが、この場に当事者の現領主や俺がいるせいか、言葉が途切れ途切れになる。


「閣下、おそれながらそれは嘘でございます」

俺が訴えると、前領主は真っ赤になり否定した。

「この者はタウロというバーナードの男娼。

極悪人でございます。

幼い風貌に騙されてはいけません」


「いえ証拠の念書もここにあります」


パレッティ一族の者が突然俺に斬りかかった。

「ええい黙れ、閣下の御前にお前のような汚らわしい者が」


しかしミックが剣を抜きそれを防ぎ、逆に斬り捨てた。


ミックさん助かったよ。

でも問答無用でバッサリやって大丈夫かな。

そしたら案の定キレたよ、前領主が。


「貴様何をする。

侯爵閣下の許しもないのに不埒なふるまい」

そして侯爵に願い出た。

「今斬られたのは我が一族に連なる者です。

こ奴を成敗することをお許しください」


「ならん! 

私が命じてからでは間に合わなかった。

そこのタウロに傷をついておったなら、パレッティ一族は皆、そこの屍

と同じようになったぞ」

侯爵は俺に斬りかかり屍となった者を顎で指した。


「その裁きには納得がいきません」

前領主は不服を申し立てた。


「そうか、しかし私は大公から今回の件に関して一任されているのだ。

大公殿下と私が何も知らないと思っているのか。

あちらこちらに間諜を張り巡らせてある。

当然パレッティ一族お前たち》の動向も把握しているぞ。

タウロ、その念書をここへ」


歯ぎしりをして睨みつけるパレッティ一族腐った貴族を横目に俺は侯爵へ念書を渡した。

それに目を通した侯爵は簡潔に沙汰を言い渡した。


「まずは隷属魔法の使いバーナード、そなたは簡単に死ぬことを許さん。

帝国で最高の隷属魔法の使い手に依頼し、一生奴隷として扱おう。

自死は出来ん。

死ぬまでの刑とする」


すぐに侯爵配下の兵がバーナードが自死せぬよう、素早く口に物を入れ、舌を噛まぬようにした。

だがバーナードは舌を噛むどころか気絶していた。

最重労働の刑とは死刑よりも重いとされる帝国法において最も残酷な刑であった。


「起こせ」と侯爵が命じ、バーナードは目を覚ます。

驚いたことに彼の髪はあっという間に真っ白になった。

そして立てないのか四つん這いになって連れ去られた。





「続いてパレッティ一族だが、前準伯爵は名誉爵とする。

他の者もそれに準ずる扱いとなる。

そしてこの領地に入ることを禁ずる。

直近までいた領地にて禄を与えよう」


うわっ元々は準伯爵・子爵・男爵・準男爵・勲爵・名誉爵だから五階級下だ。

中級貴族に胡坐かいてたコイツらにはきついんじゃないかな。


「何を、侯爵とはいえそんな横暴は許せんぞ」

前領主の長男はそう叫んだ途端首と胴が切り離された。


「他に不服な者はおらぬか」

今の惨劇を見て、誰も異議を唱えられない。


「うむよろしい。

現領主のジョンダン、そなたはこの領地をそのまま治めよ。

ただし爵位は男爵とする」


前領主が思わず声を漏らした。


「なんだ名誉爵、申したいことでもあるのか」


「はい、ジョンダンは我が息子にございますれば、この地に留まってもよろしいでしょうか」


「はてジョンダン殿はパレッティの姓を名乗ることを許されてないと間諜から聞いたばかりだぞ。

都合のいい時だけ家族扱いするでない」


えっマジで。

トンデモなく恐ろしいスパイ網だ。


侯爵は続けた。

「貴族とはいつも民の手本となるように生きていかねばならぬ。

ジョンダンも肝に銘ずるのだぞ。

そなたは今後サブラゴスと名乗るが良い。

異存はないか」


「侯爵閣下と同じ一族に加えて貰えるので…… 。

有り難き幸せ」


「うむ、では名誉爵殿の一族には退場いただこうかな」


彼らにとって名誉爵とは不名誉なのだろう。

皆一様に肩を落としふらふらと歩いて去った。

















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