回り続ける呪いの永久機関

観覧車に自縛しちゃった悪霊と、それを説教する死神、そしてそこに現れるひとりの女の子の物語。
不幸とか恨みとか悪意とか不条理とか、そういうのがぐるぐる煮詰まっていくようなお話です。
特筆すべきはキャラクター、というか、彼らの立場やものの見方の違いです。悪霊と、死神と、いろいろしんどい女の子。まさに三者三様といった趣で、それぞれの立場に感情移入したり、あるいは反証を考えてみたりと、読み進めながら脳内でごちゃごちゃやる感覚が楽しいです。
中でも一番惹きつけられたのは、やっぱり視点保持者であるところの悪霊さん。彼の物事の考え方、存在の希薄さをそのまま表したような、なんとも悪霊らしい地の文の描写が好きです。
何もかもが無価値、と断ずるわりに、人間の幸せに対して強い執着を見せる。観覧車に留まりながら訪問者をただ機械的に呪う、その完全にパターン化された行動様式。きっと外から見たなら希薄で曖昧な状態であろう、この悪霊という存在そのものを、でも地の文を通じて内部から活写してみせること。
この〝もしかしたら曖昧かもしれない自律意思〟を、でもしっかり言語化した状態で読まされる、という、この読書感覚がとても新鮮でした。いわゆる「信頼できない語り手」、とは少しニュアンスが違うのですけれど(大目的という面では全然違う)、でも構造的な面白みとしてはそれに似ている部分があると思います。
そして、この感覚をたっぷり味わった上での、終盤の展開。主人公の内面の、その小さな変遷が楽しい作品でした。

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