中村 徹くん

 翌日の放課後。



「昨日は、トオルくんに手伝ってもらっちゃった。彼、ものすごぉ~く大人で、やさしいぃ~んだからぁ~」



 私は、昨日掃除をサボったリョウちゃんに、ワザとらしく皮肉たっぷりに言い放つ。



「あぁ そう。どーせオレは、子供ガキだよっ」



 リョウちゃんは、ペロッと舌を出しておどけたポーズをしてみせる。




「何、それ?今日はサボらないでよねっ!」



 私は、彼の目の前に掃除道具を突き出して言った。



「へいへい。分かったよ」



 そのころのリョウちゃんはこんな感じで……。

 いつも、ふざけてばかりだった。




「ねぇ トオルくんて 彼女…とか、いたりするのかな?」



 掃除をしている最中に、何気なくリョウちゃんに訊いたこともあった。



「彼女?……さぁ……?」



 一年のとき、トオルくんと同じクラスメートだったリョウちゃん。


 一端、考え込んでいたんだけど…――。


 そのとき、何を勘違いしたのかアイツは…。(怒…




「好きになるのはいいけどぉ~…。

 アイツだけは、本気マジ めといた方がいいぜ。

 すぐ女、くから」



 はぁ~っ!

 何、それ~!!



「あ、もしかして もうかれた?」



 私は「そんなことない」って、慌てて否定したんだけど。


 まさか 本当にその後…—。

 その言葉が現実になろうとしていたなんて、夢にも思わなかった。



 身長も高くて、見た目もクールな感じのトオルくんの周りには、いつの間にか彼のファンらしき女生徒らが取り囲んでいた。



 容姿端麗で、スポーツ万能。


 学校の成績も上位の方……。

 だって、聞いた。



 確かに、見た目は ちょっとかっこいいと思うけどぉ~…。


 別に、トオルくんの彼女になりたくて訊いたわけじゃないのに。






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