第6話 寄せ集める
ぼんやりしてる間にマチュピチュ村に着いていた。
恭子は息子のぼんやりした淡い記憶を寄せ集めるのにやっきになっていたせいか、ホテルに着いたとたんに熱が出た。
『マチュピチュ遺跡は熱がひいてからにしよう』と浩一は言った。
浩一は恭子の世話をかいがいしく焼いた。そんな人ではないはずだが…
やはり自分の記憶違いだろうか?
恭子は熱でぼんやりしながら、自分の記憶というものの頼りなさを実感していた。
すべてがぼんやりしている
だから彼女は息子の記憶を封印した。
記憶があると、彼女は生きることが困難だと直感したのだ。可愛くはないが大事な娘がいる。
夫は全く頼りにならないので、彼女は夫に食事だけ与え、後は放し飼いにした。浮気してたとしても全く興味がなかった。
彼は食事よりお菓子が好きで、毎日スナック菓子ばかり食べていた。
ぼりぼりぱりぱり……
彼はどうでもいい存在だった。ただ、娘の為にいてくれた方が都合が良かったのだ。
それに、夫の両親は愚鈍に真っ直ぐに娘を可愛がってくれた。だから恭子は彼らを出来る限り大事にした。夫より彼の両親の方が頼りになる。
恭子が芯から娘を可愛がることが出来ないので、とても有りがたかったのだ。
夫の両親はそんな恭子を出来た嫁だと褒めた。
見当違いも甚だしいが、彼女は何も言わなかった。
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