第13話:奴隷商の息子は奴隷の扱いが難しいと知る
アルノルトが退室して、俺はしばらく三人の女を見ていたが一向に動かない。
奉仕って、いつするんだろう?
「なあ、奉仕活動があるのなら、さっさとしてくれないか?」
俺は、パオリーアたちに言う。別に強い口調で言ったわけではないのだが、引きつった顔で三人はソファから立ち上がると、床に座った。
「「「も、申し訳ありません!」」」
三人同時に土下座。ちょっと、待て、俺は怒ったわけではないんだからと、声をかけようと立ち上がる。
「ヒッ! ご、ごめんなさい! ウチが奉仕に呼ばれることってなかったので、何をしていいのか?」
獅子人族のマリレーネは、正座した状態から俺を見上げて涙目で言った。
うっ、可愛い……それに、その胸元の谷間が強烈にアピールして来て、目のやり場に困る。
「そうか、マリレーネははじめてか。奉仕に詳しいのは誰?」
アーヴィアが、狐の尻尾を左右に振って、小さくハイと答えた。
狐も尻尾を犬のように振るのだと驚いた。フサフサした尻尾でモフモフしたいものだ。
「あの……私も何度かニート様にご奉仕させていただいたことがあります。お忘れですか?」
え? まったく覚えがない、というか、この世界に来る前の記憶なんてあるわけがない。
この世界に来たばかりなのだ。どう答えるべきか……。
「悪いが、俺は記憶がなくしているんだ。パオリーアとアーヴィアがどんな奉仕をしていたのか知らないんだ」
「……そうですか」
どこかガッカリしているアーヴィア。
なぜ、がっかりしてるんだ?
「では、さっそくアーヴィアとパオリーアはマリレーネに教えてやってくれ。俺は風呂に入る」
俺はそう言うと、三人を残して部屋を出た。
なぜか、三人もついてくる。あれ、部屋の掃除とかしてくれるんじゃないのか?
「お前たちはどこに行くんだ?」
「私たちも、風呂場へ……」
アーヴィアが蚊の泣くような声で答えた。声ちっちゃいよ。
掃除用具って風呂場にあるのかな。
まあ、いいか……俺は、振り向くとパオリーアに聞いた。
「先に歩いてくれ」
「はい、かしこまりました」
俺は、この屋敷の間取りがさっぱりわからない。
広い屋敷で部屋数も多い。
住んでいる人数の割に部屋が多く、広いので風呂場がどこにあるのかもいまいち分かっていなかった。
先を歩かせてついて行くほうが手っ取り早い。
後ろから見るパオリーアは、スタイルが良かった。
しばらく、後ろを歩いていると、ついお尻ばかり見てしまう。
歩くたびに、ムギュッ、ムギュッと左右に上下する双丘。
柔らかそうな、大きなお尻につい見とれてしまっていた。
チラッと、後ろを振り返るとチョコチョコついてくる狐耳の少女に、猫耳の筋肉質の女奴隷。
二人とも目を伏せて、ついて来ている。
マリレーネもかなり巨乳だよな……バレーボールがふたつ引っ付いているみたいだ。
パオリーアとマリレーネ、どっちが大きいんだろう。そんな、エロいことを考えながら歩いていると風呂場に着いた。
脱衣場に入ると、パオリーアが俺の前に立ちシャツを脱がそうとしてくる。
「あわわわっ! な、何をするんだ! 自分で脱ぐよ!」
俺は慌てて大きな声を出してしまったので、一瞬で三人は床に正座し頭を下げた。
申し訳ございません、お許しくださいを連呼している。
「いいんだ。少しびっくりしただけだ。服くらいは自分で脱げる。お前たちは自分たちの仕事をすればいい」
俺は、三人に立つように言うと背を向けてシャツを脱いだ。
「あのー、ニート様のお着替えをお持ちするのを忘れましたので、取ってまいります!」
「ああ、すまない。俺もうっかりしていたよ。じゃあ、パオリーアは持って来てくれたら、この棚に置いてくれ」
「かしこまりました」
俺は、上半身裸になると浴室が気になって扉を開け中を確認した。
元いた世界のような大浴場を想像していたのだが、四、五人が入れるほどの真四角の湯船があった。湯煙が朦々と立ち、いい風呂だ。
これなら、ゆっくりと疲れを癒せそうだ。
俺は、さっそくズボンと
ふと、気になって後ろを見るとマリレーネとアーヴィアが立ってこちらを見ている。
「いつまでそんなところに立っているの? 早くしろ」
俺は恥ずかしさのあまり、股間を手で隠しなが言った。
声が上ずって思ったより強い口調で言ってしまう。
しまった! と思ったのだが、案の定、二人はなぜか大急ぎで貫頭衣を脱ぎ始めた。
「ちょっと、ちょっと……待て、待て!」
「はい、なんでしょう」
アーヴィアがきょとん顔で、俺に聞く。
こっちが何でしょうって聞きたいよ!
