8.





その返事を見た坂城くんと目が合って、しばらく離れないから気まずくなる。



「ん、なに?」



って聞くと、また教科書に文字を書き始める坂城くん。





”残念だな”





ん?何が残念なの?



残念ってどういう意味?



全く理解できないでいると、また何か書いてて。





”海莉ちゃんのこと、気になってたから”





そこまで書いて、また綺麗な顔の坂城くんと目が合う。





え───。



なにそれ。



鼓動が一瞬にして飛び跳ねた。



今の私はきっと顔が赤くなってる。





坂城くんはそんな私を見てくすっと笑った。



なになに!?



分かんない!



からかわれてるの!?





”冗談じゃないよ”



私の心境を察したのかそんな言葉を書きだして。



挙句の果てには、





”まだ僕の入る隙ある?”



なんて書いてきた。





えっと。



どう返事をしたらいいのか、すごく戸惑う。



今まで誰にもそんな事言われたことないから、ほんの少し。



ほんの少しだけドキドキした。





結局、”ない!”と返事をして。



それから坂城くんを見ないようにずっと窓の外を眺めていた。



だって柊と付き合ってはいないけど、私が好きなのは柊だもん…。





やっと授業が終わって。



気まずいけど、科書見せてくれたお礼は言わなきゃと思って坂城くんの方を見ると、





「授業終わったんだし離れて」



柊が坂城くんの机を元の位置に無理やり戻すところだった。





「坂城、喧嘩売ってんの?」



「海莉ちゃんに教科書見せてもらってただけだよ」



坂城くんはそう言って、教室を出ていってしまった。





教科書を見せてくれたお礼を言えなかった。



坂城くんが教室から出て行くのを見てると視界に柊が入ってくる。



「海莉、坂城のこと気になんの?」



そりゃ、あんなこと言われたら気になっちゃうけど、柊が不機嫌なのが分かったから、



「そんなんじゃないよ」



恥ずかしいのもあって否定した。



だけど、柊様にはご納得頂けなかったようで。





「俺以外の男とイチャついてんじゃねーよ」





柊はすごい低いトーンでボソッとそう言った。



その言葉を聞いて、泣きそうになった。





私のこと好きでもないくせに、



本当の彼女にしてくれないくせに、



なんでそんなこと言うの…?







「あーそうですね!

彼氏いるのに、他の男子とイチャついてごめんね?!」



私は緊張の糸が切れたように、大きな声で柊に言い返した。





「なんで海莉がキレんの?」



「柊がムカつくからだよ!」



どうしよう止まらない。



「んだよそれ…。

俺の気持ちもちょっとは考えろよ…」





柊の気持ちって何?



分かんないよ。





「柊の気持ちなんて全然分かんない!」



「そーかよ。もう勝手にしろよ」



「勝手にするよ!」







目から涙がこぼれそうになったから、急いでその場から離れた。



教室を出ると同時に涙がこぼれ出て。



誰かにぶつかったけど、顔を見られたくなくって。



俯きながら


「ごめんなさい」


とだけ言って思いっきり走った。





柊のバカ。



バカバカバカバカ!





柊が追ってこれないように、女子トイレの個室に入る。



勢いよくトイレットペーパーをまわして涙を拭く。





なんで私、こんなに泣いてるの?







しばらくして、すぐそこで声が聞こえた。



「海莉、いるんでしょ?大丈夫?」



心配した美結が様子を見に来てくれたみたい。





「大丈夫じゃない」



そう言って個室から出て美結に抱き付いた。



「よしよし」



「美結~、辛いよ、苦しいよ…」



「そうだね、柊にも困っちゃったねホント」



それから美結は何も言わずに私が泣き止むまで付き合ってくれた。





あーあ。



柊と喧嘩しちゃった…。



クラスに戻っても柊とはずっと気まずいまま。



喧嘩したい訳じゃなかったのに。



何やってんだろう。





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