第17話 魔導研究所 3

 ミアが瓶の中の液体を飲みほすと、ローズに椅子の背もたれが倒され、頭と両腕、靴を脱がされて両足にも魔道具を嵌められた。暫くすると身体の自由が利かなくなってくる。


「そろそろ効いてきたかしら」


 ローズがカウンターの上にある魔道具を操作すると、ミアの体に着けられた魔道具の魔石が輝きだし身体に赤い線が浮かぶ。


「あら~、綺麗に巡ってるわね」


 そう言うとローズは魔石のついた魔道具を持つと、ミアの上衣に手をかけようとして、止まるとセスに顔を向けた。


「後ろ向いてなさい」

「なに?」

「診察するのよ‥‥‥‥追い出されたいの?」


 眉間に皺を寄せたローズに、漸くセスは何をするのか理解して慌てて後ろを向く。セスが後ろを向いたのを確認したローズに上衣を捲られ、手にした魔道具で触診される。一通り見終わると服をなおされ、嵌められていた魔道具を全て外された。

 その頃にはローズの言っていたように痺れが取れてきて動けるようになる。ローズが魔道具を片付けながら「今日は帰っていいわよ」と言ってきた。


 ミアは父様から検査を受けに行くように言われたが、理由を聞いても入学のために必要とだけ言われ、教えてもらえなかった。たしか入学の前には検査など無かった筈だ。それならこの検査はいったい何なのか。

 ミアは躊躇いがちにローズに聞いた。


「あの‥‥‥‥この検査は入学のためですよね?」

「ええ、そうよ」

「‥‥‥‥私、あの‥‥‥‥魔法が、使えないんです」

「聞いてるわよ~」

「! じゃあ、あの‥‥‥‥取消」

「大丈夫よ、取消しにはならないから」

「なんで!?」

「ふふ、それはまだ言えないわ‥‥‥‥口止めされてるの」


 有無を言わせず、ローズに研究所から追い出され、セスと一緒に家へと歩いて行くが元気がでない。

 元気がないミアを入学取消しになるのを気にしていると思ったのかセスが言葉を選びながら話しかけてくる。


「ローズはさ、あいつ性格は悪いけど頭は良いし、研究バカで魔道具には詳しくてさ、頼りになるんだよ‥‥‥‥だから心配いらないって」

「‥‥‥‥うん」


 元気づけようとしてくれるセスさんの気持ちは嬉しいけど、魔導学園へ行きたくない気持ちは変わらなくて、その後も話しかけてくれるのに相づちを打つことしか出来なかった。






 その日の夜、寝る前にお休みなさいを言おうと階段を下りていくと、下から父様と兄様の話し声が聞こえてきた。アルバートという言葉に足を止めて聞き耳をたてる。


「‥‥‥‥アルバート様を狙った誘拐‥‥‥‥だったと‥‥‥‥」

「はい、おそらくミアは巻き込まれただけかと‥‥‥‥ジュリアスとの婚約は必要なかったのでは?」

「‥‥‥‥いや、入学してからも何があるかわからん‥‥‥‥」


 ミアは自分が聞いてはいけないことに思えて、そっとその場を離れて部屋に戻った。途切れ途切れに聞こえてきた言葉から、誘拐事件はアルバートを狙っていたようだ。アルバートとは街に戻ってきた日から会っていないが大丈夫なのかと急に心配になってきた。










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