第2話 クラス分け

 新年度と言えば「クラス分け」。俺は足早に私立松原高校の校門を抜けて、玄関の掲示板に向かった。1クラス、40人。1学年、20クラス。合計800人。全校生徒数2400人の超巨大スクール。それが俺が通う高校だ。


 おかげて、クラス分けの表がとてつもなく長い。まるで古文の絵巻物のようだ。俺は集まってくる群衆を前に茫然とたたずむしかなかった。


 すげー。こいつらパワー全開なのね。まあそうだよな。どんなやつがいるかで、この1年、決まるもんね。1年の時に同じクラスでつき合いだしたやつなんて悲惨だよなー。この人数なら、まず、お別れから始まるスタート確定。ざまあみろ!


 俺は自分には関係ないことを考えながら、人垣が引くのを待った。掲示板の前では人生ドラマが繰り広げられている。


「やった!3組。ヒロキ君と一緒だ」


「俺、13組かよ。縁起わりー」


「やっはり、私たち別々なのね」


「7組。終わった。体育のゴンドウ先生のクラスじゃんか」


「ラッキー。20組。保健室が近い」


 最後のやつ。意味わからん。おまえはそんなに病弱なんかい。どう見ても元気はつらつじゃんかよ。まあ、俺も保健室の椎名先生にはお世話になりたいが・・・。


 俺が椎名先生とのあり得ない展開を思い浮かべてニヤニヤしていると、背後から学生カバンで思いっきりたたかれた。


バシ。


「いってー。なんだよ」


 ふり向いたが誰もいない。頭を押さえながら掲示板に向き直る。


バシ。


 再びカバンで頭をたたかれる。


「だれだ」


俺が振り向いて見下ろすと、目の前に小人が立っていた。


「あんたね。私のこと無視したでしょ!」


「いえ。人込みで見えなかっただけです」


厄介なやつに捕まった。またしても敬語を使ってしまう俺。

俺をたたいたのは石田三美(いしだみつみ)。こちらも幼なじみ。一応、紹介しておこう。黒髪、ショートのメガネっ子。身長138cmのミニマムガール。チビのくせに猛勉強でなんとか、学校カーストの上位ランクにしがみついている策士バカだ。


「健太、良かったね。2年連続同じクラスだぞ。ほら8組」


俺は慌てて8組の張り紙を見た。山田健太。俺の名前がそこにあった。よりによって、石田三美と山下陽の名前まで。


 うっそだろー。20組もクラスがあるのに。幼なじみ二人と2年も一緒とは。ご都合主義者じゃね。俺の目の前が闇に閉ざされていく。


「何よ、その顔。私と一緒じゃ嫌なの?健太のくせに生意気!」


「いえ、その。うれしくてつい」


当然、俺の顔は笑っていない。むしろ引きつっている。基本、俺は『ぼっち』で学校カーストの底辺住人。カースト上位の幼なじみとは馴染まない。こいつは俺を落とし入れる悪魔だ。


俺のステップ2。1年を占うクラス分けは再び「大凶」と出た。

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