第3話 部活動

授業のチャイムが鳴ると同時に皆は起立をした。

礼をすると月村先生は言った。

「そうそう聞いてくれ…。今日からクラブ見学してもいいぞ。時間は1時間ほどだけど見に行ってくれ。」

というと先生は教室を出ていった。

私の席にミヨちゃんがさりげなく隣に来て、ちょっと嬉しそうに言った。

「ねぇ、トモは運動部へ行くんでしょう?」

「うん、多分行くよ。」

と答えた。

ちょっと不安そうな顔でミヨちゃんはうなずいた。

すると、男子のグループの話し声が急に聞こえてきた。

「渡辺!お前どこのクラブに見学に行くのか?」

「今、考えてるところがある。」

「どこも厳しいからな。」

渡辺君は皆の話を聞きながら笑っていた。

昨日の自己紹介で、一人一人の名前を覚えるには難しかった。

が、後ろの席の気になる子だけが渡辺君とわかっていた。

渡辺君…。

渡辺君はクラスの中でも友達も多いほう…。

そして上の小学校から来た子だった。

上の学校の子は小綺麗な子が沢山いたけど、渡辺君もその一人だった。

「おれ、バスケットボールに入ろうかと思ってるんだ。」

「そうか、お前はいつもマイペースだからなぁ。もう決めちゃったんだ。」

彼の少し真剣な表情を見てると心に決めてるみたいだった。

大きな目に黒の詰め襟がまた真っ黒に写った。

遠くからでもわかるくらい目が大きかった。

きちんとしてる身なりがまた品があった。

そんな渡辺君が好印象だ。

ミヨちゃんが肩をトントンと叩く。

「ねぇトモ、運動部ってどこの?」

「そうね…。」

と私は考えるふりをして押し黙ってしまう。

バスケット部か…。

それもいいかもしれない。

渡辺君が行くみたいだし、私も軽く行ってみようか。

慌てて、机のプリントと筆記用具をかばんに入れた。

「さぁ、ちょっと見学に行ってみようか。」

と彼女が言うと並んで教室を出ていく。

「トモ、私ね。本当は吹奏楽部に入りたいの。」

「そうなの。」

と目を丸くした。

てっきりか一緒かと思ったのに…。

「何の楽器になるかわからないけど、一人で行ってみるよ。じゃあ。」

と軽く手を振って、4階にある教室へと階段を駆け上がっていく。

➖ミヨちゃんそんなぁー。

彼女のさっそうとした態度に急に不安になり、私は慌てて声をかける。

「ねぇ、ミヨ、今日一緒に帰ろうよ?」

思わず急いで彼女の足を止めた。

「え。いいよ。1時間後に下駄箱の前で待ってるよ。」

と明るく笑って階段を駆け上がっていく。

ミヨちゃんのじゃねー、という声が少し遠くで聞こえた。

彼女を確かめるように見て、私は階段を降りていった。

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