二十片の愛の詩(にじゅっぺんのあいのうた)

 その指先に触れて命が脈打った。


 まるでジェットコースターに乗った時に響く


 腹と背中が揺れるようなビクッとした感覚に薬指に触れただけで、花束を回す瞬間に電流が走り、


 小枝のように冷たかった手はぬくもりを取り戻して行った。


 昔働いたコンビニも


 通い詰めたバーガーショップも


 映画の待ち合わせにしたカフェも


 閉店して、思い出になる。


 彼女はもちろん、社会人と付き合っていた。


 ビールとタバコの匂いが臭いと言って話す南の友人に


 「1日に10本吸う」と


 「それなら月に五千円だね」


 なんて横割りで入って知り合ったんだ。


 一人道(ひとりみち)淋(さび)しぐて、うらぶれながらよく聴いた曲は


 サザーランドの『silentmovie』


 THE YELLOW MONKEYの『聖なる海とサンシャイン』


 back numberの『風の強い日』


 どんなに頑張っても懸命に見張っても


 眠ってしまう夜もある。


 これは私の言葉ではないが


 青春とは悪戯にタバコを吸う。ただそれだけの


 イメージなのだ。


 狂おしく身悶えておかしくなった経験の無い人は


 人を愛した内に入らないと私は思う。 



 左手の人差し指で誓った免許証の紙婚式。



 金の環、銀の環満ちた夜、


 彼女は身重で殺された。


 柿渋のようになった腐乱肢体。


 悔し涙しか流せぬ人生を呪った。


 あなたのおかげで母さんと大喧嘩したんだよ。


 ある旋律を鍵盤で叩いても1分と保(も)たない。


 ミサイルのように光って見えた幻の


 彼女の後ろ姿は影法師。



 私の地元は右翼ばかりだ。



 神様はなんて意地悪なんだ。


 恋した人と愛した人を取り違えるなんて!


 出会ってから今までずっと愛してた。


 これからもずっと愛してる。


 今も…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短歌集 jed @jed

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