9.冗談じゃねーけど。




帰りのHP。



今日は体感的にすごく長い一日だった。



早く家に帰ろうと思いながら先生の話を聞いていると、最後に委員会があることが告げられた。





私、美化委員だった。



今日に限ってほんとに最悪。



朝から色々あったから、家でゆっくりしたいのに。





「海莉ちゃん、行こう?」



ぐったりしている私に、坂城くんが声をかけてきた。



「行こうって何処に?」



「海莉ちゃんも美化委員でしょ?」



そうだ、坂城くんと委員会一緒だったんだ。



「うん」



坂城くんとも気まずままだったけど、声をかけてくれたから一緒に指定の教室へ向かう。



その時、少しだけ柊と目があった気がしたけど、その視線はすぐに逸らされた。



はぁツラい…。







廊下を坂城くんと一緒に歩きながら、さっき言いそびれたことを言う。



「さっきは教科書見せてくれてありがとう」



「そんなの全然いいよ」



坂城くんはにっこり笑った。



でもその顔はすぐに真剣な顔になって。





「それより黒川と何かあった?」



その言葉に一瞬ドキッとした。



坂城くんは何か察してるのだろうか。





「え、何にもないよ」



きっとクラスの子に聞けば私と柊がケンカしたことなんてすぐにばれるのに。



それでも坂城くんを巻き込むのは違うと思った。





「そっか。でも僕、諦めないから」



「何を?」



「海莉ちゃんのこと」



そう言って笑てみせた顔はすごくかっこよくて、一瞬だけ見惚れてしまった。







美化委員の仕事は、当番の日に少し早く学校に来て、学校周辺のごみを拾うらしい。



くじで明日の当番を引いてしまった自分を呪う。



「さっそくだね」



「ごめんね」



今日は坂城くんに迷惑かけてばっかりだな…。



すごく自己嫌悪に陥る。





「全然いいよ、海莉ちゃんと一緒だから」



「あ、どうも…」



そう言ってもらえて、ありがたいはずなのに。



ストレートに言われるとむず痒いと言うか…。



どうリアクションしていいのか困ると言うか…。



こんなこと初めてだから不思議な気持ちだ。







やっと委員会が終わって、坂城くんと別れて家に帰る。



今日はいろんなことがありすぎて、正直頭の中がぐちゃぐちゃ。



坂城くんから言われた言葉も気になるけど、やっぱり一番の気がかりは柊のことで。



明日から柊とどう接すればいいんだろう。



そう思うだけで自然とため息がこぼれた。





家について、玄関に入ると見覚えのあるローファーが目に入った。



これって…?



急いで靴を脱いで家に入ると、


「あら、お帰り。柊ちゃん来てるわよ」


とお母さんがリビングから顔を出した。





やっぱり。



でもなんで?



ケンカしたばっかりだし今会うのは正直気まずい。



もしかして喧嘩のこと謝りに来てくれた?



柊が?



まさかね…。





私は急いで階段を駆け上がった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る