エピローグ

「ようやく卒業できた~!」

 高校の制服に身を包み、卒業証書の筒を青空にかざす。

 あれから数ヶ月。

 桜の木の蕾がほころびそうになってきた頃。

「元気だな、病気治療をしてたのが嘘みたい」

 悠也も初めて見る高校の制服で、自分の卒業証書が入ったバインダー式のものを見せてくれた。

 今日、わたしは無事に高校を卒業することができた。

「ここまで死にかけてたこともあったけど、卒業できてよかった」

 母さんと父さんも泣いている。

 あれから病気に対する治療薬が本格的に一般で使われるようになり、完治することまでこぎつけることができたの。

 わたしが試験的に使わせてもらった治療薬は、多くの人を救えるようになっている。

 副作用はとても大変だったけど、この日が来るのをずっと待ってた。















 四月。

 入学式のあとに悠也の家に遊びに来た。

「結希。入学おめでとう!」

「悠也……ありがとうね、ずっと支えてくれて。今度はうちが支えるよ?」

「うん」

 悠也は美大附属高校から内部進学ではなく、芸大を受験して見事に現役合格した。

 倍率がめちゃくちゃ高いけど、悠也が合格したときは「俺が受かって当たり前」みたいな顔して帰ってきたりして、ちょっとだけムカついたけど。

 あと彼の描いた絵も知名度を上げている。

 きっかけは母さんでもある陽菜乃おばさんのバンド Sky Blue and Summer のアルバムのカバーイラストを担当した(悠也は押しつけられたって言ってる)ことで、有名になりつつある。

「悠也は将来、何をするの?」

「う~ん、CDとか、本の表紙とかのカバーイラストとかをかけるような仕事をやりたいな」

「そっか……わたしは……まだ決めてないけど、短大にはギリギリ入ったし」

 わたしは猛勉強の末、なんとか地元の短大の英文科に入学した。

 高校生活は病気のため、全く学校生活を送れていなかった。

 だから今度こそ……学校生活を楽しめるようにしたい。



 悠也と縁側に出ると、隣に座った。

「結希」

 一瞬だけ、唇が重なった。

 顔が離れると、悠也が笑顔でこっちを見ていた。

 わたしは顔が赤くなったけど、笑顔につられて笑ってしまった。

「悠也」

 まだ伝えてなかったことを言うことにした。




「もう離れないからね! これからは、ずっと一緒にいるから」

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きみに伝えたい 須川  庚 @akatuki12

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