闇の女王の企み(2)

 翌朝。

 アリスは目が覚め、時計を見ると午前8時。隣で寝ているラビーを起こし、2人はダイニングに行くと、両親はまだ寝ている。昨日はいろいろあって、眠りにつくのが4人とも遅かった。


 アリスは椅子に座り。ラビーが目をこすりながら、ソファーに誰かいることに気づき、あの後姿に見覚えがある。ラビーは何かを思い出し、駆け寄り、驚いた。

「えっ!? 何であなたがここにいるの!? 牢屋に入れられたはず。どうしてここいるの? ルーク!?」

「これはこれは、おはようございます。ラビー王女様」

「お父様、お母様は無事なの!?」

「もちろん無事ですよ。このノートの中で」


 その時、ラビーの後ろにアリスが立っていた。

「あっ! そのノート私の」

 ルークの表情が険しくなり。

「はぁ!? 何を言っている。このノートは闇の女王様の物だ。いや、もうすでに違うな。夢の女王様の物だ」


 この時、ルークに対してラビーは、両親と同じ匂いがした。

「ルーク、まさかあなたまで闇の女王に操られているの!?」

「はぁ!? 何を訳の分からないことを言っている。言っとくが、私は、夢の女王様の忠実な家来だ」

「夢の女王の家来!?」


 その時、辺りが薄暗くなり。

「ルーク。お前は少し下がっていなさい」

「はい、女王様!」

 ルークは数歩後ずさりし。姿は見えず、声だけが響き。ラビーはその声に聞き覚えが。

「この声は、闇の女王。姿を見せなさい、闇の女王!」

 ラビーは辺りをキョロキョロ。

 そこに割って入るルーク。

「だから言っているだろ!? それは昔の名だと」

 闇の女王は少し険しい表情を見せ。

「ルーク、静かに!」

「はい、女王様!」


 闇の女王は2人を見た。

「さて、わらわが味わったこの屈辱。この恨み。やっと果たせる。お前たちをこのフィールドに呼び寄せたのは他でもない」

 闇の女王は鋭い目つきで。

「ラビー王女。ルークが持っているノートをお前の能力で取り返してみなさい。簡単なことだよな、ラビー王女様!?」


 確かにラビーの能力なら、いとも簡単に取り戻せる。しかし、その能力は闇の女王もしっているのに何故あんなことを言うのか。困惑気味のラビーだが、正義のリングでノートを取り戻す。ラビーはいつものように右手を前に出し、手のひらを広げた。

 その時、正義のリングの輪が出てこない、調子が悪いのか。いや、そうではない。体調は万全なのに何故、何回やってもリングの輪は出てこない。


 その光景を見ていた闇の女王は、鼻高々と笑い。

「ラビー王女様、どうですか? このフィールド。気に入っていただけましたか? ご自慢の技、使えませんよね!?」

 また、鼻高々に笑っている、闇の女王。


 ラビー困惑し、固まっている。それを見ていたアリスは。

「ラビー、大丈夫!?」

「わかんない。何で!? 何で使えないの!?」

 取り乱すラビーに、アリスは。

「少し落ち着いて。はい、深呼吸して」

 言われるがまま、深呼吸するラビー。


 闇の女王はこの時、あのノートから出て来た時のことを思い出していた。

 わらわは、魔法を使い アリス小説の中のアリスを探した。そして、ある世界に足を踏み入れ、驚いた。その世界は時が止まっていた。しかし、アリス小説の中のアリスの姿が見えない。くまなく探した。その時、光を放つドアを見つけ、何かに引き寄せられる感じがし、ドアを開けた。

 まさかラビー王女が後をつけていたとは思わなかった、うかつだった。このままでは、また石になる。とにかくラビーを捕まえようと思い、魔法をかけたらラビー王女の姿は消え。床に1冊のノートが落ちていた。

 わらわはノートの中身を見て驚いた。わらわは、この中から出て来たのか。誰がこんなものを書いたのか。その時、あのアリス小説の中のアリスと同じ名前を持つ、アリスが目の前に寝ていた。

 こいつがわらわを作ったのか。そう思った時、体が浮き上がり、気がついたら、アリスの頭の中にいた。身動きが取れない。何故、ここにいるのか、記憶が欠落していた。

 それから、この世界を見てきた。タイムスリップは誤算だったが、記憶を取戻し。あそこら抜け出すことができた。

 この魔法のフィールドに誘い込み、この恨みを晴らす。まさか、ルークが机の前であのノートを持っているとは。こいつは役に立つかも。そんなことを思い出し、闇の女王は鼻高々に笑い。

「見たかったのよねー、こんなの。いいきみだわ、ラビー王女。わかんないようだから教えてあげる。このフィールドは、わらわが作り出した魔法の空間。お前の技は利かない」


 ラビーは思った、予想以上に闇の女王の能力がUPしている。

「そうか、この世界は、私の能力を封じ込める為のフィールド」

「ラビー王女、勘違いをしは困る。今のわらわなら、このフィールドでなくてもお前に勝てる。ただ、万が一ってことがある。そう、まさかがあるんだよ。あいつには」


 あいつとは、あの小説に出てくるアリスのこと。


 この時、突然闇の女王は企みを語り始めた。

 私を石に変えた屈辱。お前にも味あわせてやる。今すぐ石にしてやる。石になりその目で見ておくがいい。そこの小娘がいる、あの世界。夢とかにうつつを抜かしているあの世界。私が乗っ取ってやる。夢の女王として、この私があの世界を支配する。闇の女王はそう語り、鼻高々に笑っている。


 ラビーは、姿の見えない闇の女王を睨み。

「うるさい! あんたなんかに、あんたなんかに、お姉ちゃんがいるこの世界を絶対に渡さない! 渡すもんですか、覚悟しなさい!」

 渾身の想いで、啖呵をきったラビー。

 闇の女王の表情が一変し、怒りの表情に。

「ほざいたな、ラビー王女。今のお前に何ができる。能力なし小娘が。悔ししいか!? 悔しかったらそのノート取り返してみろ! ルーク! お前の言っていたプランBを実行する」

「はい、女王様!」


 闇の女はアリスとラビーを凝視し。

「今ここでラビー王女を石にしょうと思ったが気が変わった。どの道石になる、絶対に。万が一もない。そうだ、アリスに礼を言う。わらわを作ってくれて。そのお礼にチャンスをあげる」


 礼を言われたアリスは、こんな状況にしたのは私、早くノートを取り戻さないと、そう思った。


 闇の女王のチャンスとは、6つの試練。その試練を全てクリアすれば、ノート取り戻すチャンスを得られ。夢の城にいる、闇の女王と対決ができる。但し、1つでもクリアできなければ、その場で石になる。その試練の道先案内をルークが務める。


 ノートは闇の女王の手に渡り。さぞかし面白いショーが始まる、楽しみだと言い、鼻高々に笑い。闇の女王の笑い声は消え。辺りは明るくなった。

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