第3話

 閑静な住宅街の高級マンションは深夜だと言うのに、パトカーのサイレンが騒々しく鳴り響いていた。

 世間では聖夜クリスマスを祝っているのに耳障りで無粋なサイレンだ。


 現場となった聖羅 イブの部屋は、鑑識が綿密に捜査していた。

 バスタブの中には全裸の聖羅 イブが首を絞められて亡くなっていた。


 遺体の第一発見者の馬場は強面こわもての志村健太警部補に事情聴取されていた。


「だから刑事さん、何度も言ったでしょ……

 僕は彼女に呼び出されたンですよ…😭💦」

 部屋の外まで馬場アキラの泣き叫ぶ声が響いてきた。


 美人刑事クリスに続き俺も部屋の中へ入ろうとすると警備をする警察官に引き止められた。


「ちょッちょっと、あなた❗ ここは関係者以外、立ち入り禁止ですよ」


「僕は弁護士だ。中にいる第一発見者に依頼されたンだ」

 いつもの事だ。馴れているので胸の弁護士バッチを親指で差した。


「な、何ィ~、弁護士だって❓ 

 ウ、ウソつきなさい」

 どう見てもビジュアル系ミュージシャンのような格好だ。

 警官が疑うのも無理はない。


「俺は世界でただひとりのビジュアル系弁護士だ」

「な、何ィ、ビジュアル系弁護士❓」

 警察官はあきれ返るばかりだ。


「本物の弁護士よ。彼は❗」

 クリスの口添えで何とか中へ入った。


 リビングで事情聴取されていた馬場は俺が来た事を知ると手を振って叫んだ。


「こっち、こっちだよ❗ シンゴ君」


「おい、俺は馬場おまえのお抱え弁護士じゃないンだぜ」

 全く…… 深夜割り増し料金を取るぜ。


「よォ、ビジュアル系弁護士のお出座でましか」

 志村は苦笑いした。


「何よ…… 今度は【セクシークイーン】を殺しちゃったの❓ この前はデリ彼女カノで何人殺す気よ。忙しいわね」

 クリスは半笑いで毒づいた。

 馬場は以前にも『デリ彼女殺人事件』の容疑者になっていた。


「はァ~、俺は誰も殺さねぇ~よ」

 取り敢えず僕たちもソファに腰を下ろした。

「どういった事か、話しを訊こうか」

 やっと到着したんだ。俺だって詳しい事情を聴きたい。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る