第15話 僕と友達のデート大作戦(2)
まず、僕が準備するのはデート時の衣装とメイク、ウィッグだ。衣装とウィッグに関しては己丞君が任せてと言ってくれたので事実自分で用意するのはそれに合うコスメと技術、それと雪華として悠雨に会える練習だ!!
早速、己丞君からメッセージが送られてきた。
「こんな感じでどうかな?」
そう送られてきたメッセージと一緒に洋服の画像が送られてきた。
パッと見た印象は……すごく地雷っぽい……。
スカートはフリルで満たされていて頭には黒と白のリボン……、悠雨ってこういう子が好きなのかな……。
僕はすぐにメッセージを返した。
「もう少し、抑えられないかな……?」
送ってから10秒経ったぐらいですぐに返ってきた。
「うーん……、わかった。もうちょっとだけ考えてみる!」
「うん、ありがとう。よろしくね!!」
僕と己丞君の準備はこんな感じ、そんな中朱希は一番大変な準備をしてくれていた。
主には場所選びと、悠雨へのお誘い。そしてその他のプラン立ての全て……。
そんな大変なこと全部をやらせる訳にはいかないと思って初めは分担しようって話したんだけど……、
「桜花には、悠雨にバレないように練習してもらいたいからダメ。それに己丞に場所選びはセンスが信用出来ないし、悠雨を誘いだすのも普段しない己丞がやると不自然極まりないし。」
そう言われてしまい、朱希にその他全ての準備を任せることになってしまったというわけで……。
こういうアンバランスな分担になってしまったのだ……。
その分、僕はちゃんと自分のやるべきことをやらなきゃ!! みんな僕のために動いてくれているんだから。
そして、その日に付けていくであろうウィッグを被りメイクをして、僕は少しづつ練習を始める。
「え……っと、はじめまして……。な、夏本さん……。こんな感じなのかな……?」
話したことの無い設定だし、年下らしいから呼び方は夏本さんでいいとは思うけど……、一回も悠雨のことを苗字で呼んだことなんかないからな〜。なんだか気恥しいし、他人行儀な感じがして慣れない。
でも、ちゃんとできるようにしなきゃ!!
「えっと……、こんにちは、夏本さん。この前髪留めを拾ってくれてありがとうございました。
あいさつはこんな感じでいいかな? よしこれを何度か練習してと……。
まだなかなか棒読み感がとれないので何度も反復練習を続けた。そうしていると、己丞君からまたメッセージが届いた。
「色々考えて、こういう感じになったんだけど……どうかな……?」
一緒に送信されてきた、写真をみてみるとさっきとは色違いの衣装になっていた。それとさっきより装飾も落ち着いている。
それに、すごく可愛い……。
これならと思いメッセージを返す。
「これ可愛いよ!! よし、これにしよう!! こういうの着てみたかったから凄く嬉しい。」
そう返すと、また10秒ほど経った後にメッセージが返ってきた。
「良かった〜! これがダメだったらどうしようかって悩んでたから、気に入ってもらえて本当に良かった!! じゃあ、これを明日届けるから待っててね〜。」
「うん、ありがとう。待ってるね!」
そうして、着ていく衣装も決まった。
衣装も決まり、僕のやることは雪華になりきる練習だけになった。
まずは、この棒読みをどうにかしないと……。
そうして何度も反復練習を重ねていき、段々と形になってゆき、本当に自分自身が雪華という女の子になったように感じられるようになってきた。
途中で服を引っ張り出して、着替えて練習していたから尚更。
そして、練習を続けていると時間は経ちもうすっかり辺りは夜中になっていた。
さっきからずっとあくびが出ていて、今にも眠ってしまいそうなくらい、限界になってきていた。
「すぐ寝たいけど……、お風呂入らないと……。」
それに着替えもまだだし、メイクも落としてない……。
ダメだ……、眠すぎる……。
そして、ベッドにうつ伏せの状態で飛び込み、そのまま目をつむり、深い眠りに入ってしまった。
ブーッブーッ……ブーッブーッ……
スマホのバイブ音に気づいて、僕は目を覚ました。寝ぼけながらスマホを確認すると、己丞君がうちの前にきたという知らせがきていた。
僕は慌てて、ベッドから飛び起き、そのまま玄関の方へ駆け出し、ドアを勢いよく開けた。
「己丞君、ごめん!! ずっと寝ちゃってて……!! どのくらい待ってた……?」
僕の勢いを見てなのか、僕の様子をスーッと見ながら目を丸くしていた。
「? どうしたの……?」
「ごめん、ちょっと写真撮らせてもらっていい!!」
「え、えぇ〜!? ちょっと待って!! 今、寝起き出し、それになんで今……」
そうを言おうとした時、僕の袖が目に入った。
ここで思い出した……。昨日の夜、着替えないでメイクすら落とさず寝てしまったことに……。ただ、昨日にカラコンを入れていなかったことだけ良かったけど。
「あの、己丞君。この格好になってるのは、昨日そのまま寝ちゃったからで……!!、だから今撮るのはちょっと……。」
「お願い!! これは撮らせて欲しい!」
「ダメダメ!! ダメだってば〜!!」
結局、昨日の格好のまま寝て起きた寝起きを撮られてしまった……。己丞君には一応、誰にも見せないでね! と念を押しておいた。
「いや〜、予期せぬいい写真がゲットできた〜! あ、そうだ、これ約束の服。」
「あぁ……うん、ありがとう。本当にその写真誰にも見せないでよ。」
「わかってます、わかってますってば〜。」
本当にわかってるのかな……?
