女の子……? 3


シャワー室に向かう前に、タオルとボディーソープを持っていくため、一旦控え室に寄った。


そこへ、葵さんが顔を出した。



「親父、何だって?」


「食事に行く前に、ちょっと様子を見に来ただけらしいスよ。」



板垣いたがきまもるさんは、オレのマネージャー兼事務所の副社長で、

以前は、自身もモデルをやっていたらしい。



「あっ……それと、女の子連れてましたよ。」


「女の子……?」


まもるさんの友達だって言ってましたけど……?」


「……オレの………?今日……だった……?つーか、本当に女だったのか?」


「何言ってんスか。しかもそのコ、すっげぇかわいいんスよ。オレのこと見て、顔赤くしちゃって……。」


「お前なぁ………。」



まもるさんは、半ば呆れ顔で呟いた。



「自分の姿、見てみろよ。」


「あっ………。」



そうだった……。



「女物の襦袢羽織って、胸がチラ見えしてる姿なんて……、直視出来るわけねぇだろ?」


「あのコ……純情そうだったしな……。」


「それに……高校生のクセに胸板は厚いし、腹筋は割れてるし……妙に色っぽいんだよ……。」

 

「ん……? なんスか?」



オレの反応にイラッときたのか、急に説教モードになった。



「お前は、全然わかってない。 お前には、男も惑わす色香がある!」


「……はぁ………?」



……男なんて、惑わしたくねぇけど……。



「今回のアンケート結果だってそうだろ?」


「あっ……、それって、どんなアンケートだったんスか?」


「あぁ……。 もし、リアルBLを観ることが出来るとしたら、誰のが観たいか……? みたいなことだったと思う。」


「………。」


「………。」


「………。」


「生きてるか……?」


「……あっ……すみません。 えっと………リア……?………ビー……?」



やっべぇー……思考回路が停止しそう……。



「つまり……誰がヤってるのを観たいか……?ってこと。」



それでも、きょとんとしているオレの顔を見て、まもるさんは、デッカい溜め息をついた。



「まあ、いい。フローラが送られてきたら見せてやるから、少しはそれで勉強しろ。」


「ウッス。」


「…ところで紫津木しづき……話があるんだが…」


「?…はい。」


「今から話す事は、墓場まで持っていくつもりだった。 ただ……大人の事情で状況が変わった……。」 


「はぁ……?」



何の話だ……?



「今話さなきゃ、一生後悔すると思った……。 ただ、お前に伝えたいだけであって、その後どうこうするつもりはない。」


「えっと………?」


「オレの自己満足だから、すぐに忘れてくれてかまわないから……、」

 

「ちょっと!……ちょとストップ! 前置き長過ぎ。 何の話ですか?」



まもるさんは、一瞬目を見開くとオレから視線を逸らした。


「オレが……、」 


「はい……。」


「お前のこと………好きだ……て、話……。」


「そうですか………て………えっ………?」



まもるさんの顔を見ると、頬どころか目まで真っ赤で……潤んでて……口を隠している手は、小刻みに震えてて………


そんな様子のまもるさんに、突っ込めないし、

まして……茶化せない……。


どうすれば………?

 

オレは、震えるまもるさんの手を取り、自分の両手で包み込んだ。



「震えてる……。」


「……当然だ。」


「いつもの冗談じゃないんですよね……?」



まもるさんは、チラッとオレを見てから、また視線を逸らした。

 


「冗談にみえるか……?」


「いえ……。あの……、」


「ん……?」


「嬉しいです……。」


「えっ……?!」



オレは、まもるさんの表情を見て、慌てて訂正した。



「ちっ……違います! そういう意味じゃなくて……!」


「そういう意味以外どんな意味があるんだよ。」


「いや…………ただ素直に嬉しくて……、憧れの先輩に好きだ……て言ってもらえて……、」



外見だけじゃなくて……オレのこと…見てくれてた……てことだよな……。


女子にコクられた時より、ずっと嬉しい……。



「オレの自信になります……!」

 

「そうかよ……。」



ひとつため息をつくと、オレの目を真っ直ぐに見つめた。



「で?……この手は、いつまで繋いでるんだ?……結構、地獄なんだけど……?」


「あっ……すみません……!」



慌てて手を離した。

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