第7話・剣技を使え。

「本の通りなら、モンスターは決められた攻撃を繰り返すだけの馬鹿の一つ覚えだぁ〜。人間様の力を思い知らせてやるぅ!」


 斬空波は剣を振るだけで、真っ直ぐに斬撃というものが飛ぶらしいけどぉ〜?縦振りと横振りで違いはあるんだろうかぁ〜?


「そいやぁー!」とまずはエッサは剣を掛け声と共に横振りしました。でも、何も起きませんでした。


「あれ?なんで何も起きんの?」


 エッサはおかしいなぁ〜?と首を傾げています。でも、そんな暇はありません。ガサガサ、ガサガサと葉音を立てて、トレントがすぐ近くに迫っています。エッサは一度、安全な距離まで離れる必要がありました。


「まさか、オラのレベルが1以下だったのかぁ〜?そんな訳がないぃ!中ボスとか、その辺に現れる野盗でもレベルがあるのに、村人のオラに無い訳がない!何かが足りないだけだぁ〜。」


『ダッダッダッ!』と距離を取ります。トレントは動きが遅いので、ちょっと早い赤ん坊のヨチヨチ歩きと同じです。簡単には追い付けません。


 パラパラパラと急いで技の習得条件が書かれたページを探します。トレントが再び攻撃範囲まで接近するのに、計算では、30〜40秒はかかります。


「習得条件がない、誰でも最初から使える技なのに、何故、使えないんだぁ〜?横振りじゃなくて、縦振りじゃないと駄目なのかぁ〜?えいやぁー!」


 急いで本を地面に置くと、両手で剣を握って縦に振り下ろしました。ビューンと音を立てて剣が振り下ろされましたが、何も起きません。やっぱり、エッサのレベルが1以下なのかもしれません。エッサは必死に頭を使って考えます。


「はっ!そういえば魔法を使う時に、恥ずかしい言葉を唱えるように書いていたけど、もしかして、これも恥ずかしい言葉を唱えないと使えないんじゃねぇのかぁ?オラ、あんな恥ずかしい言葉を唱えないと使えないのなら、魔法なんて一生使わないぞぉ!」


『メコメコ?』と地面が微妙に揺れている気がします。


「はっ!下から来るだぁ!」と攻撃に気づいたエッサは大急ぎで真横に飛び退きました。エッサが今まで立っていた地面から、6本の鋭い木の根が突き出していました。


「はぃやぁ〜!トレントの攻撃方法を知らなかったら、オラ、死んでいたなぁ。今は恥ずかしがっている場合じゃねぇ。うんだぁ、うんだぁ。行くぞぉ!斬空波ー!」


 エッサは急いで起き上がると、剣をトレントに向けて構えました。剣をしっかりと握って気合いを入れます。あとは技名を叫びながら、剣を縦に振り下ろすだけでした。


『ビューウ〜〜、ザァン!』


 真っ直ぐに飛んで行った斬撃がトレントに命中しました。グラグラと攻撃の衝撃波でトレントは揺れていましたが、すぐに体勢を整えると向かって来ました。







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