アリスとアリス(3)

 タイムマシンの中では、父親が気づくのを待っている2人。早くしないと67年後にタイムトラベルしてしまう。いや、そもそもタイムトラベルは成功するのか。それとも時空の彼方に飛ばされ消滅するのか。成功か失敗か、不安の中、死にたくないと祈るアリス。

「早く気づいてお父さん!」


 その時、青色ランプが点灯、タイムトラベル開始。

 アリスは咄嗟にラビーを抱きしめ、2人は目を瞑り。

「お願い助けて! 消滅しないで!」

 アリスは叫んだ。


 どれぐらい時が流れたのか。青色ランプが消灯、金属音がない。懐中時計が動き出し、タイムマシンは壊れていない。タイムパネルの現在表示は、アリスの設定した67年後になっている。果たして、タイムトラベルは成功したのか。それとも、ここは時空の彼方なのか、2人は生きているのか。


 どうやら、2人は目を瞑ったまま生きている、怪我もしていない。

 すると、タイムマシンのドアロックが外れる音が。2人は目を開けた。

 その時、タイムマシンのドアが開き、外の明かりがタイムマシンの中に差しこみ、眩しくて見えない。


 タイムマシンの外に誰かいる。

「アリス、あなた何をやってるの!? なんで忘れるかなー!? 9時半に休憩するって言ったでしょう!?」

 すると、ラビーは抱えられていたアリスの腕を解き、出入口のドアの前に立ち。ドアの方を見た。

「ごめんなさい! お姉ちゃんを怒らないで。私が懐中時計を取りに行かなければ……」

 突然泣き出すラビー。

 泣くラビーを見てアリスは。

「ラビー、ごめんなさい。ラビーは悪くない。悪いのは私。私が忘れなければ……」

 2人は抱き合い泣いている。

 その光景をドアの向こうで見ている者は。

「怒ってごめん。つい、思い出して……。アリス、私がだれだか分かる?」


 突然の質問にアリスは、涙を拭き、少し目が慣れ、よく見ると。そこにはおばあさんが立っている。

 この声、お母さんの声に似ている。でも、口調が若いような。いったい誰なの、アリスはそう思い。その時、ラビーは何かに気づき。

「この匂い、アリス……!? そうか、わかった。アリスだ」 

「私がどうかした!?」

「そうじゃなくて、だから、あの人はアリスなの」

「はぁ!? 何言ってるの!? 私はここに、えっ!? ちょっと待って、そういうことなの!? そうなの?」

 戸惑アリス。

 すると、おばあさんはポケットの中から懐中時計を取り出し、ラビーに渡し。やはり、そうだと思ったラビーは、アリスに懐中時計を渡すと。

 自分の懐中時計と見比べ、確信したアリスは、あの人は私、67年後の私。80歳の私。そう思い。

「あなたは私なの!?」

「そうよ。アリス」


 タイムトラベルは成功していた。タイムパネル表示を確認し、大喜びするアリスとラビー。しかし、喜んでもいられない様子。未来のアリスは真剣な表情で、タイムマシンから降りるように2人に言い。

 2人は降りると。日差しが眩しく、辺りを見渡すと、驚いた。

 研究所がなくなっている。辺り一面、芝生が植えてあり、塀はそのまま。花壇が増え、ブランコもある。東側の塀の向こうのあの空き地には、家が建っている。ここから、見る限りは、後は変わっていない様子。変わらない、真っ白な壁の自宅。


 未来のアリスは、近くにある物置に向かって、足取り軽く歩いている。その物置から、青い物を出してきた。どうやら、それはブルーシート。これでタイムマシンを隠すことにし。アリスもラビー手伝い。

 ふとアリスはある異変に気づき、ラビーを見て驚いた。二足歩行で歩き、人間の言葉を喋り、困惑するアリス。


 そんな中、冷静な未来のアリスは、突然2人を病院に連れて行くと言い出し。そのことに困惑するこの2人は、その理由を聞いた、私たちはこんなに元気なのに。


 時空を超えてもタイムマシン中にいる者はその影響を受けないように設計されている。しかし、時差ボケならぬ、時空ボケが生じ、体に異常がないか検査したほうがいい。

 既に、ラビーが何らかの影響が生じている。このことに害はないか。とにかく急いで検査する必要がある。その前に放射能検査をしないと。未来のアリスは、そう言と。

 物置に閉まっていたガイガーカウンターで放射能レベルを測定し、放射脳レベルは正常だった。ちょっと一安心。


 未来のアリスはタクシーの手配し、知り合いの病院へ連絡し。未来へ来たことで生じる注意事項があると言い。今は、病院行き、またここへ戻ってくるまでの間の注意事項を言った。

 まず、この家の敷地から1歩でも出たら、やたら、これ何と聞かない。やたら、キョロキョロしない。次に、未来の私は、アリスの親戚。ここにいる間は、未来の私のことは、おばあちゃんと呼ぶこと。それと、ラビーはウサギのようにふるまうこと。


 未来のアリスは、物置から猫用のキャリーバックを取り出し。ラビーは猫用のキャリーバックに入れられ、少し窮屈そうにし、病院って何、と思っている。

 アリスはドキドキしている。病院にいった記憶がない、病気になった記憶もない、検査って何するの。そんな中、アリスのドキドキはすぐに消えていた。

 未来のアリスが手に持っている、気になるあの電話機。コードがない、電波だということはわかる。しかし、あんなに薄くて軽いようなものは何。まだ、ここは自宅。アリスは思い切って聞いてみた、手に持っているものは何と。


 すると、これはスマホ。電話機能以外にも、インターネットや他にもいろんなアブリがあり。これ1つで家の管理もでき、鍵もかけられる。

 アリスはこの時代に、いままで見たこともない光景がたくさんありそう、そう思いワクワクしていた。


 しばらくして、3人はこの塀に囲まれた敷地の出入口に向かった。

 キャリーバックはアリスが持ち、歩きながら手入れのいき届く花壇を見ていると。ふと両親のことが心配になり。

 すると、2人のアリス、以心伝心。

「アリス。お父さんとお母さんは大丈夫。そのことは後で説明するから」

 未来のアリスは、門を開け、驚くアリス。この周辺には家が増え、遠くにはビルがたくさん見える。アリスが小さい時に描いた未来の絵に似ていた風景が広がっていた。


 しばらくして、タクシーが到着。3人はタクシーに乗り込むと、運転手が。

「アリスさん、珍しいですね。1年ぶりですか!? そう言えば、隣の娘さんとお孫さん、お元気ですか? うちのものがここ何日か、見かけてないと言っていたもので」

「元気ですよ。今、夏休みでハワイに」

「そうですか。それでタクシーを」

「運転者さん、急いで病院へお願いします」


 タクシーは病院へ急いだ。

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