第3話 人間界は金が全て!

人間世界では、魔物を倒したら金が貰えると聞いたことがある。


しかも、魔物をたくさん倒すと喜ばれるらしい。


魔物を倒して金が貰えるという仕組みがあまり理解できない。


自分で間引けばいいじゃないか、と思ってしまうのは、俺のように力があるものと非力な人間との考えの違いだろうか。


そういえば、人間にとってオークやドラゴン程度でも脅威らしいな。

オークなんて確かに厚い脂肪で覆われているからなまくらでは斬り付けられないかもしれないが、聖剣とか持ってないなら殴ればいいし、ドラゴンも飛んでて倒せないなら、ジャンプしてドラゴンにしがみついて羽をへし折って地上戦に持ち込めばいいのに。


8代目の勇者にそう言ったら、無理無理とかやりもせずに諦めていた。あいつは勇者として恥ずかしくないのか?


やりもせずに出来ないというのが本当に勇者の言動なのか?


全く、信じられん。



ハッ……どうだ、魔物を倒したら知名度が上がって金ももらえて、権力者から功績を称えられると聞いたのだが、数千年に渡り魔物を倒し続けて来たはずの俺は、給料未払いの年中無休24時間営業をしているんだぞ!!!!


だというのに…………ああ、思い出したらまた腹が立って来た!


何ぁに〜が『はぁ、そうですか。それは凄いですね』だ!何がどう、どのように凄いのか言って見ろ!!

……たく。


俺を見た瞬間に『おお!貴方様はもしや、伝説の守り人!!数千年にも渡り魔物を倒し聖剣を守り抜き、時には勇者を助け、導き、魔王討伐を助けて来たスペシャリスト!の聖剣の守り人様ではありませんか!!!!!皆の者控えなさい「「「ははぁー!!!」」」』とか、崇めてくれてもいいんじゃなあいか?


そしたら俺は『ふっふっふ、特に勇者をフォローすることに至ってはまさに一流。フォ○マキさんと呼んでいいぜ』って言うんだ。



フォ○マキって言うのは、4代目の勇者が言ってたことなのだが。


『フォローの鬼か、アンタ凄えよ……まさにフォ○マキやんけ』


一部始めて聞く言葉があったので、すかさず俺は質問をした。

『フォ○マキってなんなんだ?人間の世界のことわざか?』


『え……いや、あー、偉人の名前?みたいな。つまり、フォローするのが凄く上手いって言いたいんだが、ok?』



あれは、結構昔の話だったが、なんだかその単語が気に入ってずっと使っている。

なんか、語呂がいい。



そういえば、人間の世界は全てが金だと聞いた。

金があればどんな強大な力も手に入れられるらしい。


聖剣の守り人として、作られた時に持っていた基礎能力に加え、聖剣を守っていく最中、無数の魔物達と戦い編み出した技、それから勇者をフォローする中で編み出した魔法。それが人間世界に行けば役に立たないという可能性がある。

なんと恐ろしいことだろうか。


フォローの鬼と呼ばれ、魔物を斬り殺し、魔王が打ち込んできた流星魔法を粉砕して来たこの力が、封殺されてしまう。



もしかしたら、40zくらい払えば、即死魔法のスクロールとか、時間停止魔法の書とか、魔法無効化結界の書とか、蘇生薬とかが買えるんじゃないだろうか。


ああ、不味い。


早急に金を集めなければ。

聖剣の守り人をやめたというのに、またジメジメした森に帰らなければいけなくなる。

それだけは勘弁。


聖剣は戻って来てしまったらまた売却しよう。



手元を見る。

手元にある皮袋には銀色の丸い塊がたくさん入っている。

一枚取り出してつまもうとして力を誤って真っ二つにしてしまった。

こんなものが、人間たちが大切にする金か。


780000zという金額がどれほどのものなのか知らんが、歴代の勇者がよくやる魔物退治でもして軍資金を得ようじゃあないか!

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