第7話

 だが、どんなに頑張って働いても、憧れの二人暮らしを始めるにはお金は全然足りなかった。さらに働いている間に目を覚ました桃香が、私がいないことに気付いて不安がり、夜中に何時間も泣き続けて困ったという話しを疲れた表情の母親から聞かされたりもしていた。桃香を保育所に預けて働くことも考えたが、保育所代のことを考えると、母には迷惑をかけているが、今のように私と母が入れ替わりで面倒を見る方が経済的だった。


 お金が思うように貯まらないもどかしさと子育てと仕事の両立の難しさに、私は悩んだが、


 「全ては自分が選んだ道」


 そう思うと、何が起きても私が桃香にも母にも謝るしかなかった。私が不甲斐ないからまわりに迷惑をかけ、負担を強いることになっているのだから。


 そんな日々が続いていると、ふと、頼れる『他人』と知り合いたい思うようになった。養ってほしいなどとは言わない。ただ、今の想いや現状を理解して愚痴を聞いてくれる身内ではない人がほしかったのだ。責めることも独りよがりなアドバイスをするでもなく、ただただ話を聞いて寄り添ってくれる人がいれば精神的な疲れが軽減されるような気がした。


 しかし私は孤独だった。頼れる人も縋れる存在も誰一人いなかった。

 


 

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