第41話 結婚式②

少し肌寒いけど晴天となった結婚式当日。


「当日になっちゃいましたね。。。」

「何だか緊張するよな」


昨晩は2人して緊張してしまい少し寝不足気味だ。

ただ、今から結婚式だと思うと眠気も覚めて何だかテンションばかり上がってしまった。

俺と美香の晴れ舞台。ミスだけはしないようにしなくては。


などと思いつつ何度も忘れ物が無いかチェックを行った後、手配してあったタクシーに乗り式場へと向かった。


式場には待ち合わせの30分前に到着。

少し早いかなと思いつつ受付に行くと凛子と永田さんが衣装を用意して待機してくれていた。


「おはよ2人共。早く来てくれたんだね。今日は分刻みのスケジュールだけどよろしく!素敵な式にしましょうね!」

「おぅ」「はい」


凛子も張り切ってくれている。

俺達も頑張らないとな。


少し時間は早かったけど、凛子と永田さんと軽く今日の流れの再確認を行った後、俺達は着替えと化粧など式の準備に取り掛かった。

俺は基本1人で着替えて化粧や整髪だけ少ししてもらう感じだけど、今日の美香には式場のスタッフ数名が支度係としてついている。

まぁウエディングドレス着たり髪整えたり化粧したりって色々と手間だもんな。


支度が終わり、5階のエレベータホール脇に用意されている新郎新婦控室へ移動。

ここで参列者がチャペルに入るのを待つ形だ。

凛子は司会進行ということもあり今はチャペルに行っていて、ここには永田さんが待機してくれている。

それ程長い時間ではないはずなんだけど緊張して喉が渇く。

美香も同じような気持ちなのか顔がこわばっている。


「美香。大丈夫か?」

「ひゃい だ だいじょうぶでしゅ。。。」

「あんまり大丈夫そうじゃないけど・・・」

「ふふ 皆さんここに来ると緊張するみたいですけど、チャペルに入れば見知った顔ばかりだと思いますし大丈夫ですよ」


と永田さん。俺や美香よりも年下の女性なんだけど流石に式場に勤務してるだけあって色々見てきてるんだろうな。


そのまましばらく待っていると永田さんの携帯に着信。


「はい。わかりました。それでは」

「凛子からか?」

「はい。凛子さんから連絡が入りました。参列者が揃ったそうなので今からチャペルに向かいます」


いよいよだ。俺と美香は、腕を組んで控室を出て石畳の道を歩きチャペルへ向かった。


チャペル前に着くと中から凛子の声が聞こえる。

色々と式の説明をしているようだ。

そして、"新郎新婦の入場です"という声を受け、永田さんがチャペルの扉を開いた。

参列者の拍手と注目の中チャペルに入る俺と美香。

リハーサルは行っていたけど、いざ本番となるとやっぱり緊張する。


ただ、参列者席には大樹先輩、北里夫妻に兄貴や親父達、今日のために帰国してくれた雄一。それに会社の部下や同僚。皆が俺と美香を祝福のために集まってくれている。

やばい・・・始まったばかりなのに泣きそうなんだけど俺。

横を歩く美香も緊張してはいるようだけど友人や両親を見て表情を緩めている。

永田さんの言ってた通り知ってる顔を見て少し落ち着いたのかな。


「それではこれより、相良洋さんと小島美香さんの結婚式を始めさせていただきます」


祭壇の前に到着し参列者の方を向くと凛子が開式の宣言をし、俺達の紹介をはじめた。

俺が美香の実家でバイトをしていたことや小さい頃に美香と出会っていたことなどサラッと織り交ぜながらの紹介。

元原稿は俺と美香が提出したプロフィールシートだけど凛子が良い感じにアレンジしてくれていた。

流石に場数を踏んでいるというか上手いもんだ。


しかし、プロフィール紹介の最後の一言・・・反則だろ。

『私の様なお転婆で我儘な妹に対しても優しく接してくれる自慢の兄です。』

って普段言わないようなセリフを・・・本気で俺を泣かす気か!


そしていよいよ式のメインイベント誓いの言葉だ。


「次に新郎新婦より結婚の誓いの言葉を述べさせていただきます。相良さん、小島さんよろしくお願いいたします」


凛子の言葉を受けて、何度も練習した言葉を美香と2人で宣誓する。


「「私たちは本日ご列席いただきました皆さまの見守る中結婚の宣誓をいたします。これからの人生、生涯変わらぬ愛を約束し、夫婦として生きていくことを誓います。そしてお互いを思いやる愛にあふれた温かい家庭をつくっていきます」」

「新郎 洋」

「新婦 美香」


そして、凛子に手渡された結婚証明書に書き損じの無いように気を付けながら署名をした。こんなに緊張しながら自分の名前を書いたのって初めてだよ本当。


ふと署名を終えて横を見ると美香も少し緊張した顔をしながらも俺の方を見て微笑んでくれた。入籍は昨日したけど・・・これで美香と夫婦なんだよな。


そんな思いの中で次は指輪の交換だ。


「続きまして、指輪の交換でございます。新郎から新婦へ、新婦から新郎へリングを贈ります。指輪交換しましたら、皆さまどうぞ祝福の拍手をお願いいたします」


進行の凛子が宣言した後、少し手が震えたけど2人で選んだ結婚指輪の交換を行った。デザインはシンプルだけど、美香のリングにはダイヤが散りばめられてアクセントとなっている。


2人で指輪と結婚証明書を参列の皆にお披露目をすると拍手とカメラのシャッター音。そして「おめでとー」という仲間たちからの祝福の声が聞こえた。


40歳を前にして正直結婚は諦めていたところもあったけど、まさかこんな年下の可愛い嫁さんを貰うことになるとは夢にも思わなかった。

不思議な出会いだったけど美香を紹介してくれた呑兵衛横丁の店長や2人の中を取り持ってくれた西村ちゃんには本当に感謝だ。

そんな思いを噛みしめていると


「ご参列の皆さまのご承認を得て、ここにめでたく相良洋さん、小島美香さんの結婚が成立いたしました。ご結婚おめでとうございます!」


と凛子の声がチャペルに響き再び大きな拍手。

不覚にも少し泣いてしまった。

って美香は感激して既に泣いてるし。


凛子の閉式の言葉を経て結婚式は無事終了。

そして、女性にとっては重要なイベントであるブーケトスの時間となった。


凛子の呼びかけに応じ独身女性陣が前の方に進み出る。

美香の同僚の三宅先生と富田先生、それに大樹先輩の娘さんの楓ちゃんと紅葉ちゃん。後は兄貴の娘さんの幸ちゃん。

後は・・・俺の妹でさりげなく前に出る凛子。

・・・まぁ司会しつつも参列者だからいいんだろうけど。お前は年齢的にも本気で相手を見つけなさいって。


後ろを向いた美香が凛子の合図でブーケを投げる。

綺麗な放物線を描き放たれたブーケは高くジャンプした富田先生がゲットした。

正直現役バスケ部で背も高い楓ちゃんが取るのかと思ってたけどまさかの伏兵だったな。

ちなみに後で美香に聞いたけど富田先生はバレーボール部の顧問でOGらしい。

今でもジムで体鍛えてるらしいし、そりゃジャンプ力もあるよな。


こうして何だか長かったような一瞬だったような結婚式も終わり、次はイベント盛りだくさんらしい披露宴だ。

気持ち的にはもう疲れたんだけど・・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る