第5話 俺、言っていなかったっけ?

目が覚めると外はまだ暗かった。

一瞬まだ夜なのかとも思ったが、その割には頭がさっぱりしている。

ああ、ダンジョンの中だから暗闇なんだ。

でも窓の外がほのかに明るい?

覗いてみるとキノコのようなものがあちらこちらで光っている。


「光茸だ。けっこうあるな。」


ダンジョンの中で時々見かけるキノコ。

光魔法が使えない者が、戦いの中で松明が尽きたりすると、

この光茸を集めて明かり代わりに使う時が有る。


「少しでも明るい方が安心感があっていいよな。」


と眺めているとググエラが、ギャギャギャッと鳴きながら飛んでいく。

そっか、最下層って広いはと思っていたけど、ググエラが飛び回れるほど広いんだ。

さて、今は何時だ?暗いと時間が分からなくて困る。

俺は大きく伸びをしてからベッドを降り、隣の部屋へのドアを開けた。


「おはよー。」


「おはようございます。」


ジュリは何かを読みながら、優雅に椅子に腰掛けお茶してた。


「寝てないのか?ジュリ。」


「いいえ、今までにないほど充分に寝かせていただきました。

しかし私は好きなだけ寝て下さいと言いましたが、

どれだけ寝るんですかあなたは。

疲れているだろうからと思い、起きるまでほっておこうと思ったら、

あれからもう半日以上たってますよ。」


「子供はよく寝るんだよ。」


「はいはい、

お腹は?すいているんでしょう?今用意しますからね。」


そう言うとジュリはキッチンに立ち、手際よく料理をしていく。

テーブルに着いた俺の前には、

次々とおいしそうなキッシュやスープなどが並んでいく。


「おおー、久しぶりにうまそうな朝食。」


「あなたの事だから自炊などロクにしなかったのでしょう?」


「だって僕7歳だもーん。」


「7歳ねぇ‥‥。」


俺は夢中になってジュリの料理を食った。


「相変わらずお前の料理は旨いな。」


「あなたは作らないか、作ってもまずい…いえ、あまりおいしくなかったから。

おいしい物を食べたいのなら、自分で作るしか無かったからですね。」


「おまえ、昔はそんな嫌味や、口答えなどしなかったぞ。」


「私も大人になったということですよ。」


「俺、やっぱりお前と行くのやめたいなー。

またお前の面倒見ながら、嫌味とか言われ続けるのヤダ。」


「お師匠様、また私を見捨てるのですか?」


俺の言葉をマジにとったのか、

ジュリの顔が途端に心細いように変わった。


「見捨てるってお前、前回は…。」


「だってそうではないですか。

でも、お師匠様のその姿を見ながらこんな話をしていると、

自分が小さな子供をいじめているみたいな気分になってきますね……。」


「ン?子供の姿じゃなければいいのか?」


朝食を食べ終わった俺は立ち上がり、自分の姿を新ためて眺めた。


「そうですねぇ、あなたの年がもう少し上でしたら、

言いたいことは山ほど有るんですが。」


「そっか。」


それを聞いた俺は、体に魔力をいきわたらせ、細胞を活性化させた。

それをゆっくりと成長させながら聞く。


「ジュリ、何歳ぐらいがいいんだ?」


と聞く。

どうやら、この人体の成長魔法は、

理論的に分かっていても、見るのは初めてのようだ。

ジュリは呆気にとられながらも,


「では…、私の年ぐらいで。」


と答えた。


「えー、150歳ぐらいか?人間には無理だぞ。」


「いえ、外見だけで結構です……。」


とジュリが言うので、取りあえず自分の体を30歳ぐらいに成長させた。

都合上、服も大きくするのを忘れない。。


「お師匠様‥‥。」


「ん?」


「あなたは‥‥、あなたって人は‥‥。」


やば!ジュリ怒ってる?

また俺が何かしたか?


「ちょっと聞いていいですか。」


ジュリ、何か目が怖いぞ。


「おっ、おお、何だ?」


「その容姿や、その他を意図的に操作されましたか?」


「いや、7歳の俺をそのまま30歳にしただけだぞ。」


「本当ですね?」


「ああ、もう少し年上の方がいいか?」


「いえ、好みとしましてはもっと年下の方が…。」


「もっと下か?

さっきは同じぐらいって言ったくせに。」


そう言うと、ジュリがギロッと俺を見ら見つける。

此処は大人しく言う事に従った方がいいか。

俺はしかたなく自分の体を20歳ぐらいに戻した。

その様子を見ていたジュリは片手で口を押え赤くなっている。


「?」


「胸‥‥。」


「胸?」


俺は自分の胸を見下ろした。

そこには、程よく実った胸が有った。


「もしかして今世のあなたは女性なんですか?」


「‥‥‥。」


「お師匠様!!」


「はいぃ!女です!」


「どうして今まで隠して、いえ、まだまだ聞かなくてはならない事が

色々と有りそうですね‥‥。」


ジュリは首を振りながら深くため息をついた。

そんなに怒らなくたっていいじゃないか。

ちょっと話すの忘れていただけだい!

お前だって聞かなかったし。

別に隠していたわけじゃないぞ。

第一何でお前にいちいち報告する義務が有るんだ。

でも俺って、大人になると、なかなかのナイスバディになるんだな。

ちょっと楽しみになった。

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