あの技の名は(3)

 その頃、火災現場では、リポーターはマイクを握りしめ、火災現場のすぐ近にいる。

「もの凄い炎が上がっています! まだ消防車が到着していません。あの部屋の住人は大丈夫なんでしょうか!? えっ!? 何!? 部屋に子供が!? 今入った情報ですが、数名の子供が取り残され、他にもいるようです! ベランダから助けを求める声が聞こえます……!」


 現場は騒然とし、マンション住人たち、野次馬たちの見物人で辺りはごったがいしていると。アリスとラビー王女が火災現場のマンションの前に現れ。それをカメラがとらえていた。

「これはいったいどいうことなのか、突然私たちの目の前に……あれは、アリス、アリス様です! アリス様がいます。その隣いるのは、あれは、そうです、ラビー王女、ラビー王女様もいます。突然現れました!」


 アリスは、炎が立ち上るマンションを見上げ、ラビー王女は困惑し、立ち尽くしている。

「……お姉ちゃん、どうするの!? 助けるって言ってたけど」

「ラビー、これを見て!?」

 ラビーは、アリスの右手を見て驚いた。

「お姉ちゃん、その光」

「私には聞こえる、この光があの人たちを助けろって言っている」

 アリスは、光る右手の手の平をジッと見て。

「お願い、正義のリング、あの人たちを助けてあげて」

 アリスは右手を前に突き出し、手の平の光が増し、光がリングになり。

「行けー! 正義のリング!」

 アリスの右手から光のリング放たれ、その光は分散し、各部屋に散らばり。部屋に取り残された人たちが、透明の球体の中に入り、宙に浮きながら外に飛び出した。

 この光景にラビー王女は、呆然と立ち尽くしまま動けずにいる。彼女はまだ19歳、されど王女、アリスはこれではダメだと思い。

「ラビー、何やってるの? 今度はあなたの番よ!?」

「えっ!? 私!?」

「あなたがあの炎を消すの」

「えっ!? 消すって、私が!? どうやって? そんなことできないよ!?」

「あなたにも聞こえはず、光の声が、あなたの眠っている正義の心が、あなたはそれでも王女なの?」

 すると、ラビー王女の右手が光り、その光をジッと見て、燃え盛る炎を見ながら深呼吸をし。

「私にも聞こえた、わかった、やってみる。正義のリング、あの炎を消して元通りにして上げて」

 ラビー王女は右手を前に突き出し、手の平の光が増し、光がリングになり。

「お願い、行けー! 正義のリング!」

 ラビー王女の右手から光のリング放たれ、その光は透明な球体に変化し、マンション丸ごと包み込み。あっというまに炎は消え、元のマンションの姿に戻っている。


 いったい何が起こったのか、この光景にリポーターは実況を忘れ、マイクを握りしめたまま呆然と立ち尽くし、辺りは静まり返り、マンションの住人たちや大勢の野次馬たちも呆然と立ち尽くしている。

 アリスはこの状況に、いまのうちだと思い、ラビー王女の手を掴み、まるで逃げるように城へ戻り。2人はソファーに座り、しばらく無言だった。

「ねぇー、ラビー、あの声、いったいなんだったの?」

「お姉ちゃん、あの光、凄かったね。あんなことができるなんて」

「確かに、そうじゃなくて、あの声、あの声はいったい」

 アリスは、頭上を見上げ、ラビーも頭上を見上げ。

「もしかしたら、光の精がいて、私たちを試していた、なんてことはないか」

「光の精、非現実的、そうかもしれないね」


 2人は、しばらく頭上を見上げていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る