第16話

 一日の授業が終わり、僕は部室へ向かった。そして部室に着くと僕は千歳と亮平に提案をした。


「ねえ、今度の日曜日にみんなで山登りに行かない?」


「山登り?優希がそんな事言うなんて珍しいね」


 千歳が驚きの表情を見せる。まあそれもそうだろう、僕はどちらかといえばインドア派だ。


「いやあ、ふと運動したいと思ってさ」


 僕は運動部に所属しているわけでもないので相当運動不足に陥っている。


「それにしても、どこの山に登るんだ?」


 亮平が僕に質問する。


「うーん、近場の登りやすいって話題の山がいいかなぁ?」


 僕は初心者に人気の山を提案してみる。


「うん、そこでいいんじゃないかな」


「俺もそこでいいと思う。それで、どこまで登る?」


 亮平が具体的に話を進めていく。


「え、どこまでって、山頂まででいいんじゃない?他にゴールにピッタリの場所ある?」


 僕は疑問を亮平にぶつけた。すると亮平は


「連山コースってのがあるんだよ。あそこの山って連山の一角だから」


「へぇ、そんなコースあったのか、面白そうだね」


「賛成賛成―!」

 みんなの意見が一致し僕たちは連山コースで登ることに決めた。


「何時くらいから登る?距離ありそうだし早めの時間がいいと思うけど」


 僕が時間について質問した。


「早めの時間なら人少なそうだしいいかもね!7時か8時位に集合して登らない?」


「俺は8時がいいかなー」


「じゃあ8時集合で決定!」


 具体的に話が固まったので僕たちは部活を終えそれぞれ自宅に帰った。


 前日、僕は家にあった母親のアウトドア用のリュックサック、靴、服を借りて当日の道具を揃えた。そして僕たちは当日を迎えた。


「よし、それじゃあ行こうか」


 駅で集合した3人は山へ向かうバスに乗って山の麓まで行った。


(それにしても、ふたりにカメラの趣味があったなんて意外だなぁ)


 千歳と亮平の二人は一眼レフのカメラを持ってきていた。非常にしっかりとしたカメラを持ってきていたことに僕は驚いた。


「私は写真撮りながら行くから二人は前歩いてていいよ」


「俺も写真撮りながら行くから優希先に行ってくれ」


 僕が先頭を歩くことになってしまった。事前によく調べてきてないから道が分からないとか二人には言えない…。


 僕も道中スマートフォンで風景を写真に収めながら歩いていく。


 歩いていると僕は面白いものを見つけた。

「ねえ、この看板すごい時代を感じるね」


 山の道の途中に古すぎて書いてある文字が読めない看板を発見した。古すぎて文字の読めない看板なんてゲームの中の話だけだと思っていた。


 僕たちは面白い発見をしながら急斜面をどんどん登っていった。


 しばらく木々の間を歩いていたが、みんなの疲労も溜まってきたところでやっと視界が開けてきた。


「ねえ、そろそろ山頂じゃない?」


 僕は二人に声をかけた。


「おお、そろそろ山頂か!」


 三人のテンションはどんどん上がっていく。


 そして僕たちは山頂にたどり着いた。


「すごい絶景!」


 千歳が遠くの山並みをカメラに収めながら感動を口にする。


 日常生活では見ることのできない大いなる自然がぼくたちの眼前に広がっていた。


「少し休憩しようか」


 僕は二人に声をかけてお昼休憩を挟むことにした。山頂のお店で食べるご飯はなんとも言えぬ美味しさだった。


 そして僕たちは連山を下っていった。最後の山に差し掛かると僕と千歳はもうヘトヘトになっていた。疲れすぎて足が痙攣するほどだ。


 一方の亮平はピンピンとしている。あぁ、女の子になるとこんなにも体力って無くなるんだな。


 そして最後の山も下り終わり解散となった。いつも家にいるときには感じることのできない充実感に溢れる一日になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る