第26話 新しい仲間

エリスのとんでも魔術を見せられた俺達は、だが直ぐ自分達の状況判断を行い、ともかくここから一刻も早く撤退を始める。


「みんな!、今の内に逃げるぞ!。エリスも・・・って、どうした!?」


「ふにゃ~・・・・・・、ごめんにゃさ~~ぃ・・・、魔力切れ起こしましたの・・・はふ~・・・」


エリスを見ると、顔を青くして腰が抜けたように女の子座りをしている。

どうも強力な魔術を使った為に、魔力切れを起こした為に腰が抜けたらしい。


俺はとっさにエリスを腕に抱き上げ、走り出した。

はたから見ると、お姫様抱っこしている様に見え・・・いや、お姫様抱っこそのものだ。


そのエリスは、お姫様抱っこをされてからか、頬を少し赤らめて俺に両手でしがみ付いてた。


「あーーーーーーーー!、エリスだけズルーーーーーーーーい!!!」


「な、なるほど・・・、魔力切れを起こすとお姫様抱っこして貰えるわけか。これは使えるな・・・」


エメルダはブーたれ、リオノーラはボソボソ独り言を言ってるが聞こえてるぞ。しかし、走りながらそこまで考えるなんて、器用だな・・・

しかしだ、これは緊急避難的な行為であって、俺はしたくてしてるんじゃないからな!、ホントだからな!!


「仕方ないだろ!、非常時なんだからー!。今は逃~~げるんだよ~~~!!」


「次は、あたしの番だからねーーーーー!」「私もして貰うからなーーーーー!」


俺は、二人の心の叫びを無視して街道を一目散に街へ向かった。



           ◇



「ハアハア・・・・、やっと街に戻ってこれたか・・・ハア~」


「で、ですね・・・久々に全力疾走しましたよ~・・ハアハア」


俺達はデボネアの街まで戻ってきて、とりあえず宿屋の食堂兼酒場に来ている。

エリスは二階の俺の部屋のベッドに寝かせてきた。意識もあるし、彼女も少し横になってれば起き上がれるだけの魔力は回復する、と言っていたので水分だけ取らせて寝かせてきた。


エメルダにはギルドに報告と、ゴブリンの討伐部位を換金して貰いに行ってもらった。

そして俺達は、とりあえず端の方のテーブルについた後、昼間なのでアルコールは控えてジュースを頼んでおいたので、エメルダが来たところで簡単にお疲れ様の乾杯をした。


「しかしお前達、あの程度で息を切らしてどうする!。私を見ろ、汗ひとつかいてないぞ」


「俺は、エリスを抱えてきたんだから、仕方ないだろー?」


「リオノーラは良いよね~、胸辺りがスッキリしているから・・・。私は重いし~揺れるし~谷間にも汗が・・・」


そういうと、エメルダはさり気なくワザとらしく自分の豊満な胸を見せびらかした。

それを見たリオノーラは、クッ・・・と呻き自分の胸を見るが、


「そ、そんな贅肉の塊など、邪魔なだけだ。戦士にとって胸の大きさはハンデ以外の何物でもない!」


「あたし、戦士じゃないも~~~ん。それに、アルは胸が大きい人が好きって言ってたもんね~」


「なっ!?、ホ、ホントか、アル!?。貴様は、む、胸が大きい方が好みなのか!?」


いや、そりゃ・・・大きいのは好きだけどね。でも、小さいのもそれはそれで趣があって・・・。というか俺、胸は大きい方がいいなんて言ったか・・?

そもそも、俺は胸の大きさで差別しない。大きいのも小さいのも、それぞれに良さがあるのだ。


それ故に、男の視線が胸に目が行ってしまうのは仕方ない事である。

なぜお前は胸を見るのか?、そう聞かれたら答えは一つ・・・。”そこに胸があるからだ”・・・うむ、名言だな・・・


ふと二人を見ると、エメルダはジト目でリオノーラは頬を赤らめて俺を見ている。

し、しまった、思わず妄想して胸でも凝視していたか・・・?


いかんいかん・・・。とにかく俺は胸が大きかろうが、小さい胸ちっぱいだろうが関係ないさ。好きになったおっぱいが一番だ!


「アルさん、胸なら何でもいいんですね・・・。ま、でも大は小を兼ねるともいうし・・・大きいに越したことはないか・・・」


「そ、そうだな。ちっぱいにはちっぱいの良さがあるのだ・・・」


「ん?、何で俺の胸に秘めている事を二人が知ってる・・・?もしかして・・・・二人とも、読心術でも出来るのか!?」


「へ?、今自分で言ってたじゃん、ボソボソと・・・」


ええええええええええええ!?。いつの間にか、心の声が本当の声になっていたと!?

は、恥ずかしいーーーーーーーーーーー!、じゃあさっきのも全部聞かれたのか・・・??


