第15話 プレゼント

ホテルに泊まることも決まったので、俺と美香はレストランでちょっと贅沢な食事をした後、バーラウンジへ移動しお酒を楽しんだ。


「何だか呑兵衛横丁以外のお店で飲むの久しぶりです」

「確かに最近会社の飲み会もないし、俺もあの店専門だな」

「ふふ 随分あのお店の売り上げに貢献しちゃってますね」

「だな」


川野辺の駅前には何件か居酒屋があり、以前は俺もその日の気分でお店を変えてたりもしたけど、美香と出会ってからは呑兵衛横丁にしか行ってなかった。

毎日の様に会ってたし確かにだいぶ売り上げに貢献したかもな。

まぁ店長にも色々世話になったしチャラかな。


「何だかカクテルとか飲むのも久しぶりです」

「そうだな。あの店だと大体ビールか酎ハイだもんな。

 美香はカクテルとかも結構飲めるのか?」

「梨花ちゃんと飲みに行くときは大体おしゃれなお店が多いので、

 その時はカクテル系が多いですね。カシス系は結構好きですよ」

「確かに西村が大衆居酒屋で飲んでるイメージはわかないな」

「梨花ちゃんって結構お嬢様ですからね。あ、でもお友達みんなで飲みに行くときとかは普通の居酒屋ですよ」

「居酒屋はお財布には優しいからな」


それにしても美香って西村と本当に仲が良いんだな。

学生時代の友達かぁ。最近会ってないけど、雄一とか元気にしてるかなぁ。

確か輸入雑貨の商社に勤めてるとか前に会ったときに言ってたよな。

最後に会ったのは何年前だろう10年前くらいか?

学生時代は毎日の様に一緒に遊び歩いてたけど、あいつ結婚早かったし卒業後はあんまりあってないんだよな。

前にあった時は、確か子供も結構大きかったよな。

名前何だったっけな。ケンジ?ケンヤ?ケンゴ?・・・ケンは付いたような・・

まぁいいか今度、久しぶりに連絡でもしてみよう。


「どうかしたんですか?」

「あ、いや美香と西村の話しを聞いてて、俺も学生時代の友達の事思い出してな。もう随分会ってないなぁと」

「川野辺高校時代のお友達ですか?」

「あぁ。高校、大学と一緒だったんだけど、就職してからはお互い忙しくて中々な」

「確かに学生時代と違って時間は取りにくくなりますよね」

「そうだな。今度久しぶりに連絡してみるよ。転勤族だったと思うからすぐには会えないかもしれないけどな」

「会えるといいですね」

「そうだな」


ラウンジからは六景島のイルミネーションの他市内の夜景がきれいに見える。

1杯のお酒も結構なお値段だけど、まぁ場所代だよな。

店に入ってだいぶ時間が過ぎ夜も深くなってきた。

軽めのお酒だけど、俺たちもそれなりに酔ってもきたので、店を出て予約していた部屋に向かった。


「わぁ~ ここからも夜景が見えるんですね」

「あぁ 景色が綺麗そうな部屋を取ったんだ」


流石にスイートはお財布的に厳しかったけど、夜景が見える良さそうな部屋は選んだ。

比較的ゆったりした部屋で、大き目のダブルベッドにソファとテーブル。壁面の大きな窓からはバーラウンジ同様の夜景がきれいに見えた。

『よし』俺は自分に気合を入れて、窓から外の景色を見ている美香に近づいた。


「美香」

「はい?」

「これプレゼントだ」

「え?これって指輪・・・・」

「まだ付き合い始めて間もないし、婚約指輪とか結婚指輪ってわけではないんだけど俺とのペアリングだ。

 こういうの柄じゃないんだけど、美香との事を真剣に考えてるってわかってもらいたくてな。

 こういうの嫌だったか?」

「う 嬉しいです。ありがとうございます」


と美香が俺に抱き着いてきた。

少し肩が震えてる。


「泣いてるのか?」

「・・・何だか嬉しくて。私大切にしてもらってるなぁ~って」

「ちゃんとした婚約や指輪はお互いの両親に会ってからと思ってるけど、今度一緒に選びに行こうな」

「はい」

「美香・・・・」

「洋さん・・・・好きです」

俺は美香にキスをした。





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翌朝。


美香はまだ俺の隣で気持ちよさそうに寝ている。

昨日はカーテンを閉めずに寝てしまったので日の光がまぶしい。

俺はカーテンを閉めようかと少し起き上がった。


「おはようございます。洋さん」

「あ、起こしちゃったか。カーテン閉めようかと思ったんだけど」

「大丈夫ですよ。もう朝ごはんの時間ですし。

 それより昨日は本当にありがとうございました。凄く楽しかったです」

「あぁそう思ってもらえたなら俺も嬉しいよ。

 これからも色々なところに行ったり、美味しい店に飲み行こうな」

「はい でもまずは朝食ですね。何だかお腹すいちゃいました」

「そうだな。昨晩はちょっとお互い張り切り過ぎたかもな」

「そ そうですね」


照れてる美香も相変わらず可愛いな。

その後、シャワーを浴び着替えた俺達は、ホテル1階にあるレストランで朝食を取った。朝食はバイキング形式で中々の味だった。特に焼きたてのパンが美味しかったので、俺も美香もつい食べ過ぎてしまった。


ホテルをチェックアウトした俺達は、朝の六景島を散策した後、愛車に乗って帰路についた。

帰りは湾岸を走り鎌倉・江の島方面まで足を延ばした。

夏の湘南地区は人で一杯だ。ただ、それがまた湘南らしさを出しているようにも思える。俺達は混雑する砂浜を横目に海岸線をドライブし川野辺に戻った。


「じゃあ、またな」

「はい。本当にありがとうございました」


美香を家まで送り帰宅。

明日からはまたいつもの日常だ。

『美香との未来のためにも気合いれて稼がないとなぁ~』

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