Sink in the darkness

混沌加速装置

Sink in the darkness


目を閉じていても開けていても

変わらないような漆黒の闇


今そこへゆっくりと着実に

柔らかい羽毛に包まれるように

沈み込んでいこうとしている


底まで沈んでしまえば気持ちいいと誰かがうそぶく


底なんてものは無いし

それはまやかしだと誰かがいさめる


そんなことはどうでもいいじゃないかと誰かが投げやる


いつから沈み出したのか

果たして本当に沈みつつあるのか

ただそう錯覚しているだけなのか定かでない


でも


もし


仮に沈んでいこうとしているとして

何か不都合でもあるだろうか


そうだ


目を閉じていても開けていても

変わらないような漆黒の闇だというのなら


目を閉じているのか開けているのか

わからなくなってしまうじゃないか


だからどうした


そんなことよりも

感覚はあるのだろうか


あるのだろう


誰かが気持ちいいと言っていた気がする

誰かはまやかしだと言っていた気もする


目を閉じているのか開けているのか

わからないような漆黒の闇の中では


それはどうでもいいことなのかもしれない



柔らかい羽毛のように

身体を包み込んでくれている闇


やがて闇は身体中の穴という穴

身体中の真皮を被う表皮

隠していた心の隙間や思考の片隅かたすみ

ありとあらゆるところから内側に入り込んでくる


痛みは無い


ただ


闇で満たされていくはずなのに

闇が入りこむ前よりも空虚な気がしてならない


それから


いささか興奮しているのだろう

そうわずかに認識できる程度の精神の昂揚感が伴う


いや


昂揚感などという高尚なものではなく

焦燥感に近い

下卑げび

みっともない

唾棄だきすべき神経作用なのかもしれない


どうでもいいじゃないか


目を閉じているのか開けているのか

わからないような漆黒の闇の中で


昂揚感だとか

焦燥感だとか


気持ちいいとか

気持ちよくないとか


まやかしだとか

まやかしじゃないとか


どうでもいいとか

どうでもよくないとか


程度の低い議論を闘わしたところで

何の意味があるというのか


今は


闇の底に沈み切ってしまうまでの

淫靡いんびで残酷な狭間はざま


陶酔した脳と

糜爛びらんした身体を横たえて


漆黒の闇を見つめよう


閉じているのか開けているのかわからない目で

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