終止符

 

B地裁K支部


「主文、被告人を懲役5年以上10年以下に処する」


「被告人の仮釈放や5年経過後の刑執行終了処分は地方更生保護委員会が判断する事項であるものの、当裁判所としては10……」


故意で被害者を死亡させたとされた重大事件は、家庭裁判所が非行事実(犯罪事実)の有無や事件の悪質性や少年の要保護性を判断し、当該事件を成年と同じように対処すべきだと少年法20条1項により検察官送致(逆送)となり、少年法6条の7第1項に基づき少年審判として処理され、成人でいう刑事裁判にかけられた。


ここで有罪となり実刑判決を言い渡されたのなら少年刑務所へ服役することが確定したのだろう。


刑事責任年齢対象だった俺の罪状は殺人。


あの男が潔く散った形にはしたくなかった。


和泉組の失態を公表する形は絶対に避けたいと狼狽える男の傍で泣き崩れる姐さんに駆け寄り介抱するおやっさんの前で抜け殻となっていた女性を庇う道を選んだのは必然だったと言えよう。


本来であれば、殺すべきではなかった。


だがしかし、何の落ち度もない人間が錯乱して下した過ちで未来を絶たれるのを受け入れる訳にはいかない。


彼女にトリガーを引かせたのはヤクザの言葉ではなく、自分の周囲で巻き起こっていた事態を収拾出来ずに長引かせてしまった結果なのだから。


弾丸は射撃技術を有しているのかと見紛うまでに心臓部を貫き、男は絶命した。


奴の脳裏には死ぬ間際に何が過ったのだろうか。


ヤクザが息絶える迄の間に女は何を思考したのだろう。


誰かの無念はこの出来事で晴らされたのだろうか。


あの夜に正当な罰を受けたのは一体誰だったのだろう。


世の中には“たられば”という言葉があるが、後悔は先には立たない。


曲突徙薪きょくとつししんで生きて行くのは不可抗力が存在する以上有り得ない。


この先、関わったヤクザの組同士で確執が生まれようと知った事ではないし、的屋が今後どうなってしまうのかなんて考えるつもりもない。


か弱い女の精神を破壊して死に追いやった者。

人の為に尽力していた男を簡単に見捨てた者。

分別を誤って他人の言動に疑いなく従った者。

我がの欲を満たす為に利用した挙句葬り去った者。

感情を抑えきれずに挑発に乗って凶行に及んだ者。


嘆け。


苦しめ。


心を痛めろ。


成仏出来ない消された命の持ち主が温情を与えたくなるまで一意専心いちいせんしん且つ惨めに。



あんた等には死ぬまで重い十字架を枷として背負って生きて行け。

俺はこの決断をもって俺なりのケジメをつける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

1990~ 其乃日暮ノ与太郎 @sono-yota

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