第2話 マドレーヌ王国の生物兵器がなくなった!?

 慌てている様子のドリルをペットが気遣う。

「どうした、ドリル」

 ペットに対して無言で頷き、顔面蒼白なドリルが語りだす。

「ラルフ様、王国が能力を用いて開発していた生物兵器をご存知ですか。それが、何者かにより奪われました」

 

 ムギが生物兵器という耳慣れないことばを聞いて驚いてしまう。大分平和的な国をイメージしていた。

「生物兵器って、マドレーヌ王国、結構やばい国なんですね」

「今は倫理面で禁止されてるけどね。大昔に開発しったて話だよ」

 頬杖を付きながらラルフが、サラッと言う。


 ムギはとりあえず状況の把握をしなければと、ドリルに尋ねる。

「その生物兵器ってどんなのなんですか」

 ドリルが、さらに怯えた様子になってしまう。

「何でも、いくつかの動物を能力で合成し、巨大化したものらしい。それを能力で操作するんだそうだ」


 さらなる王国の実態を知って、ムギは驚愕する。

「マドレーヌ王国、もっと、ほっこりした国なのかと思いました……」

 

 そんなムギをよそに、今は平和だからなのか、ラルフが淡々としている。

「マドレーヌ王国は帝国の属国という立場に落ち着いてるけど、昔から小競り合いは耐えないからね。私も実物は見たことないけど」


 今度はペットがドリルに聞く。

「なんだってまた、こっちの方にそれがくるんだ?」

「それは、分からない。ただ目撃情報があって、こちらの方なのは間違いないんだ。オミソ村の林の方に」


 ラルフが不思議そうな顔をしている。

「でもドリル部隊の管轄違くない?」

 また、ドリルが心苦しそうに答える。

「それが……、その警備をしていたのが我が部隊なんです。申し訳ありません!」

 ラルフに向かって、ドリルがうなだれる。

「いやいや、私は王国を出た身だし」

 ラルフは気にかけているドリルに対して、手をヒラヒラさせながら恐縮する。


 そんなドリルを見てペットが少し冷やかす。

「どうせ、お前の部隊だから、暇な時は筋トレでもしてたんじゃないか」


 ドリルが、正々堂々と言い放つ。

「勤務中の筋トレは控えるように言ってある。私は我が部隊を信じている!」

 ドリルの部下が、ドリルの部下らしく感動して「隊長!」と歓喜の声を上げている様子を見て、ムギはつい言ってしまう。

「控えてるんだ。禁止はしてなんだ……」


 焦るに焦り、不安にかられているドリルに、ラルフが微笑む。

「それなりに規則どおりにやって、事故が起きてしまったのだったら、規則を見直すべきであって、ドリル部隊は悪くないよ」


 ドリルが涙をながして、ラルフの手を握る。

「ラルフ様!」

 ドリルが更に、ボロボロと泣き出す。ドリルの行動に、ドリルの部下達も引いてる。

「あの、鬼のマッチョ隊長が…」


 ラルフもちょっと引きながら、号泣しているドリルの背中をトントンと、叩いてやる。

「オミソ村にとっても、危ない話だから、よろしくお願いするよ」

「ラルフ様! ありがとございます」

 また、ドリルが泣いている。ペットがその様子をみて呆れて言う。

「だからドリルに優しくするなって。おかしくなるんだから」

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