第1の試練「シンデレラ」

第1の試練「シンデレラ」(1)

 この2人これからどうするのか。当然、試練を受けるしかない。無力なラビーだが、どうやって闇の女王を倒すか考えている。


 そんな中、アリスはルークを見て、何かを思い出そうとしている。

「あっ、思い出した。ルークって、狐に似ているよね!?」

 その発言にアリスを睨むルーク。

「はぁ!? 誰が狐に似ているって!? あんな下等動物と一緒にするな!」

「ラビー、あの人何なの!? さっき知り合のような感じだったけど、私、あの人苦手」

「お姉ちゃん、何言っているの!? あの小説を忘れたの!?」

「あの小説!? なんのこと!?」


 まさか闇の女王の仕業なのか、これではノートを取り戻しても完結できない、ノートが消滅する。いったいどうすればいいのか、そう思ったラビーは不安に襲われていた。

 その様子を見ていたルークは、わざとらしく言い忘れていたと言い、アリスの記憶を一部消したと言った。念には念を入れる、万が一負けるわけにはいかない闇の女王。


 ところで、このルークは何者なのか。

 ラビーの父親は、ラビーの住んでいる王国の王。その王の側近がルーク。王から絶大な支持を得て、王の右腕とも言われ。とても優しく、頭が良く、本が大好き。いわば、ラビーにとっては、兄のような存在だった。


 そんな中、ソファーに座り2人を見ているルークは。

「そこの2人。第1の試練を言い渡す!」


 こんな状態で、第1の試練が告げられた。

 第1の試練は、アリスのみで試練を行い、ラビーは一切口出し無用。試練内容は、6つの物語から1つを選び、なるべく物語のイメージを崩さずに物語をリメイクし。3時間以内書き上げ、ルークが面白いと言ったらクリア。但し、3時間以内なら何回でもチャレンジできる。もしクリアできない場合は、ラビーは即、石になる。第1の試練内容は以上。


 ルークは、6つの物語のタイトルを読み上げ。ソファーの前にある、テーブルの上にその本が現れ。アリスにその物語を選ばせた。

 目の前には以前アリスが読んだ本ばかり。しかし、アリスの記憶が一部消え、読んだはずの本の記憶がなくなり。自分がどうしてここにいるのかさえもわからない状態。ただ、1つだけわかっていることは、この試練をクリアしないとラビーが石になること。

 アリスは、テーブルの上に並んだ6つの本をジッと見て、1冊の本を手にした。その本のタイトルは、『シンデレラ』

 すると、残りの本はテーブルから消え。テーブルの上には、ノートとシャーペンと消しゴムが現れ。第1の試練が開始された。


 ルークは、庭のベンチに座っているから物語を書き上げたら持ってくるようにと言い。もし妙な真似をしたらラビーは即、石になるから覚悟しろと言って庭に出た。


 アリスは、『シンデレラ』の本を目の前にし、本を開こうともしない。

 その姿見てラビーは、考えたくないことが頭をよぎった。もしや父親との約束を守り書けないか。或いは、あの時のトラウマが蘇り書けないのか。完結は無理なのか。あの誓はウソだというのか。ラビーはアリスを信じている。


 この時アリスは、物語や小説を書いたことがない状態なっていた。どうやってクリアすればいいのかわからない。

 こうなると、アリスの物語や小説を書く力が試される。潜在能力を引き出せるかにかかっている。


 向かい合わせでソファーに座る2人。この時、とにかく考えても仕方ないと思ったアリスは、『シンデレラ』物語を読むことにした。

 すると、アリスはあっという間に読み終え。今何かアリスが微笑んだかのように見えたラビー。

 その時、アリスは何かを思いつき。ノートに書き始め、ペンが軽やかに進んでいく。この光景に、ラビーはアリスを信じ、ただそれを見ている。アリスに任せるしかない、不安の表情を見せるラビー。

 

 第1の試練開始から、2時間が経ち。アリスはペンを置き、一気に書きあげた。

 すると、アリスはその物語をラビーに見せもせず。手にノートを持ち、直接ルークの所へ行った。その後をついて行くラビー。

 ルークはベンチに座り。アリスはルークの目の前に立ち、ノートを差し出した。懐中時計を見るルーク。

「出来ましたか!? 残り1時間。1発勝負と言ったところか。よろしい、では拝見する」


 アリスの表情は何処か楽しげで、その様子はまるで自身に満ち溢れているように見える。アリスの後ろにいるラビーは、お姉ちゃんは私が守ると、危機管理を強めていた。

 ルークはノートを受け取り、5分くらいで読み終え。果たしてこの試練はクリアなるのか。突然立ち上がったルーク。

「面白かった! よくこの短時間仕上げましたね。流石、アリス様。この試練、クリアです!」

 大喜びするアリスは、ラビーと一緒に喜びを分かち合っている。そんな中、ラビーはルークに感じていたあの匂いが消えていることに気がつき。


 その時、辺りが薄暗くなり。闇の女王は、2人が慌てふためく光景を楽しみにしていたのにこのありさま。記憶を消したはずなのに何故、物語が書けるのか。機嫌が悪い闇の女王。

「ルーク! これはいったいどいうことだ!? 説明しなさい!」

「女王様に申し上げます! 私の審査が不服と言うことでしょうか!?」

「不服!? そういうことじゃない! わらわは見たい、こいつらが慌てふためく姿を」

「女王様何を言っているんですか!? これからが本番じゃないですか!?」

「さぁ、早くわらわを楽しませなさい、ルーク」

「はい、かしこまりました女王様」


 闇の女王は、以前姿は見えず。辺りはまた明るくなり。ルークは辺りを気にしている。

 すると、突然ルークは手のひらを広げ、右手を挙げ、これでOKと言い。右手を下ろした。

「アリス様、ラビー王女様、御無礼の数々お許しください!」

 ひざまづくルーク。ラビーやはりと思い。

「ルーク、やはり操られていたんですね」

「はい、そうです。申し訳ありませんでした」

「でも、どうして魔法が解けたの?」

「アリス様の『シンデレラ』を読み終えたら、記憶がよみがえり、操られていたことに気づいたんです」


 この時、ラビーはアリスの描くシンデレラが気になり読んでみた。

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