第30話 久々の二人飲み

「「かんぱ~い」」


週末金曜日の夜。

場所は、最近忙しくて久々となる川野辺駅前の呑兵衛横丁。

いつもの様に俺と美香はカウンターに並んで座りビールとつまみで飲み食いしながら店長と語り合っていた。


「2人とも最近ご無沙汰だなぁ」

「すみません。何だか忙しくて最近宅飲みばかりだったんですよ」

「冗談だよ気にするな。お前も毎日遅いみたいだし、小島先生も学校行事が続いてたもんな。それよりお前らの式って1月だろ?俺んとこに飲みに来てくれるのはありがたいけど、準備は進んでるのか?」


そう。式まではもう2か月を切ってるんだよな。

凛子にだいぶ助けられてるけど、まだまだやることはあったりする。

でもなぁ~年末に向けて仕事も忙しくなるんだよなぁ~。


「はい。衣装合わせとか大きなものは終わりましたし式場の準備は凛子姉さんが進めてくださっているので、後は招待状の準備や当日流すビデオの編集とかですね」

「って結構まだやること多いじゃないか。地味にそういうのって大変だぞ。仕事も忙しいんだし2人とも無理すんなよ。にしても凛子姉さんか・・・小島先生もすっかり相良家の一員だな」

「あ・・・さ最近凛子姉さんっていつも呼んでたからつい・・・」


ふふ。凛子とは随分仲良くなったみたいだな。

ちょっと変わった妹だけど根は良い奴だし仲良くしてくれるのは兄としても嬉しい限りだ。


「そういえば、お前ら家はどうするんだ?洋のとこに住むのか?」

「はい。しばらくは洋さんのところで一緒に住む予定です。でも一応新しい家もこの近くで探してるところなんです」

「そうか。この辺りも随分宅地化が進んだし、大きなマンションとかも作ってるからな。共働きだし条件に合った家も見つかりやすいんじゃないか?」

「そうだといいんですけど」


俺のマンションも結構広いからそのまま住んでも良いんだけど川野辺高校とは駅の逆で美香の通勤に時間が掛かるし・・・もし家族が増えたら手狭だしな。

まぁこれは結婚式の後でも大丈夫だし慌てなくてもいいとは考えている。


店長とは、ここ最近の俺達の出来事や結婚式の向けての動きなど色々と話をして盛り上がった。

ある意味店長は俺達のキューピットでもあるからな。当然のことながら結婚式には来てもらうし、俺の先輩ということでスピーチもお願いしている。

柄にもなく恥ずかしがってるけど絶対に引き受けてもらうつもりだ。


店内に客の数も増えてきたため、しばらくすると店長も厨房のヘルプに行ってしまった。ここからは美香とさし飲みだ。


「そういえば来週は、健吾君達と修学旅行に行くんだろ?」

「はい。京都旅行ですね」

「京都かぁ。修学旅行で海外とか行く高校もある中で結構渋いチョイスだよな。俺の頃から変わってないし」

「私の頃も京都でしたよ。当時は"何で今更京都なの‟とか思ってましたけど、教師の立場になってみると旅費だとか家庭への負担額も低く済みますし、京都って大人になってから行くと歴史に触れられるというか感じ方もまた違ってくるんですよね。私も去年梨花と行ってきたんですけど凄く楽しかったです」

「へぇ西村ちゃんと行ってきたんだ」

「はい。2人くらいなら予定も組みやすいですからね」


本当仲いいんだなこの2人は。

でも西村ちゃんにも何だかんだ言って今回は結構助けられたな。感謝感謝。


「舞妓さんのカッコして嵐山を歩いたり、和カフェに行ったり、御朱印集めて回ったりって2泊3日でしたけどあっという間でした」

「楽しそうだな。じゃ今度は俺とも一緒に行こうな。美味しいお店とか案内するよ」

「はい。楽しみにしてますね」


京都かぁ俺も随分行ってないな。

前行ったときは相原と出張の帰りだったか。

2人して美味しい日本酒の店をはしごして。。。

そうだな美香と日本酒の飲み歩きとかもいいかもな。


などと学校の事や職場の事などを酒の肴に盛り上がった。

そして日付も変わる24:00。


「店長!そろそろ上がるから勘定頼むわ」

「おぅ結構飲んだな。ちゃんと小島先生送ってけよ」

「もちろん。というか今日は俺の部屋に帰るんで」

「お熱いねぇま2人なら大丈夫だろうけど疲れてるんだから"加減"はしろよ」

「ははは」


とりあえず俺は笑っておいたけど、美香は顔を赤くしていた。


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いつもの様に帰宅途中のコンビニで缶ビールとおつまみを買って帰宅。

どちらかが寝るまでの宅飲み開始!なんだけど・・・


久々の呑兵衛横丁で飲み過ぎたのか、帰宅後の缶ビール1本目で美香がダウン。

テーブルに突っ伏して寝息を立て始めた。


「美香も疲れてたんだし、飲ませすぎちゃったかな・・・」


少し反省しつつ毛布を美香に掛け、シャワーでも浴びようかと立ち上がったところで美香に抱き着かれ押し倒された。


「え?」

「ひろしさ~ん 大好きです~」


そしてそのまま"加減"せずに朝まで盛り上がってしまい目が覚めたのは翌日の昼。

土曜日で助かった・・・


隣りを見ると俺の大事なお姫様が気持ちよさそうに寝息を立てている。

2人とも当然のことながら裸。

初めて会った時と同じような状況だ。

でもあの時は美香のためにと俺から離れようとした。

それなのに今は婚約し結婚を控えている。

あの時美香が俺に声を掛けてくれなかったらあのまま別れて会うこともなかったんだよなきっと。本当不思議な縁だ。

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