「・・・あの、もしかして・・・全部?」


「「うん、ぜ~~んぶ」」


死んだ!、恥ずかし過ぎて死んだ!!もはや、恥ずか死す!

というか、胸も好きだけど俺はお尻の方が好きなのだが、今はそんな事言ったら尚更俺の男としての立場が・・・


「え?、お尻の方が好きなの?」


「わ、私は尻には自信があるのだが!」


あれ?、また声に出しちゃってた・・・?なにこれ?。

何かの魔法でも掛けられた?。それとも、自分の恥ずかしい事を強制的に言わされちゃうっていう様な呪いかなにか??


しかし、最近リオノーラのキャラが変わってきた気がするな・・・うん。




少しの間、俺は内心凹んでいたがこのままでは気まずいと思い、話題を変えてみた。


「そ、そんな事よりだな、今日は色々あったよな!。モンスター退治もして、上級冒険者達の戦いを少し感じ取れたしな~・・・遠くからだけど。しかし、あの魔術での攻撃って・・・モンスターの仕業かな?ね!?」


「ワザとらしく話題を変えたわね・・・、まあいいけど。そうね、あれには驚いたわ」


「魔法を使ってくるモンスターなんて俺、ゴブリンシャーマンとかぐらいしか知らねーぞ?」


「いや、ゴブリンシャーマンは精霊魔法系だから違うだろうな。そうなると、メイジ・・・系のモンスターか・・・もしくは、人間ヒューマンか?。いくら何でも、それは無いと思うが・・・」


「ま、まあ無事だったんだから良いけどさ~。ところで、エリスの魔術凄かったな~!」


「あぁ、確かにな。それにしても、あれだけ見ると彼女エリスの魔術は上級者にも引けを取らないぞ」


「だな、何だよありゃ!。俺達が食らったら、普通に骨も残らねーぞ、あれ」


「ですね~。もし本当にパーティに入ってくれれば、かなりの戦力になりそうだよね!」


「戦力なんてもんじゃないよ、最終兵器だよ!」


「それにだな、彼女が最初の土の障壁を作った時の魔術だが、アレ・・・無詠唱だったぞ」


「そ、そういえば詠唱せずに作り出してたな・・・。もし本当に入ってくれたら嬉しいけど、俺達のパーティじゃなあ・・・・・でも、なんでどこのパーティにも入ってないんだろうな・・・」


「本当ですの!?。なら、入れて欲しいのです!」


突然その声は、俺達の後ろから聞こえた。

慌てて俺達が声の方を向くとそこには、まだ少し顔色が悪いエリスが立っていた。


「エリス!?、ダメだろ~まだ寝てなきゃーー」


「そうよ!、もう少し寝てなきゃ・・「大丈夫です!」そ、そう?」


エメルダの言葉にかぶせてきたエリスは、なおも懇願をしてきた。


「お願いなのです!、私をパーティに入れて下さい!」


何か必死さを感じさせるエリスを見て、顔色が悪いのは魔力が少なくなってるだけじゃないんじゃないかと思い始めた。


「ど、どうして俺達のパーティに入りたいんだ?。さっきも話したんだがエリスなら、もっと強いパーティにだって入れるだろうに・・・」


「何度か色んなパーティに入れて貰ってたのです。でも・・・すぐに解雇クビにされるのです・・・グスン」


「ええええええ?、どうしてさ!?。こんなすごい魔法使えるのに!!」


「魔法じゃなく魔術なのです!。あ、ごめんなさい・・・・、あの私、魔力量が他の魔術師より少ないみたいで、すぐ魔力切れしてしまうのです。それで・・・グズッ」


「あぁ、そういう事か・・・。それですぐ気絶したりして、パーティメンバーに迷惑を掛けるからクビに・・・?」


「そ、そうなのです。今回もご迷惑をお掛けしてすみませんです・・・。でも、皆さんに迷惑掛けない様に私も頑張るので、どうか私を・・・入れでぐだざい・・・・・」


そう言うと、エリスはペコリと頭を下げてきた。

最後の方は涙と鼻声で聞き取れない程だったが、俺達の気持ちは決まっていた。


「エリス、これからも一緒に頑張ろうぜ!、よろしくな!!」


俺は、立ち上がりエリスの手を取って無理やり握手をしてやった。

彼女が顔を上げ、涙と鼻水出しながら一瞬ポカンとした顔を見せたが、意味が分かったのか今度はもっと顔をくしゃくちゃにして泣きながら、「ありがとうございまず、ありがとうございまず」と何度もお礼を口にしていた。




それからエリスを席に案内しジュースを一つ頼んでやった俺達は、お代わりをしてから改めて乾杯をした。

今度は、新しい俺達四人パーティ結成の”乾杯”だ!!

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