アリスとタイムマシン(2)

 翌朝。

 昨日、あんな事があったのに、アリスとラビーはぐっすりと眠れた様子。

 午前8時30分。キッチンでは、未来のアリスが朝食を作っている。アリスは顔を洗い、ラビーと一緒にダイニングテーブルへ。

 しばらくすると、テーブルには、お味噌汁に卵焼き、味付け海苔とご飯。ラビーには野菜を。

 3人は美味しくいただき。後片づけを終え。未来のアリスは、アリスとラビーに見せたいも物があると言い、家の外に出た3人。未来のアリス後をついて行き、アリスとラビーは驚いた。自宅の東側に置いていたタイムマシンがなくなっている。このあと、更に驚くことが。

 未来のアリスは立ち止まり。手に何か持ち、それを差し出すかのような格好をし、何かボタンを押したような。その時、微かにモーター音が。

 すると、なんと地面がせり上がってきた。しばらく見ていると。横17メートル、高さ7メートル、幅10メートルの建物が出現し。度肝を抜かれた2人。


 シャッターが開き、中に入っていく3人。そこには、タイムマシンが。

 昨日、未来のアリスは1人で、小型重機を使い移動させていた。この時、アリス達は2階にいて、それどころじゃなかった。

 アリスとラビーは、辺りを見渡し、何かの研究所みたいな感じがしていた。いろんな機材がたくさんある。2人は辺りに気を取られていると。ホワイトボートに、今後のスケジュールを書き始めた未来のアリス。


 1日目~7日目。球体の耐熱パネルを超ウルトラスーパー強化ガラス透明シート埋め込み型、太陽電池内臓に交換する。

 この事によって、透明ガラスはタイムトラベルする時、暗転になり、室内灯が点き、タイムトラベル完了後、元の透明ガラスに戻る。これをマジックスクリーンガラス効果と言う。

 追加機能として、タイムマシンは時空間に入り停止でき、三次元では完全に消える。いざというときの防御に役だつ。

 タイム制御装置を全て交換し、高性能のコンピュータを取り付け、時空の歪を計算でき、時間差プラスマイナス1秒に留める。対話型、音声に認識装置の人工知能を搭載する。

 バッテリーは、新型バッテリーに交換し。1回の充電で約1ヶ月は持ち、超小型化する。


 8日目~16日目。タイムマシンに新型エンジンを搭載し、空を自由に飛べる。水陸両用が可能になり、操縦桿搭載。オートパイロット付。

 17日目~21日目。試運転。テスト合格後、元いた時代に戻る。

 22日後の午前中に、娘と孫がハワイから帰って来る。それまでには必ずタイムトラベルすること。

 日々の午前中はアリスもラビーも私の作業を手伝う事。但し、ラビーは見学。午後からはアニメ鑑賞と読書をする事。

 アリスは、午後の時間の過ごし方に疑問を持っていたが、ここでルールは未来のアリス、言うことは聞かないと、そう思い。ラビーは疑問には思っていない、もしかしたらと思っている。でも、2人にとってこれが一番の楽しみ。


 未来のアリスは、この研究所を地下に隠すことにし。シャッターを閉め、段々と下がって行き、音がしなくなり。ここはまるで昼間のように明るい、スーパーLEDライトが点灯している。早速、作業に取りかかった。


 まずは球体を分解する。電動ドライバーを見て、はしゃぐアリス。簡単でラクラク。しかも、吸盤のようなもので吸い、ウインチでラクラクと吊り上げ。1時間くらいで解体終了。まるで車のボディだけが剥ぎ取られたような状態になり。ここでいったん休憩。

 未来のアリスは、近くにあるドアを開け。2人についてきなさいと言い。言われるがまま、後をついて行く2人。

 まるで地下道のようなところを歩き。階段を昇ると、天井が開き。ダイニングテーブルの近くに出てきた。アリスとラビーは、面白いと言い、またはしゃいでいる。


 未来のアリスは緑茶を飲み。アリスはスポーツドリンクを飲み。2人は、小さなチョコアイスバーを食べていると。ラビーはお水を飲みながら、うらやましそうに2人を見ていた。


