アリスと本屋

アリスと本屋(1)

 今日は、アリスの12歳の誕生日。

 タイムトラベルを可能にするには、素粒子の集合体を筒状に集め、加速させ、そのエネルギーで時空を超える。長い筒状の物を使用する為、4年前に建て替え。外壁は真っ白で、前の平屋の建物を倍に増築した。

 しかし、突然のアリスの閃きとアイディアと発想で、まったく新しい加速装置を開発することになり。長い筒状の物はいらなくなり、以前建てた研究所の広さでよくなったが、建物はそのまま使用することになった。

 そこには、システム制御室、タイムマシン稼働室、資料室、部品加工室、研究室をリフォームし。資材置き場が広くなった。


 研究室の時計は、午前12時前、昼食の時間。

 研究所と自宅は、10メートルしか離れてなく、いつも家族3人、自宅で昼食を摂っている。

 昼食を食べ終わると、2人は研究室で会議。テーブルの上には、新しいタイムマシンの設計図。

 タイムマシンは球体型をしている。直径2.5メートルの4人乗り。タイムマシンが転がらないように土台の上に乗っている。

 この球体をどうやって、浮かし、超高速回転させるか。この時すでにアリスは、ジャイロ効果で運転制御内を安定させ。超電導リニアの構造の応用を考えていた。

 どこから、こんなアイディアが生まれてきたのか。父親は考えない。目の前のタイムマシンを完成することに集中していた。


 日も沈み、研究室の時計は、午後7時。

 母親が、夕食と誕生日のお祝いだと、呼びに来た。いつもは、午後6時半には、帰宅している。

 豪華な夕食に、会話が弾み楽しい食事だった。

 その後は、手作りケーキがテーブルに置かれ。アリス自ら12本のローソクを1本ずつ、想いこめているかのように立てている。


 ローソクに火が灯り。3人でそれを見ている。

 ローソクの火を消すアリス。アリス12歳の誕生日、おめでとう。


 アリス12歳の誕生日から、2ヶ月が経ち。

 タイムマシンの本体、球体部分骨組みは完成している。そこに、超耐熱パネルを張り付け、そのパネルに、素粒子の集合体が埋め込まれる。

 アリスは、重たい荷物も、文句1つ言わず持ち。父親とアリスと2人だけで組み立てている。率先して作業にあたるアリス。

 母親は、ウォルターが作った洗濯機で、汚れた作業着を洗濯。掃除機で掃除。毎日、美味し料理。小さな花畑に水をやり。たまに、研究所を覗くと、汗水たらして頑張っている親子。手伝いた気持ちはある。しかし、小説家はどうするの、と言ってしまいそうになる。でも、母親として、応援すると言った以上は時間が開いたら、母親は2人の手伝いをすることにした。1人増えるだけで作業もはかどる。


 超耐熱パネルの完成に、時間がかかったが、本体に取り付け完了。

 タイムマシンの出入口は1つ。超高速回転しても、内部は常に水平を保つように設計されている。

 4人乗りの車、そんな感じの座席に、シートベルトもある。前席には、タイム制御装置、当初ダイヤル式で行き先をセットしていた。しかし、アリスのアイディアでデジタル式変わり、このことで、システム制御室で遠隔操作ができるようになった。

 本体は全て出来上がり。本体カラーは白。更に、2ヶ月が経ち。


 父親は、このペースで行けば、今年中に試運転が出来ると考えている。そして、アリスの13歳の誕生日に合わせて、完成を予定していた。ところが、アリスがこんなことを。

「お父さん。このタイムマシンってどうやって停めるの? 転がっちゃうよね」


 車も動けば、必ず停車しないといけない。タイムマシンも同じ。超高速回転する本体だけタイムトラベルしても、それを支える土台もタイムトラベルさせないといけない。転がって、何処へ行く状態になる。笑えない。

 アリスには、既にその対策も考えていた。ここまでくると、アリスって、タイムマシンの作り方を知っていたのか。父親は疑問に思わない。なんで。


 予定は崩れ、試運転をアリスの13歳の誕生日に設定。もうこれ以上は遅れないようにと、思う父親。さっそく、次の工程の準備を始めた。

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