マリレーネなんて、すでにスッポンポンだし……
立派な体格しているとは思ったが、これはHカップ以上か。
一瞬で胸を見て、大きさまで推測してしまう自分の鑑定眼に驚く。
さすが、毎日エロ動画を見ていただけのことはある。
「二人とも、どうして裸になった?」
「え?」
「え? って、俺なにか変なこと言った?」
「いえ……。裸にならないほうがいいですか?」
アーヴィアが、ボソボソと小声で言うので俺はマリレーネを見た。
「あの、ニート様。ご奉仕はお部屋の方がよろしかったでしょうか?」
「ああ、そうだな。そうしてくれ。俺はゆっくりと一人で風呂に入りたいんだ」
俺は、股間を隠しつつ、ちょっぴり元気になりつつある息子をなだめながら前かがみで風呂場へ向かった。
◆
「ニート様。お着替えをお持ちしました……」
パオリーアの、澄んだ声が風呂場に響く。
こういうとき、ありがとうと言っていいのだろうか?
奴隷に対して感謝の気持ちを伝えて変に思われないか?
しかし、相手は女の子だ。奴隷とはいえ、俺の中では可愛いケモミミの女の子。
丁寧にやさしく接した方が、あとあと仲良くなれるんじゃないだろうか……
「あ、ありがと……っ! ちょ! なんで入ってくる!」
俺が返答する前に、パオリーアが全裸でこちらに向かってきていた。
湯けむりで大事なところに霞がかかっているのは、自主規制かなにかかな?
思わず、目をそらしたが、やっぱりもう一度振り返って見てみる。
二度見は男の本能のようなものだ。
「あの……ニート様。背中を流させてください」
「あ、はい……いいけど……裸で恥ずかしかったら服を着たままでいいよ」
俺は本音とはうらはらに、服を着るようにすすめた。しかし、裸で大丈夫ですだと? マジか!
奴隷って、そんなこともしてくれるのか。
俺は、鼻の下が伸びるのを手で押さえて隠し、左手で股間を押さえて浴槽から出る。
パオリーアが、こちらにどうぞと木でできた椅子を持ってくる。
思わず見とれてしまったが、獣人族でも見た目は人間の女性そのものだった。
ケモミミと尻尾があるだけ。むしろ、ケモミミがあるだけに萌え度が高い。
心臓が、飛び出るほどドキドキし、動悸が激しすぎて胸が苦しくなった。
「ニート様。大丈夫ですか!」
胸を押さえたためかパオリーアも心配そうに手のひらを俺の胸に当てる。ああ、癒される。
さらにパオリーアは、俺に寄り添うように体を押し付けてくる。
俺の腕にやわらかな肌の感触……これは、まさしく夢にまで見たマシュマロに形容される女性の象徴の感触。
はぁ、やわらけぇ。温かくて、ふんわりして、それでいて弾力があって……
おっと、いかんいかん。
「大丈夫だ。手を離せ!」
「も、申し訳ありませんでした!」
うっ、すっぽんぽんで土下座するパオリーア。この状況を誰かに見られたら、ぜったい俺がいじめているって思われるだろう。
「いいから、いいから。では、背中を洗ってくれ」
「……あ、はい……。わ、私その初めてでして……。でもやり方は聞いています」
なんだよ、背中を洗うくらいでやり方も何も……あれ? この感触って……!
背中に押し付けられた、さきほど目の前にぶら下がっていた、たわわに実ったおっぱいの感触。
思わず立ち上がってしまった。
「アッ!」
小さく驚きの声を上げるパオリーア。
風俗経験豊富な俺でも、不意打ちされると驚くだろう。
「手で洗うんじゃないのか? いつもそうやって洗ってたっけ?」
俺は、上ずった声で聞くとパオリーアは、
「さきほど、触るなとおっしゃったので、胸をご所望かと……」
「あ、触らなくていいって言ったのは……まぁいいか。俺が悪かった」
俺は自分の指示の仕方が悪くて、奴隷に間違った行動をさせたことを恥じた。
奴隷商人って思ったより難しいぞ。
けっきょく、俺はパオリーアに全身を洗ってもらい、スッキリして部屋へと戻ったのだった。
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