ようこそ【機関】へ 「身元証明~アイデンティティ~」

「うむ、お疲れさん。いきなり災難だったな。」



開放された4人にサニーがようやく合流した。

D・フロント(機関本部の存在する次元。)到着から複数の検査を受け、かれこれ2時間が経過していた。

「じゃあ、カゲロウちゃん。アーロンまたね。あたしたちは報告に行かなきゃ。」アリアは、まだついていきたかったのだろうか、少し名残惜しそうだった。

「お二人とも、ありがとうございます!」

カゲロウは軽く握手を交わし二人と別れる。

二人がいなくなると、本題に入るようにサニーが話を切り出す。

「二人の【身元証明アイデンティティ】だ。無くすなよ。」

受け取ったカードを、カゲロウはまじまじと見つめる。

「それじゃアーロン引き続きレクチャーを頼む。俺は他にやる事があるんでな。」

アーロンの返事を聞く前にさっさとサニーは行ってしまった。

カゲロウも特に気にする様子もない。貰った物の観察をしていた。

「ふむっ・・・・見た目は普通のカードですね。でも、これで終わりって事ないですよね?先輩。」

アーロンに期待の眼差しを向ける。

「・・・まぁな。そろそろ出てきてないか?」

「へぇっ?」

(リンク完了)

「はっ?・・・・?先輩なんか言いました。」カゲロウは驚いて尋ねる。

「いや。勘違いじゃないぞ。そのままにしとけ。」

暫く待っていると再び・・・。

『ようこそ機関へ。見習ラナーい・カゲロウ。』

「うぇぇぇぇぇええ?!」

カゲロウの頭の中に、聞きなれない声が響いてきた。アーロンはその様子を見て横を向きほくそ笑んでる。

『初期ウィンドウを展開。詳細・変更等はヘルプアイコンを選択してください。』目の前に、コンピューターディスプレイに表示されるアイコンのようなものが出現してきた。SF・ゲーム系の小説のように、手で触れられるアイコンかと思ったけど違うようだ。流石にこれは未知過ぎてお手上げ。

「先輩このアイコンは一体?」

「無事に表示されたか。それはD・フロントで【身元証明アイデンティティー】を所持している間だけ表示される。D・フロントのメインサーバーに繋がっていて、連絡・検索と基本的サービスを一通り受けることが出来る。頭で念じたらアイコンを選択することが出来る。」

突然、目の前に着信と表示されるアイコンが現れた。

相手はアーロンであった。

(先輩の言った通りなら、通話・・・っと)

『・・・・・もしもし。うん繋がったな。』

『おぉ~。テレパシー。いや、イメージでは電脳通信のような感じですかね?』

『ここら辺の仕組みは俺にも分からん。基本、【機関】の技術は化学と魔法の組み合わせだからな。考えすぎない方がいい。前の次元世界でも、別に携帯電話・車・飛行機の仕組み何て考えた事ないだろ?』

『つまり、いざって時は専門家がいるんですね。』

『そういう事。そういうのは【機関】にいるうちに分かる。切るぞ。』

スッと、頭の中から繋がりが消えていく。絡まった糸がほどけていく、そんな感覚があった。

念話を終了させて、口頭でアーロンが話しかける。

「うん。流石。飲み込みが早い。デフォルトでは、身元証明アイデンティティはカード状で瞳に直接アイコンが映し出されているが、設定を変更すればこんな風に・・・。」

アーロンのカードが変形しメガネになった。メガネのガラスには、カゲロウが見てるのと似たような画面が映し出されている。

「こんな事も出来る。」

そういうと、メガネは変形し胸元にバッチになって張り付く。

そこから光が出てホログラムが映し出された。

「自分のスタイルに合わせて変更が可能だ。やってみ。」

「なるほど・・・。」

カゲロウはとりあえず腕時計状に変形させることにしたようだ。

「さて・・・次は・・・」

ふと、アーロンはカゲロウを見て喋るのを止める。

「・・・・・」

「・・・・・どうした?」

「先輩・・・・。まだいろいろ説明します?」

「そうだな。僕の記憶が正しければ、まだまだまだまだ、あるな。」

「そうですか・・・・。」

暫くの沈黙があり、カゲロウは言った。


「先輩。飽きました。というか疲れちゃった。」


「・・・えぇ。」

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異世界【機関】 サカヤン(sakayan) @sakayan4DX

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