第35話 少女達 3

大きな部屋に集まった多くの人。

男性も女性も等しく存在している。


「お爺さん…いや、あなたの名を教えてくれないか。」


「私はジユール・ストークスと申します。

この方はエヴァン・グリフィス。

そしてあちらにいるのが、ニコラス・ブラウンです。」


最後の名は、あの栗色の髪のおっさんだ。栗色髪のブラウンさんか。

なんてダジャレは後回しにしておこう。

だけど二番目の紹介の仕方が気になった。

黒髪の若い兄ちゃんの事だろ?


「………なるほど、王位を剥奪された者の流れだな。

現王の甥にあたる…のか。」


一瞬ジョールは驚いた顔をしたが、すぐに気を取り直し、

その通りでございますと頭を下げた。


「大方の考えは読めた。

エヴァンは……傀儡ではなさそうだな。

ちゃんとした信念を持っていそうだ。」


「いえ、私など周りの人に支えられ、立っているだけでございます。

まだまだ若輩者であり、勉強中の身です。」


その言葉に嘘は無いようだ。

その周りを固めている人達も、上の余りの身勝手さに嫌気がさし

自らを犠牲にしてまでも、この国を立て直さねばとの決意した者ばかりだ。


「考えはよく分かった。

あなた達のような人がいるならば、この国もまだ救われるだろう。

要らぬお節介かもしれないが、俺もこの事に力を貸してもいいだろうか。」


乗り掛かった舟と言うか、腹立たしさの鬱憤ばらしか。


「是非に。

よろしくお願い申し上げます。」


そう言い、そこにいた全ての者が一斉に頭を垂れた。


「あなた達も、この国の改革にすぐにも取り掛かりたいのだろうが、

サイアスの犠牲となった11人の子供達がいる。

そちらも早急に何とかしてやりたい。

彼女達の為に力を貸してもらえないだろうか。」


俺がそう問うと、その中の何名かが手を挙げた。


「ひー、ふー、みー、よー。」


「26名ですね。適任かと。」


俺をさえぎりジュリが言う。

幼稚で悪かったな、何か俺が無能に見えるじゃん。

そこにいた女性を多く含めた26人。

その者を連れ、俺はすぐに少女たちの下に転移した。


眠っている少女を起こさないように気を使いながら、世話を続ける侍女達。

そして先ほどはいなかったが、

やはり気を使いながら動き回っている人がいる。


「勝手をして申し訳ございません。商人を手配させていただきました。

美しく見えて、この子達の服は不潔極まりませんでしたので。

衣服や下着など、この子達に合わせて、作らせていただきます。」


うん、いいよ。

どんどんやっちゃって下さい。

どうせ金を出すのは王家だもの。

何だったら俺のポケットマネーから出してもいいし。


羽やしっぽ等を出せるよな形をした服や、

特別な形状の服。

サイズだってまちまちだ。

成長期の彼女達だもの、どうせだからワンサイズ上の物も作ってやって。


「ご覧の通り、サイアスの犠牲者だ。

あいつの我儘の為に親を殺された子供までいる。

ここに来るまでは檻や籠に閉じ込められ、

最悪の状態で、ひどい扱いを受けていた。

俺はこの子達に、何とか幸せな将来を送ってもらいたい。

その為にはどうしていいかまだ分からないんだ。

どうか力を貸してほしい。」


そう言って頭を下げる。


この26名の者達の反応は様々だった。

顔を真っ青にし、握ったこぶしを震わせている者。

涙をこらえ、じっと少女を見つめている者。

目を瞑り、動かない者。

だが全ての人間は、少女達への哀れみと、サイアスへの憎しみでできていた。


「彼女たちの経歴は、それぞれ就いてもらっている侍女に伝えてある。

それを聞き、この子達にとって、何が一番ベストなのかを考えてやってほしい。」


畏まりました。

皆が一斉に膝まずく。

そんな事しなくていいから、とにかく彼女たちの事頼んだね。


「取り合えず俺はさっきの所に戻るから、

何か有ったら連絡をくれ。」


俺も何か手伝いたいけれど、

次の問題も片付けなくちゃ。

そして俺は先ほどの部屋に戻った。


多分ここはパーティーでも開く場所なんだろうな。

改めて見まわし、そう思った。

適当な大きさの部屋を選んだが、この内装は贅沢極まりない。

こんな物に金をかけるぐらいなら、もっと別な物に金をかけろよ。

国の品位や対面が大事と言うなら、そんな物どぶに捨てちまえ。

国さえしっかりしていれば、他の国と争う必要なんて無いんだからさ。


※※※※※※※


転生者は無敵!の番外編と言いますか、

ヴィクトリアの第一世。転移してくる前からの話を始めました。

始まりは現代です。

主役は香苗ちゃんと言う、現世でのヴィクトリアの後輩です。

のんびり投稿を予定しています。

宜しければ読んで下さい。

あっ、題名は【女神カナエの大冒険】です。

m(__)m










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