第24話 大事なことを忘れてた!


( ようし!最強のファイターに俺は、なるぞー!! 燃えよ、ドラゴンのように )

「アッチョー! 」俺はつい、奇声をあげてしまった。

( へっ? こいつ、想像してやがる )

博士は、俺がいつまでも高揚したまま空想にふけっているので、目を覚まさせようと呼び掛けた。

「茂蔵! 茂蔵! 」

( はっ! )

「茂蔵、水をさすようで悪いがな、ワシが最強ファイターを必要としたのには、わけがあるのじゃ」

「ええ、分かってますよ。世のため、人のために俺が悪を倒すのでしょう? 」

俺の言葉に博士は、やれやれといった表情で言った。

「まあ、聞け。お前さんはビニナルタンのことを知ってるか?」

「ああ、それなら今日、龍虎先生からエイト・テンとかいう映画のナレーションを観たので大体知ってます。何でも、リンゴとかいうアメリカの会社が開発した薬だとか。オゾン層が激減して平均寿命が一気に下がった対策としての若返りの薬ですよね」

俺の答えに博士は、うなづきながら続けた。


「その通りだ。今や世界中の人々は、ビニナルタンが無ければ、個人差はあるが、大体20歳を境に老化が2倍の早さで進んでしまう。逆にビニナルタンを最大限、服用し続けると、30歳ぐらいは若返ることができるようになった。立花博士も愛用しているから、お前さんも知ってる通りだ。

だが問題はビニナルタンが、リンゴというグローバル企業1社に独占されてるということだ。ビニナルタンを製造できるのはリンゴの秘密工場だけで、その製造方法は完全に秘密にされている。若返りの薬としては、他に中国が国家を上げて製造しているハダフレッシュがあるが、その効果はビニナルタンの2割程度しかない。しかも、これはほぼ確実な情報だが、ハダフレッシュは、極限まで人間の細胞に近づけたクローン豚の万能細胞から抽出した、老化を抑制する成分からできてると言われている。

そこから推理されるのは、リンゴはクローン人間を倫理に反して、誕生から生育までのすべてを管理して、何らかの方法でビニナルタンなるものを製造しているのではないかということだ。そこで全世界の国家機関と民間企業は、秘密裏にリンゴに産業スパイを送り込んで、ビニナルタンの秘密を得ようと躍起になっているのが現状だ。

だが、送り込んだスパイは誰一人として生きて帰った者は、おらんのじゃ。

お前さんを除いてはな」


俺はそれを聞いて、翔青に見せられた俺と翔青のLINE記録のことを思い出した。

( あっ、そうだ! たしか… あの時の講義ノートのカバーの内側にメモリーチップを隠してるとか書いてあったぞ! )

「博士! この世界の俺が… そのリンゴの最高機密、ビニナルタンの製造方法を記録したメモリーチップを隠し持ってるはずです! それって、あの講義ノートのカバーの内側にあるはずだ! 」と叫んだ。


パチンではなく、シュっと指を鳴らし損ないながらも博士は言った。

「もっかのところ、それが最優先されるべきことじゃな」

第24話 終わり

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