体重七十キロオーバーの出来事

伊島蒼

第1話


 私の人生をゲームに例えてみるならば、間違いなくキャラメイクの時点で失敗していたのだろう。


 美形な両親の間から産まれてきた私は、そう表現せざるを得ないレベルで似ていなかった。いや、言い方が悪かった。似ていない理由は単に私の不摂生が原因なのに。


 そう、私はデブなんだ。


 家系的に恰幅がいい訳でもないから、あくまでも、自己管理を怠ったのが悪い。めちゃくちゃ私に食べさせようとする祖父母両親は恨んではいけないのだ。


 それとは別として、実はその辺で拾った血の繋がりが無い子供なのかと割と本気で疑っているのだけれど、当の両親は悲しみの完全否定。やはり原因は食べ過ぎか。

 ちなみに、両親は、不貞など疑えないほどにイチャイチャしやがるので、重苦しいような裏事情は無いと思われる。


 そういえば、小学生の頃にあった授業参観はとても悲しかった。私とは似ても似つかない両親と比較されるのだ、当然だろう。いや、所構わずラブでコメな波動を掃射しやがった事も手伝ってはいたが。


 まあそういった苦し恥ずかしいエピソードなど星の数ほどは言い過ぎだけれど、数多く存在している。


 その中の一つ、中学二年生夏休み直前の話。


 デブとはいえ当時の私も女の子、恋の一つくらいする。

 しかし、デブで根暗な私の告白が成功するなど万に一つもありえないことくらい、十分に理解していた。それでも溢れる恋心を抑えきれなかった私は、やってしまったのだ。

 大丈夫、犯罪的なことはやっていない。普通に呼び出して告白だ。


 結果は惨敗であり、告白の次の日にはクラス中に私が砕けたことが広まっていた。やつに武士の情けというものは無かったらしい。


 ついでに言えば、少ない友人も何処かへ行ってしまった。デブで根暗な私は、デブで根暗でぼっちな私にクラスチェンジしたのだった。


 後で分かったのだけれど、告白した相手が悪かったらしい。優しくて、イケメンで、いつも中心に居る彼は、私だけでなくクラスの大半の女子を魅了していたらしく。そんなことも知らずにぶつかりに行った私は、抜け駆け野郎で、身の程知らずのデブだったわけだ。うーん、理不尽。


 そうして傷つき一人になった私は決心したのだ。




 ―――お前ら絶対に見返してやるからな





 夏、体重七十キロオーバーの出来事。




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