 3人は15分くらい休み。また、研究所に戻った。

 次の作業は、タイム制御装置を外すことになり、アリスも手伝い、10分くらいで外し。未来のアリスはアリスに、この後の作業は椅子に座って見ていなさいと言い。言われるがまま、近くにあった椅子に座り、ラビーと一緒に見ていた。

 手先が器用な未来のアリスに、私って、あんなだったっけ、と思うアリス。どうしても、80歳に思えない。でも、カレンダーは80歳を示している。結局2人は、お昼まで作業を見ていただけだった。


 昼食は、未来のアリスが朝作っていたカレー。ラビーは野菜。

 アリスは初めてのカレーを食べ、美味しいと言い。しかし、ちょっと辛いかなと言っていた。

 3人は食事をすませ、アリスは後片付けを手伝い。その後は、未来のアリスは作業の続きを。

 あと2人は、あのDVDが沢山あった部屋に行き。アリスは、未来のアリスから渡されたノートを手に持っていた。このノートに、何を見て、何を読んでか、その感想を書きなさいと言われていた。アリスはこのことに意味不明。でも、ここにいる以上は、未来のアリスに従うことに。

 この時ラビーは確信した。時期をみて、未来のアリスに、あの質問することに決めた。


 DVDは毎日2本ずつ見ることにして、残った時間は読書にあて。今日は『白雪姫』と『ピノキオ』。

 すべて見終わると。アリスはノートに、この場面はこんな風になった方がいいとか。私ならこんな物語を書くなとか。感想よりも、そっちの方が多く書かれていた。


 2人とも、アニメに夢中。アニメはアニメの良さがあり。本は本の良さがある。改めてそのことを知り。ここへ来て6日目。午前中は手伝をしたり、見学したり。ガラスで覆われた球体ができあがった。

 新しいタイムマシンは、前席2つは操縦席にとなり、操縦桿も2つある。そして、操縦用モニターとは別に、タイムマシン制御装置用モニターが中央にでき。ここに、タイムトラベルに必要な情報が表示され。今、どのような状態にタイムマシンがあるのか、タイムマシンの全てをチェックできる。それらの全てを管理し、制御しているのが人工知能。

 ただ、この人工知能がちょっと厄介。制御用モニター画面に、ちょこまかと動く、3DのAIアリスおばあちゃん。


 未来のアリスは、タイムマシンからちょっと離れたところで、道具の整理をしていると、 そこへアリスが。

「おばあちゃん、何か用事!?」

「えっ!? 何!? どうかしたの!?」

「何って、今、私を呼ばなかった!?」

「呼んでないけど」

「あれ!? おかしいなー、今、呼んだはずなのに……」、首をかしげ。

 すると、アリスを呼ぶ声が。

「アリス、そっちのアリスじゃないんだけど、ちょっとこっちに来てくれる!?」

 その声に、未来のアリスはタイムマシンの所に行き、タイムマシンを覗き込み。

「あんたねー、私がいいて言うまでは喋んないでねって、言ったでしょう!? 何で言うことを聞かないのかなー。ややこしくなるでしょう」

 AIアリスおばあちゃん、モニターの中でしょげている。

「ごめんなさい。でも、自分ばかりアリスと話すから、それに、こういう風にしたのはあなたでしょう!?」

「はぁ!? それ言うかなー!?」

 その光景を見ていたアリスは。

「あのー、これってどういう事? 何で、おばあちゃんが2人!?」


 無言になる2人のおばあちゃんだが、未来のアリスはこの状況を説明した。

 これは人工知能というもので、自ら考え判断し、会話もでき、自分の意思を持ち、感情も持っている。ただ、それを生み出したはいいんだけど、キャラをどうするか考えていたら、両親に宛てた手紙をこの人工知能に読んでもらったらと考え。結果的に同じ声になり、こんな感じなってしまった。


 アリスは何となく理解し。恐るべし科学の力、いや、私なのか、そう思った。

 ラビーはこの状況をこう理解した。ようするに、双子のおばあちゃんがいると思えばいいのではと。

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