アリスとラビー

アリスとラビー(1)

 アリス書店の出来事から、3ヶ月経ち。季節は冬なり。アリスに少し変化が。

 これも仕事のうちだと言い、少しずつだが母親と買い物に行くようになり。その帰り道に、アリス書店にも立ち寄るようになっていた。


 最近は、アリスと母親は車で買い物に行く。ちなみに、車は3台ある。

 タイムマシン作りは順調に作業が進み。母親の手伝いも得ながら、父親と共にアリスも頑張りをみせ。このまま行けば、アリスの誕生日の2日前に試運転が出来る。試運転に問題なければ、13歳に誕生日にタイムマシンは完成する。

 父親は、ある思いがあった。父親が初めて発明したのは13歳の時。アリスも来年の誕生日で13歳。記念日にしたいと思っていた。


 そんな中、この冬1番の寒気が流れ込み。窓の外を見ると、今にも雪が降ってきそうな雰囲気。去年の時期より寒い。外気温は3度。

 アリスの母親は、買い物に行く準備をしている。冬のこの時期の買い物は週一回、まとめて買う。雪が降りそうなので、午前中に買い物をすることになり。

 車で10分くらいの所に、先月大きなお店ができ。依然はアリス書店の近くに小さなお店があり、そこで買い物をしていた。


 この日、アリスは人生で最も大切なパートナーに出会う。

 アリスは、母親の運転で一緒に買い物に出かけ。2時間くらいで帰ってきた。どんよりとした天気だが、雪はまだ降っていない。資材置き場のガレージを開けに行く母親。この時、アリスは助手席から何かを発見した。

 前方に小さな白い物が。少し動いては止まり、また、少し動いては止まり、今度は全く動かなくなり。アリスはふと本屋の主が話しことを思い出し。もしかしたらと思い。車から飛び出し、走ってその場所へ行くと。動物図鑑で見たウサギ。本物は初めて見る、真っ白な子供のウサギだった。

 アリスは、犬、猫は見たことがあるが触ったことはない。死んでいるのか。怖くて触れない。でも、そんな事を言っていられない状況。アリスは思い切って触ると、冷たい。衰弱している様子だが、まだ生きている。鼓動が伝わるが、弱い。でも、どうしていいのか分からない。


 すると、母親がアリスに気づき。

「アリス! そこで何やってるの!?」

「お母さん、早く来て! ウサギが! ウサギが! 助けてあげて……!」

 その叫び声が尋常じゃない。母親は急いでその場にかけ寄り。ウサギを見て、あの光景蘇り。


 母親がアリスと同じくらいの年に、子犬を譲り受け。父親がこう言った。

生き物を育てると言うことは、最後を看取るということ。それが出来ないのなら飼うなと。このこと胸に、育ててきた愛犬。最後を看取とり。もう、あんな悲しい辛い想いはしたくないと。動物を飼うのをやめた。

 しかし、アリスがこんなにも必死で助けてあげてと言っている。何故、どうして。必死でお願いするアリス目には、大粒の涙。このままほっとくわけにはいかない、と思う母親。

「このウサギ、お母さんが助けるから、アリスはこの敷地内に親ウサギがいないか探して!」


 母親は、ウサギを手のひらに抱えた、走りだし、急いで自宅へ戻ると。部屋は暖かく、暖房がつき。暖炉に火が灯り、明々と燃えている。父親が気を利かしていた。しかし、ウサギの事は知らない。

 母親は1階にある、バスに行き、タオルを数枚とり。暖炉の前に行き、ウサギの濡れた体を拭き、別なタオルで体をくるむようにして、一旦、床に置き。1階の空き部屋から、新しい毛布を1枚持ってくると、更に毛布でくるんだ。これで、しばらく様子を見ることに。


 一方、アリスは、この寒空の中、涙を拭きながら、母親から言われ通りに敷地内を探している。10分くらい経ち、親ウサギは見つからない。

 その時、塀ぞいを歩いていると。ふと目先に、木で作られた塀と地面とすれすれのところに小さな穴が開いていた。もしやと思い、急いで塀の裏手に回ったアリス。


 塀の裏手の土地は、以前、父親の所有地。今は、不動産が管理する空き地。ここ周辺は、簡単な柵で覆われ、そこにロープをはり。関係者以外は立ち入り禁止の立て看板。最近になって更地したばかり。


 アリスは辺りを見渡すが、親ウサギはいない。あの穴のところに行ってみると。ウサギの毛が落ちていた。どうやら、ここから入って来たようだ。しかし、こんなところにウサギの巣があるわけもない。そう思っていると。母親がアリスを探す声が。

「アリス! アリス! 何処にいるの!?」

「お母さん! お母さん! ここにいるよ。塀の所まで来てくれる!?」

 母親は声のする方に向かい。塀の所までくると。

「アリス、そこで何やってるの!?」

「それより、足元を見てよ。穴があるでしょう!?」

「穴!?」

 母親は足元を見ると、アリスの手が見え。ここらウサギが侵入したとすぐにわかり。

 アリスは塀の向こうの母親に。

「お母さん、ラビーは大丈夫!? 大丈夫なの!?」

 母親は、ラビーって、何処かで聞いたよな、もしかしてウサギの名前、そう思い。

「大丈夫だから帰って来なさい」

 その声は優しく。アリスは返事をし、走って自宅へ帰って行った。


 母親は車をガレージ中に入れ、ガレージを閉め。買い物してきた荷物を家の中へ。

 アリスは急いで家の中へ入り、辺りを見渡すと。暖炉の前に駆け寄り、ウサギを見つけ。目が開いている。さっきは目を閉じていた。助かったんだと思い。その場に座り込み。ウサギのラビーに、助かってよかったね、と声をかけ。可愛い目をしているラビーを見ている。

 その光景を後ろの方から見ていた母親。それに気づいたアリス。

「お母さん、ありがとう。ありがとう」、何度も礼を言い、抱きつきながら、また、泣いていた。

 母親は、アリスが何故こんなにも感情をあらわにするのか。そして、このウサギになにがあるのか。今は、聞かないことにした。

 父親は、この日の昼食時にラビーの存在を知った。

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