第42話 結婚式③

「お疲れ様。披露宴までは少し時間あるから控室で休憩してて大丈夫よ。と言っても衣装着たままだからあんまり動けないけどね。

じゃ私は永田と披露宴の準備があるから何かあったらそこの内線に電話してね」

「おぅよろしく頼むな」

「任せて!」


何というか頼りになる妹だ。

昔は俺の後ろばかり付いて回って結構内向的だったのにな。

やはり・・・誠子さんと五月さんの影響なのか?


「結婚式。どうだった美香」

「ふぇ・・・何だかまだ夢の中にいるみたいです」

「はは。まだ今から長丁場の披露宴もあるんだからな」

「そうですよね。参列の方も増えますし衣装替えとかもありますし・・・しっかりしなきゃですね」

「でも・・・夢の中みたいってのは俺も同じ気持ちかな」

「洋さんも?」

「ああ。こうやって式を挙げると婚姻届けを出したときよりも美香と結婚したんだなって気持ちが強まるというか。何だか嬉しくて夢みたいだなって」

「そ そういう事、普通に言うし。ひ ひろしさんこそしっかりしてくださいよ!まだ披露宴あるんですからね♪」

「そうだな」


なんか変なこと言っちまったか?

美香の顔が赤いんだが。


などと人が聞いたら惚気か!と突っ込まれそうな会話をしていていると式場の係員の人が俺たちを迎えに来てくれた。

永田さんは司会進行として既に披露宴会場に入っていて、凛子は披露宴には俺の親族として参列するので着替えに行ってるそうだ。

そのままでも良さそうだけど、たまには凛子もドレスを着たいらしい。


会場入口につき待機していると、中から"新郎新婦の入場です"と永田さんの声。

係りの人によって開け放たれた扉をくぐるとスポットライトが俺と美香を照らした。

会場には美香がファンだというミュージシャンの軽快な音楽が流れはじめる。

皆の視線が俺たちに向けられる中、俺達は席に向かって歩き出した。

周りを見ると学生時代の同級生や地元の知人や恩師、最近会ってなかった従兄や親戚のおじさん達などなど沢山の人達が俺達を見て拍手をしてくれている

まだ始まったばかりだというのに何だか感激して涙が出てきそうだ。


そして、席に到着すると司会の永田さんが開宴の挨拶を告げた。

俺のウェルカムスピーチだ。

俺は静かに立ち上がり会場全体を見渡し話し始めた。


「本日はご多用のところ、私たちのためにお集まりくださいましてありがとうございます。

 先程私達は人前式でみなさまの承認を受け、念願だった夫婦になることができました。今はとても幸せです。 本日はお世話になっているみなさまへ感謝をお伝えしたいと思いこのような場を設けさせていただきました。 短い時間ではありますが、お楽しみいただけたら幸いです」


拍手の中着席する。

ふぅ・・・・これだけの人の前で話するのはやっぱり緊張するわ。。

普段客先でプレゼンする時もこんなに人は居ないしな。


「お疲れ様です。カッコ良かったですよ♡」

「ありがと」


美香が小声で俺に声を掛けてくれた。

ウエディングドレスのせいかもしれないけど今日の美香はいつも以上に可愛く見える。

そんなことを思いながら着席すると次のプログラムとして俺と美香のプロフィールが紹介された。

プロフィール映像は2人で編集したんだけど小さい頃の写真や学生時代の写真など見せあいながらの作業は中々楽しかった。

美香の写真は全体的に西村ちゃんと三宅先生と一緒に写ってるのが多かったな。


映像には若い頃の親父達や友人達も写りこんでいたり居るので会場のあちこちで笑い声や歓声が聞こえた。こういうのって結構盛り上がるよな。


そして、主賓の挨拶は俺の恩人でもある会社の社長にお願いしていた。

大学を出た後、起業してSE派遣の会社を立ち上げたんだけど上手くいかず困っていたところを助けてもらったんだよな。

今でも感謝しているし尊敬している人だ。


「え~ 株式会社ライズの代表取締役の高木です。

 相良君、美香さん、ご結婚おめでとうございます。

 そしてご両家ご親族の皆様、心よりお祝い申し上げます。

 本日は素晴らしい披露宴にお招きいただき、誠に光栄に存じます。

 新郎の相良君とは仕事上の付き合いはもちろんですが、仕事終わりは飲み仲間としても接しています。仕事も出来るし部下の面倒見も良い素晴らしい男ですが、長らく浮いた話も聞こえてこないところはずっと心配しておりました。

 それが、先月結婚しますので挨拶をお願いしたいと僕のところに来たんです。

本当驚きました。そしてそのお相手がこんなに可愛らしい女性であることに更に驚きました。そしてその後聞いたノロケ話には・・・

 美香さん。彼は素晴らしい男ですが、この先夫婦として過ごしていく中では辛く厳しいことなども多々あるかと思います。そういう時も2人でよく話し合いあたたかい家庭を築いていってほしいと願っています

 長くなりましたがこれをもちましてお祝いの言葉とかえさせていただきます。

 本日は誠におめでとうございます」


何というか・・・・ありがたいな俺の事・・・

そして、美香側の祝辞ということで川野辺高校の校長にも挨拶をしてもらった。

俺の時と同様に美香との微笑ましい?エピソードを交えた祝辞は軽く会場の笑いを誘い会場を和やかなムードにしてくれた。


社長にしても校長にしても流石に話は上手だよな。


主賓からの祝辞が終わると乾杯をお願いしていた呑兵衛横丁の店長が司会者席の隣に移動し挨拶を行い乾杯が行われた。

店長も珍しく緊張した顔してたけど無事大役を果たすことが出来て席に戻るときは妙に安心した顔してたな。

お礼にまた飲みに行ってあげないとな。


そして、その後はケーキ入刀。

2人でナイフを持って永田さんの合図で入刀を行った。

そして、ファーストバイトとして美香がフォークでケーキを俺に・・・・って美香さんそのひと切れ大きくないですか?

ニコニコしながら俺の口にケーキを近づける美香。

何とか口の周りにクリームをつけながらも食べきりファーストバイトも無事終了した。


ここで一区切りということで歓談・お食事タイムに入った。

・・・はずだったんだけど、何やらモニタに映像が映し出され永田さんからサプライズ演出が告げられた。


「え~それでは次ですが、ちょっとサプライズ演出となります。新婦の美香さんは川野辺高校の教師ということは紹介させていただいたかと思いますが、今日はその生徒さん達からのお祝いビデオメッセージを受け取っています。それでは生徒さん達からのメッセージで~す!」

「え!何それ!予定に無かったよね!」


急な話で慌てる美香だが、画面には美香の高校の生徒たちが映し出され美香への感謝や俺達に向けてのお祝いが告げられていった。

健吾君や楓ちゃんはもちろんだけど、何人かは俺も知っている子が居たな。

あの子達も美香の教え子なんだ。

美香を見るともう感極まって今にも泣きそうな状態。

そして、最後のとどめで健吾君と楓ちゃんが美香に花束と皆からのメッセージが掛かれた色紙をプレゼントしてくれた。


美香号泣。。。。お化粧が・・・・

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