デメキン様を狙う謎の宗教団体現る

第1話 ライラ 参上!? 惨状!?

 ライラも自警団に加わり防衛面の問題もクリア。観光客も安定的に訪れ、財政も豊かに。オミソ村には穏やかな時間が流れていた。……のは、ついさっきまでの話。


 デメキン様の前では、ムギとラルフとペットが、いつものように人形を売り、他の店も盛況だ。とても賑やかで、明るい雰囲気。

 しかし、突然デメキン様の前に、白い頭巾をかぶった集団が、ズラっと集まる。そして声高に叫ぶ。


「デメキン様は、我がモチモチ教のものだ」


あたりが騒然となる。白い頭巾が続ける。

「なんだ、この村の有様は。この村の者はデメキン様を金づるとしか思っていない」


 この時、オミソ村の人の心が一つになった。

「何も言えねー」

 という気持ちで。


「デメキン様は我がモチモチ教の大切な御神体だ! モチモチ教の元にあってこそデメキン様は本来の役割をお果たしになるこができる」


 ムギがラルフの方を見る。

「いや、だからと言って、渡す理由もないし。村長」

 ムギの心配をよそに、ラルフが自信満々だ。

「ムギ君。何を恐れることがあるんだね。我々、オミソ村には強力な自警団がいるではないか」

 

 白頭巾の集団の前にオミソ村の自警団がズラリと対峙するように並ぶ。ムギがキョロキョロ自警団を見回す。最大の戦力であるライラが見当たらない。


「村長!ライラがいません」

「何?」


 ヒロならばすぐ事情が分かるはずだ。ムギとラルフが、ヒロの近くに向かう。


「ヒロちゃん、ライラは?」

 気まずそうにヒロが言う。

「あいつは、今、呼ばない方が…」

 ラルフも不思議に思い聞く。

「え? ライラ君なら、こんな集団……」

 

 ラルフが言い終わるか、終わらないかのところで、オミソ村の青い自警団の制服を着たライラが走り込んでくる。

 オミソ村の自警団二人の肩に手を掛け、弾みを付け飛び上がり宙返りし、白頭巾の集団の前に出る。

 そのまま白頭巾の集団に足払いをして、あっという間に5人くらいを倒す。ヒロが叫ぶ。


「ライラ!やりすぎるな」

「私に命令するな!」

 ライラの言葉にヒロがショックを受けている。

「え、俺、班のリーダーなんたけど…」


 ライラが自分の剣を横にして向かって来た三人の顔にぶつける。襲ってきた者の剣を蹴り飛ばし、背負い投げをしていく。

 白頭巾達がライラの攻撃に怯えるものの、一人が何かに気付く。


「あの女、腕が立つたけで、能力者じゃないんじゃないか? さっきから能力を使わない」


 白頭巾の三人ほどが、能力を発動しようとライラに手を、かざす。その前にライラが手を、かざし火の能力で相手を押し負かす。


「腕力の方がストレス解消になるだけだ」


 白頭巾達が、あとずさる。

「撤退だ!」

 走り去っていく白頭巾達。

 観光客達などが圧倒されているが、少しパチパチと拍手が起きている。


 ヒロが語る。


「今日、あいつ自警団の朝練に遅刻したんだ」

 時には遅刻もあるのではないかと思いムギが聞き返す。

「うん?それが何か?」

「筋トレ狂いだからな。自分で自分が許せなかったんだろう。ピリピリしてて今日、誰もライラに話しかけていない」


 ライラが動き回ったためか、スッキリした顔をしている。それを見てヒロが心底ホッとした表情だ。


「ああ!これで、お昼休憩の時間は伝えられそう!」


「ヒロちゃん…」

 ラルフも心配する。

「なんかヒロ君に、一番苦労かけてる気がしてきたよ」


<゜)))彡 <゜)))彡 <゜)))彡

 

 村長室でムギとラルフとペットが話している。今日の一件に満足そうなラルフ。

「ふっふっふ。オミソ村の防衛は万全だ。これで何の心配もないね」

 時折、楽天家で、しっかりしているのか、していないのか分からないラルフをムギが少し心配する。

「そういう慢心はよくないんじゃないですかね」

 ペットもムギと同じ意見だ。

「そうだぞラルフ。油断は禁物だ」

 そんなムギとペットを気にする様子もなく、ラルフの調子は変わらない。

「またまたー。二人は心配性だな」

 

 そこへ突然村長室の扉が開く。そこには血相を変えたドリルが立っている。

「ラルフ様!オミソ村の領土への立ち入りをドリル部隊に許可いただけますでしょうか」

 ドリルがただならぬ様子だ。続けて、ドリルの部下数名も、村長室に入ってくる。 

 それぞれ、丁寧にラルフとペットに敬礼をする。

「ラルフ様、ペットさん、失礼いたします」


 ラルフが、ムギとペットを見る。

「ほらー、二人が、心配するから呼び寄せちゃったじゃない」

 ムギが驚く。

「え! 僕たちのせいですか?」

「言霊ってものがあるのだよ」

 

 

 

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