第3話 世界を救う

 「ようこそ、我が部へ」

 結局、昨夜の電話で根負けした誠一郎は放課後、彼女にハーメルンの笛吹きに連れられる子供のように部室とやらに気が付くと来ていた。

 名誉の為に言っておくが決して写真につられてのではないことを最初に言っておく。

 「ようこそと言われましてもまだ入るとは言ってませんし」

 「ここに来た時点で入部届けを出したようなものさ。未だかつて入部せずこの部屋を出て者はいない」

 さらっと恐ろしいことを言われた気がしたが気のせいだろう。

 「さぁ入ってくれたまえ我が部(仮)に。仲間を紹介するよ」

 強引に部屋に連れ込まれる。ルート分岐が肝心な時に出ない。逃げるコマンドを消失した誠一郎は不安だけを抱えて中に入るのだった。

 まるで漫画の主人公が中を見てもいないのに霊圧を感じるようなそんな気持ちを感じ取る。晴れてこれで俺も主人公の仲間入りか・・・そんな余裕を持たせることで動揺を隠す。

 中に入るとそこには男女二人の生徒が一人は椅子に一人は机に腰掛けいた。

 「その子が新しい会員?」

 女の方が訊ねてくる。

 「そうなんだよ!喜ばしいことにこれで四人目だ。目標の五人まで目の前だよ」

 「まだ仮入部なんですけど・・・」

 という言葉を聞いてくれる人間はここには居なかったようで部員として話が始まる。

 「俺は佐竹哲夫。子の同好会のナンバー2だ!」

 うわ、この人自分でナンバー2とか言ってるよ・・・

 「私は中山麻友。彼と同じクラス二年生よ。分からないことがあったら聞いてね。って言ってもこんな人たちだし分からない事が分からないでしょうけど」

 この人はまともそうだ。

 「そして何を隠そうこの同好会、ゆくゆくは部へとなるこの会のリーダーでもある私!『神坂道子!!』この名を脳裏に刻んでおきなさい」

 そういやこの人の名前聞いて無かったな。

 「もうちょっと反応が欲しいわね。ちょっと冷めすぎてないかしら最近の若者。神の道を行く女よ?」

 中二病乙。

 「まぁそれはそっとしておくとしてここに来たってことはこの同好会の目的は道子に聞いてるんだよな?」

 「一応・・・」

 

 昨夜、電話で道子から聞いた内容はどうしようもなく嘘くさく彼女の口から放たれたとは思えない同好会だった。

 そのプレゼンは日付をまたぎ今日の体調に支障をきたし授業中に先生に目を付けられるほどの長さを誇ったのだが悲しいことに写真に比べれば道端のホコリレベルの中身のないプレゼンだったのだが結論から言うと、というより先に結論からやって来た為、その後の話は頭に入らなかった。

 思わずスピーカーが壊れたのかと思ったほどだ。

 ちょうどいい。この二人から正しい情報を入手しよう。そう思ったものの悲しいことにその願いは叶わないようだ。


 昨日の彼女の言葉とナンバー2の男の声が頭の中で重なる。


「「我が同好会(部に昇格予定)の目的は世界を救う為!この学校とこの町を面白おかしく作り変えることだ!」」


 どっかのラノベでこんなの無かったっけ・・・



 

 

 

 

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