現在2

 ──その日、私は初めて許婚と一夜を共にし、「純潔」を捧げて彼に「貫かれ」、「女」になりました。

 そして驚くべきことに、逸樹さんと結ばれた日の翌月から、私に「女の子の日」が来るようになったのです。


 私の股間──萎縮した陰嚢の痕跡のあたりには、あいかわらず肉眼では何の“孔”も確認できないのですが、セックスやオナニーの時は指や男根を貪欲に飲み込み、また月に一度の生理の時期にはソコから経血が滲み出してきます。

 今後、逸樹さんと「する」時は、安全日にも気を配る必要があるのでしょうね。


 その後も、逸樹さんとの交際は順調に進展し、今年の三月に私が大学を卒業すると同時に私達は籍を入れました。

 翌月四月に華燭の典を挙げて私は彼の元に嫁ぎ、晴れて「橘美琴」として、こうやって「若奥様」をしつつ今に至る──というわけです。


 ちなみに、妊娠が発覚したのは新婚三カ月目。ギリギリセーフというところでしょうか。もっとも、結婚前から私と逸樹さんが関係を持っていることは、両親にはとっくにお見通しだったようですけど。


 嬉しいことに、妊娠が判明した前後から私の胸は再び大きくなり始めました。ギリギリAから現在は余裕のBカップ。DとかEの「持てる人」から見れば、まだまだ小さいのでしょうけど、それでも私にとっては大変喜ばしい変化です。


 ちょうど結婚してしばらく経った頃だったので、てっきり「毎日揉まれると大きくなる」という俗説が正しかったのかと思っていたのですが……。

 まあ、出産後の授乳のためなのでしょうが、できれば今後もこのままの大きさを保って欲しいものです(逸樹さんも視覚的触感的に嬉しそうですし♪)。


 え? 「健」になった「彼女」の消息ですか?

 ──実は大学時代に一度だけ顔を合わせたことがあります。


 身長が180センチ近くまで伸び、160代半ばで止まった私よりも随分目線が高くなっていましたし、体格も相応にがっしりしてます。

 海外放浪中に知り合った美人な白人女性と、ちゃっかり結婚したという「健」の方も、どうやら身体の事情は似たようなものらしいです。


 陰核が陰茎として機能するようになり、性的に興奮すると“本物”同様20センチぐらいの大きさに膨張するそうです。

 尿はクリトリスの下の尿道口から出るものの、私とは逆に、まるで“陰茎(偽)”に添うように勢いよく噴出するで、男子トイレでごくふつうに立ちションできるんだとか。同様の理屈で、愛液もまるで精液の如く「射精」するみたいです。

 膣口は確かに存在するものの、ギュッと堅く閉ざされその奥には何も入らず、触っても特に気持ちよくならないとのこと。


 おもしろいことに大小の陰唇が肥大化して疑似的に陰嚢として機能しているらしく、もし股間を蹴られたりしようものなら男特有のトンデモない激痛が走る──と「彼」が顔をしかめた時には、思わず笑ってしまいました。


 乳房周辺も何も感じなくなってただの脂肪の塊──というか、そもそも筋肉にとって代わられ、隆起らしい隆起はもはや存在しないそうです。確かにタンクトップの胸元から覗く胸板は、どう見ても筋肉質な男性のものです。

 聞けば、身体能力も同年代の男並みかそれ以上にあるのだとか。私が、女性として暮らすうちに、いつの間にか「女の子」としての腕力しかなくなったのと対照的ですね。


 そうして、ふと会話が途切れた時──。


 「ねぇ、今幸せ?」


 ──そう聞いたのは、どちらからだったでしょうか。明確には覚えてませんが、それに対する答えの方はハッキリ覚えています。


 「「うん、もちろん!」」


 間髪をいれず、私達はふたりとも、異口同音にそう答えたのです。

 それっきり、アメリカに移住した彼とは会っていません。



 「ただいま、今帰ったよ~!」

 あら、愛しの旦那様がお帰りのようです。では、私の昔話はこのヘンで。

 さぁ、夕飯の仕上げをしないとね♪


-おわり-

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

身操ノ隷嬲(しんそうのれいじょう) 嵐山之鬼子(KCA) @Arasiyama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