第4話 友達

俺は言葉が咄嗟に出なかった。期待していただけに自分では予想外だった言葉に上手く伝えられる言葉が見つからなかった。




この美少女は、俺を救ってくれた。だからこそ俺はこの美少女を裏切りたくなかった。だけど傷付けないように言葉にするには後暗すぎた。




「・・・・・・どうしたの?顔色悪い」




「いや、その、ごめん」




「・・・・・・謝られても分からない 私悪いことした?」




悪いことなんてしていない。ただ俺が逃げただけ。俺の心の弱さが悪い。でも俺はこの気持ちを素直に吐露することは出来なかった。




「・・・ごめん」




「・・・・・・もういい。謝らなくても」




俺は泣きそうだった。居た堪れなくなり、いなくなりたいとさえ思った。俺がこんなことを思っちゃいけないのは分かってるけど辛かった。




「・・・・・・駿大丈夫?」




「名前・・・なんで知ってる?」




「・・・・・・駿のことが好きだから」




「俺には分からない。君がなぜ俺のことが好きなのか。好きだから名前を知っている理由も分からない。なぜ俺を助けてくれたのかも。でも嬉しかった。ありがとう」




「・・・・・・本当に分からないの?」




「分からないんだ。俺みたいなを好いてくれる理由も助けてくれる理由も」




「・・・・・・私は駿に助けられた。でも覚えられてないのはなんか嫌。思い出して」




俺は無茶言うなと思いつつ、纏まらない思考をフル回転させた。だけど思い出せなかった。




「ヒントくれないか?」




「・・・・・・嫌。思い出してくれないと嫌」




「ごめん・・・分からないよ・・・」




「・・・・・・思い出すまでそばに居る。絶対に思い出して」




「それって・・・友達になるってことか?」




「・・・・・・違うけど、思い出せないなら、思い出すまでそれでいい」




美少女は少し悩んで難色を示したが、友達になってくれた。良かった。そういえば名前を聞いてなかった。




「君の名前・・・聞いてなかった。知ってるかもしれないけど、俺の名前は山吹 駿」




「・・・・・・わたしの名前は、小雪。小雪って呼んで」




「えっと苗字とかは」




「・・・・・・小雪って呼んで」




「はい・・・」




俺は一体小雪に何をしたんだろう。俺は小雪に何が返せるだろうか。俺は何も思い出せない。もしかしたら小雪の嘘なのかもしれない。思った通り騙そうとしているのかもしれない。












でも俺は助けられた。それだけは間違いじゃない。俺は救われたんだ。だから俺は小雪の友達として、力になろうと決めた。


でも俺の心の弱さが好きって気持ちを受け入れずに友達と解釈した。いつか思い出せるように。














俺は・・・小雪に向かって




「ありがとう。小雪」




と少し笑い、呟いた。




小雪は聞こえたようで




「・・・・・・どういたしまして」




と笑顔を見せてくれた。

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