第40話  深夜に大きな声出しちゃいけません!

田中と八木教授は、部屋に怒鳴り込んで入って来た大家に怒られていた。


大家「あんたたち!一体、何時だと思ってんだい!」


田中・八木教授「はい…すいません…」


大の大人と浪人生が、深夜に大きな音を出し過ぎて二人して、正座をして、大家に怒られているシュールな光景。


ーだけど、いつもだったら、こんな夜中になんで、大家に怒られているんだろうとげんなりする所だが、この感覚に懐かしさを覚えて少しうれしかった。怒られてうれしいって思うなんて、今までの僕だったら思わなかった事だろう。そうか。八木教授に付いて行ってから、いつの間にか僕は変態になっていたのかもしれない。


八木教授「と、田中は思うのであった」


田中「おい!人の心の中のナレーションを勝手に改悪してんじゃねえ!」


大家「あんたたち!反省してんのかい!!!」


怒られている最中にふざけた二人に対して、大家は怒った。


ーまあ、ちょっと、改悪されちゃってるけど、あながち間違えではないかな。


物思いにふける田中の顔を見て、八木教授はドン引きしていた。


八木教授「ついに・・・へ、、へんたいに・・・」


田中「そこじゃねえわ!!!」


大家の長い説教は、朝まで続き、さすがに眠くなったのか、大家はいつの間にか帰っていた。


田中と八木教授は、大家が居なくなった後、緊張感の糸がプツンと切れたのか、二人して、寝っ転がって爆睡した。


田中が起きた時には、窓の外は、夕焼けになっていた。

気づいたら、夕方まで爆睡していた。

隣を見ると、八木教授は、まだ、爆睡していたが、妙にこの部屋の中の空間にいる事に謎の気まずさを感じて八木教授を起こした。


寝起きの八木教授は、まだ、寝ぼけている感じだった。


田中「八木教授!もう、夕方ですよ!!」


八木教授「え?なんで、田中がいるの?」


田中「昨日の深夜に朝まで大家に怒られて、気づいたら爆睡しちゃってました」


八木教授「あ、そう言えば、夢の中で、大家に怒られてたな」


田中「おい!怒られてる途中で寝落ちしてたろ!」


そんな懐かしさを感じるやり取りをした後に、仕切り直した八木教授は田中に話を始める。


八木教授「まあ、田中の中にも腑に落ちてないものがあると思うだろうから、説明しておこうか。あの生中継土下座勝負の件について。」


田中「え。あの勝負の事はもう、いいですよ。本番は東大受験ですし、それで、見返しましょう」


八木教授「良かった。計画通りだ」


田中「へ?計画通り?」


八木教授「そう。あの生中継土下座勝負の俺の計画は、あの勝負に『田中が敗北する』事だったんだ」


八木教授の衝撃のカミングアウトに田中は驚きを隠せなかった。


田中「え?どうゆうことすか?僕が敗北する事が八木教授にとっての計画だったって?」


八木教授「まあ。説明しようではないか。あの勝負の本当の目的は、『田中が勝負に敗北する事によって大きな挫折を味わってもらう事』だったんだ。そもそも、あの勝負に田中が勝てるとは最初から思ってない」


田中「なんで、そんな事させるんですか?僕の土下座損じゃないですか!?」


八木教授「まあ、落ち着け。そこに俺の計画の狙いがある。」


八木教授は倒れていたホワイトボードを立て直して書き始める。


『東大受験者Aくん…成績が急激に上がっていく中、途中で大きな挫折を味わう

 東大受験者Bくん…成績が伸び悩む中、途中で大きな挫折を味わう』


ホワイトボードに書かれた内容を指さしながら八木教授は田中に問いかける。


八木教授「このAくん、Bくんを見比べて見て、最終的に結果を出すのはどちらだと思う?」


田中「うーん。どちらも結果を出せなそうな感じがします。」


八木教授「そう見えるか?正解は、最終的に結果を出すのは、Bくんだ。」


田中「え?なんでですか!?」


田中は八木教授の予想外の回答に驚きしかなかった。


つづく


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