第24話 水の人

短歌一首


暁の空を呑み込む水鏡を

覗きて映る我もまた水



冬の朝、といってもまだ街は眠っている。

冷気が肌を刺す。

湖畔を走る足音だけが響く。

風もない湖面には街灯と木の影が反転している。

東の空がうっすらと色をつけていく。

湖面も真似をして暁を呑み込んでいく。

空も雲も水鏡のなかに閉じ込められていく。

私が湖面を覗き込むと、そこには同じ格好をした自分がいる。

空だ、雲だ、私だ、と思っていたものが、風のざわめきで水に戻った。そこにいた私も波となった。


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