ちょっと疑問を残しつつも、持ってきてもらった服を受け取り、待っててもらったのも悪いし、お茶でも出そうと部屋に上がってもらった。
いつもの感じで、僕は自分の部屋に己丞君を招き入れた。
「いや〜、なんだか一人で来るとなかなか罪悪感がある部屋だね~……。」
「それってどういう意味?? はい、どうぞ。熱いから気おつけてね。」
「お、ありがとう。罪悪感があるっていうのは、本当に想像したままのような女の子の部屋だったからさ。だから、自分が一人で来るにはちょっと勇気がいるな〜と思って。」
「そうかな? 一応僕好みの感じにしただけで普通だと思うけど……。」
「ははっ、それでこそ桜花ちゃんだよね(笑)あ、そうだ桜花ちゃん、もし、よければでいいんだけど……持ってきた服この場で着てみてくれないかな……?」
「え? 別にいいよ。あ、でもちょっとメイク落としてまたし直したりするから時間かかっちゃうけどいい……?」
さすがに、このメイクは一回落とさないと……。考えると今すごく、だらしない格好だろうし……。
「全然いいよ! お願いしたのはこっちだしね。あ、着替え終わるまでこの部屋出ておいた方がいいよね……。」
「いや、大丈夫だよ。僕が別の部屋で着替えるから、己丞君はこの部屋で待ってて。」
こうやって、気を使ってくれるのは正直嬉しい。学校の体育のときなんかはなかなかそうもいかないから、毎回制服の下に着て行っている。
朱希からはそろそろ学校側に伝えた方がいいんじゃないかと言われたけど、やっぱり勇気が出ない……。
それに、今は、知ってくれているのはこの二人だけでいい。
そして、服を受け取り急いでメイクを洗い流し、クレンジングをしてからメイクをし直し服を着てウィッグも整えた。
だいたい、こんな感じかな〜……。よし、ちゃんとイメージ通りにもなった!!
準備が整ったところで、僕は己丞君の待つ部屋に戻る。
コン、コン、コンッ
「お待たせ~!! ごめんね、いつもよりちょっと手間取っちゃって……。あれ? 己丞君~?」
あれ……? なんで固まってるの……?
「あの……、己丞君、どうしたの……?」
「眼福! ありがとう……、ありがとう!!」
「え? いやいやなに!? どうしたの!?」
突然、両手を合わせ始めて眼福と言い出すから驚いた。そして、また写真を撮らせて欲しいと両手を合わせて頼んでくる。
まあ、この格好なら別にいいけど……。
何個かポーズをとって欲しいと言われたので、思いつきでいくつか考えてカメラの前に立つ。
「こ、こんな感じでいいの……?」
「そうそう!! いいね! そこに横髪を耳にかける仕草とかつけてみてよ。」
「え、あぁ、うん。こういう感じ……?」
「おお!! ありがとう!」
こんな調子で何枚も撮られ続け、十数枚撮ることにはクタクタになってしまった。
なんだかモデルさんの大変さがわかった気がする……。
こんなこともありつつ、話題はデート当日のことへと変わっていった。
「そういえば、己丞君はまだしないの? 朱希に対して告白……。」
「いや〜、桜花ちゃんに言われちゃうとは……。確かに絶好の機会ではあるとは思うけど、今は桜花ちゃんのことしかきっと頭にないから、変に困らせても嫌だし、まだこういう時にするのは、ちょっとばかり怖いっていうのもある……。」
「そっか……。じゃあその覚悟が決まった時には、今度は僕が二人のこと協力するよ!」
「ははっ、そう言ってもらえるのは、なかなか嬉しいもんだね。」
本当は二人とも両思いだから安心していいよ、とは言えないのでちゃんと二人の後押しをできるようにがんばろっと!!
それから当日の細かいことを、僕らで決められる範囲で決めて、今日の一日は終わりを迎えた。
「じゃあ、またね!! 服、ありがとう!!」
「いやいや全然、こっちこそ写真ありがとう。」
「ぜ、絶対、誰にも見せないでね~!!」
「わかったよ〜! それじゃあまたね〜。」
手を振り終え、部屋に戻り今日のことを思い出す。
とうとう、この時が来る……!!
よし、その時までまた練習だ~!!
〜続く〜
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