第25話 保安室長シュレッダーの暴走

ここは、六本木ヒルズの上層階の一角にあるヒダリンの個室である。

中は最高級ホテルのスイートルーム並みに豪華で広い部屋だが、作者には縁が無いので詳しくは書けません。彼女の趣味としてバロック調で、しかもホワイト、ピンク、ゴールドの色彩を基調としたテーブルやソファー、ベッド、化粧室、バスルームなどが理想的な配置で部屋にセッティングされています。それらの家具とは別に最新の電化製品がそれとなく脇役として存在してる、そんな部屋ということで、想像してみてください。


彼女は今、くつろいでテレビドラマを観ていた。ここ2か月程続いている恋愛物だった。

( ああ、私も大好きな人に認められるなら苦労は、いとわないなあ ) どうやら、谷あり山ありのストーリーのようだ。


「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお送りします」

( あれ? なんだ? )

「4日前の11月26日、火曜日から行方が分からなかった、オゾン層研究の第一人者である毛利製作所、取締役、田中光一氏が、先ほど福井県の東尋坊で遺体となって発見されました。福井県警の調べでは遺体直近の崖の上に田中氏の物と見られる遺書が置き石の下に挟まれていたとのことで、自殺との見方が濃厚と発表されました。

田中氏は破壊されたオゾン層復活の旗頭として活躍されてましたが、先月初めの成層圏でのオゾン発生実験が失敗するなど、計画の大幅な修正を余儀なくされたことでの、心労による自殺ではないかとの県警の発表内容でした。

それでは、記者会見の様子を中継しま… ガチャン」

ヒダリンは、テレビを切った。

( シュレッダーの奴、相変わらず危ない真似をする。もっと、見つからない方法がいくらでもあったろうに )

〈 ここで、説明します。シュレッダーとは、第18話で登場した保安室長の名前です 〉


ジャー ザザザザザサワーシャワー

「ルン、ルルン、ララララー 」

今、池袋のマンションの自室で立花龍虎はシャワーを浴びていた。

( 今日は、シゲゾーさんと仲良くなれたし、良かったなあ。ウフッ )

龍虎は実に楽しそうに鼻歌混じりでシャワーで体の隅々まで洗い流した。


その時、不意にバスルームの扉が内側に押されて開いた。

扉を開けたのは、サングラスをした暗色系のスーツを着た男だった。

「命が惜しかったら、おとなしくしろ!」

その声に龍虎は、悲鳴を上げかけた。だが、口を塞がれて声には、ならなかった。

バスルームの外にも4人の男たちがいた。いずれも頑強な大男たちだった。

いや、一番後ろにいた男だけは、華奢で金髪の白人男性だった。それでも身長は180センチ近くあった。

彼は言った。

「イソーゲ! 毛布にくるんで、縛りナサーイ!」

男たちは無言で龍虎を毛布の中にくるんで縛り上げた。そして2人が、それぞれ龍虎の頭側と足側に分かれて、軽々と肩に担ぎ上げた。


男たちは、そのまま、マンション下にあったミニバンのドアーを開け、毛布にくるんだ龍虎を後部座席に押し込んだと思ったら、あっと言う間にミニバンで立ち去った。その間、5分もかかってなかっただろう。


彼らは車内の人となって初めて口を開いた。

「室長、驚きましたぜ。男とは聞いてましたが、あの見かけの癖に本当に男でしたぜ」

シャワールームの扉を押し開けた男が、そう言った。

「当たーり前だ。そんなこーとは、サイショからわかっていた。それよーり、まちがってもアキレス様には、われわれが、プロフェッサーリューコの、はだーかを見たことは、ユーナヨ! 」

とシュレッダーが釘をさすように言うと、全員が声を揃えて言った。

「イエッサー! 」

第25話 終わり

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