第5話 秀一との再会

恋子は、24歳で地元の有力者の息子と結婚。

1男1女を出産。

なに不自由無く続く結婚生活・・・



恋子は34歳になり、結婚10年目。

夫は優しく、酒タバコは やるものの、真面目で女遊びはしないものと、恋子は鷹をくくっていた。



そんな折、恋子は 町の青少年健全育成のための全国セッションに参加するため、一路 東京へ向かった。


そこで、17年ぶりに再会したのが、

恋子16歳、相手が18歳で別れを告げた・・・

《 秀一 》である。


秀一は、青少年健全育成協議会の世話役をしていた。



先に恋子が、それに気付き、しばらくして、

秀一が恋子に気が付いた。


秀一「やあ、お久しぶり・・・」

恋子「秀一さん、あれから・・お元気で?」


全国セッションは、一日の日程を終えて閉幕した。

恋子は、実はセッションどころでは無かった・・・



恋子は札幌で雪まつりの日に吹雪に追いたてられ 《 間違えて休憩宿へ 》足を踏み入れてしまった・・あの日の恋子の ままであった。



秀一「恋ちゃん、一段と綺麗になったね。

でも雰囲気は あの日のままだ。」


その一言が恋子のハートに火を着けた。



恋子は秀一の腕に手を掛けた。

立っているのが やっとだったから・・


秀一は「恋ちゃん、大丈夫かい?」

そう言ってタクシーで送ってくれた。

恋子は大胆にも「赤坂プリンスホテルへ!」

と運転手に告げた。



秀一は 恋子のその一言で、恋子が自分と別れた後で、どんな気持ちで毎日を過ごして来たのかを知った。


恋子

「秀一さん、私・・・

今も、あの日が心の中で時が止まったままなの・・・」


秀一

「恋ちゃん、ゴメンな・・

あの日、恋ちゃんは僕と結ばれたかったんだよな・・・ 」


恋子は秀一に頷く代わりに、両手をぎゅっと握った。



赤坂プリンスホテルにタクシー内から予約をして、タクシーが着くと、秀一は恋子をエスコートした。


フロントから部屋の鍵を預りエレベーターで一気に20階の客室まで上昇する。

恋子は軽い目眩を覚える。



客室に着くと、二人は 向かい合わせで座り、想い出を一つずつ綴り合わせていく。


秀一は、恋子が当時より色めいて華やかになった印象ばかりで、まだ30代という事もあり、肌の衰えは感じられなかった。



秀一は、恋子が急に愛しくなり、話を続けながら恋子の背後に廻った。


秀一は、恋子の肩に手を置いたが、

恋子は

「ダメよ・・今日は お話だけにしましょ。」

と 秀一は お預けを喰った。


恋子の心は複雑だった。


恋子の中では それまで、秀一は永遠の恋人だと思っていたが、

いざ、こうして再会すると


《何かが違うんだけど・・一体何なのだろう?》


それは、恋子自身にも分からなかった。



二人は、本当に 話だけで ホテルを後にした。


恋子は

「本当に会いたかったら、また会えるから・・ 」

と…軽はずみな事をしない自分を誉めてやった。



次に恋子が秀一に連絡したのは一週間後だった。


秀一は『またお預けかもしれないけどな。』と

あまり期待はしていなかったのだが…。


次にも同じ赤坂のホテルだった。


しかし、恋子は、一週間前の恋子とは、明らかに違っていた。


秀一は服を脱いだ恋子のランジェリーが 真っ赤だった事 だけを見ても それが分かった。



秀一

「恋ちゃん・・・」


恋子

「秀一さん、今日は何も言わないで・・ 」


恋子は、あの日を取り戻したのだと思う。


《 札幌の雪まつりの吹雪の日を・・ 》

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